「誰々のツルの一声で…。」というフレーズを聞いたことはあるだろう。もちろんこれは、誰かがツルの鳴き声を真似したという話ではない。
辞書の説明を見ると次のような意味がある。
多くの人の議論や意見をおさえつける、有力者・権威者の一言。(デジタル大辞泉)
衆人の千言を一声で鎮めるようなすぐれた声。(精選版日本国語大辞典)
つまりこんな状況だ。「あぁでもない、こうでもない」と話し合っているが、なかなか物事が決まらない。しかしリーダー格の人が、ひとつアイデアを挙げたことをきっかけに、一気に議論が進展する。
要するにツルの一声とは、場を納得させる力のある一言、ということである。
しかしなぜ、その例えにツルが使われているのだろう? そもそもツルの鳴き声ってどんな感じなのかピンと来ない…という人も多いはずだ。そこで今回は、そんなツルの鳴き声に関する雑学をご紹介するぞ。
【動物雑学】「ツルの一声」の実際の声は?
【雑学解説】ツルの一声の実際の声は、やっぱり迫力たっぷりだった!
権力のある人の意見を、なぜツルの一声にたとえるのか? ツルの実際の鳴き声を聞けば納得するはずだ。それはもう、オペラ歌手もびっくりなド迫力の鳴き声なのである。
ツルの高音ボイスは何百メートル先にまで響き渡る。他の鳥たちはさえずるのをやめるほどで、人間もその圧巻の鳴き声を聞けば思わず息を呑むという。辺りの動物たちが一瞬にして静まり返る…そんな力をもつ鳴き声なのだ。
こちらは実際のツルの鳴き声を捉えた動画で、1:30~鳴く様子を確認できる。
水辺を優雅に歩くツルの姿は、なんとも気品にあふれている。スラっとしたシルエットも美しく、ついつい見とれてしまうが…。次の瞬間、スイッチが入ったかのように鳴きまくるツルたち。その様子は迫力満点である!
しかしいつもこんな調子では、さすがにうるさくてたまったもんじゃない…。と思わされるが、実はツルは普段、あまり鳴かないのだ。鳴き声を上げるのは、危険が迫ったとき、威嚇するときだけである。
たしかにツルの一声のことわざにも、「普段多くを語らない人の一言ほど、重みがあり説得力がある」というニュアンスを感じる。なるほど、知れば知るほど秀逸なたとえだ。
鶴の鳴き声が大きい理由
ツルの鳴き声はなぜそんなに大きいのだろう。それは、ツルの長い首に秘密があった。ツルは、鳥類が鳴き声を出すときに使う鳴管(めいかん)という器官が他の鳥よりも発達している。
また、気管が胸のところで巻いていて、これが管楽器のような役目を果たすという。トランペットやホルンの構造を思い浮かべるとわかりやすいだろう。そして長い首を通ることでさらに空気の振動が増え、いっそう響き渡る鳴き声になるのだ。
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【追加雑学】仲睦まじいツルの夫婦のダンスと鳴き合い
実はツルが鳴くのは危険を知らせたり威嚇するときだけではない。オスとメスで絆を深めるために一緒に鳴く、「鳴き合い」と呼ばれる行動がある。オスは「クェー」と長く鳴き、メスは「カッカッ」と短く鳴くのが特徴だ。
交尾をするときだけでなく、越冬のために長旅に出る前にも、絆を確かめ合うために鳴き合いをするという。「二人で厳しい旅を乗り越えていこう!」といった具合だろうか…。想像すると微笑ましい光景だ。
また鳴き合い以外によく知られているのは、タンチョウヅルの求愛ダンスである。互いに天を見上げながら舞い、愛のステップを踏むツルの夫婦。タンチョウヅルの夫婦はどちらかが死ぬまで、一生を添い遂げる。また夫婦協力して子育ても一緒に行う。
うちの旦那にもツルを見習ってほしいわ…という奥様方。ぜひこの動画を見せて、ご主人に反省してもらおう。
雑学まとめ
今回は、ツルの一声の語源になった、実際のツルの鳴き声に関する雑学をご紹介した。ツルの鳴き声はやはり、他を黙らせるほどの力がある、迫力満点な鳴き声だった。
また鳴き声以外にも、ツルは夫婦仲が良いという微笑ましい特徴があるとわかった。夫婦喧嘩の際はツルを真似して、愛の舞を踊ってみよう。きっと絆が深まること間違いなし…?