ミドルネームといえば、欧米人が名字と名前以外にもっている名前。ひとつだったり、いくつもあったりと、具体的に数は決まっていない。が、とにかく氏名以外に名前があるのは、日本人からすると、ちょっと羨ましい気がする。
ところが、日本人にもミドルネームがあったという情報を手に入れた! その名前にはいくつものバリエーションがあったらしい…。今回は、日本人のミドルネームについての雑学を紹介するぞ。
【歴史雑学】 江戸時代までは日本人にもミドルネームがあった
【雑学解説】明治維新以前の日本人には、氏名以外にも名前があった
ミドルネームとは、ふつう欧米の名前の中で、名字と名前の間に書かれる中間名のことを指すらしい。たとえば、かつてのアメリカ大統領ジョン・F・ケネディのF(フィッツジェラルド)がそれだ。
しかし、日本人だって氏名以外に名前をもっていれば、それはミドルネームと考えられるのではないか…? だって、ミドル(中間)にあるネーム(名前)なのだから。
そう思って調べてみると、なんと、明治以前の日本人は最大で5つの名前をもっていた! その5つとは…
- 名字
- 通称または字(あざな)
- 氏(うじ)
- 姓(かばね)
- 諱(いみな)
うむ。時代劇で聞いたことのあるような気がするが、違いがこれだけではよく分からない。もう少し詳しく、これらの名前について見てみよう。
諱(いみな)
まず、現代でいうところの名前に当たるのが、諱(いみな)だ。つまり、その人個人を指す固有の名称である。諱は「忌み名」とも書き、親や君主を除いて、気軽に呼ぶことを許されない名前だったという。
特に女性は、昔、結婚する相手にしか諱、つまり本名を教えなかったらしい。だから、平安時代の作家である紫式部や清少納言は本名がわからない。
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というのも、かつては霊的な人格が存在すると信じられていて、この諱はその霊的人格と強く結びついていると考えられたのだ。諱を呼ぶことは、その人の霊的人格を支配することだった。だから、誰かを呪うときや敵対している相手を呼ぶときには、諱が呼ばれたのだという。
では、昔の人はどのようにを呼んでいたのだろうか?
通称または字(あざな)
どうやら、昔は、通称で呼びあったらしい。通称には生まれた順や慣習によって決められた名前・役職名などが使われたようだ。
男性は字(あざな)という、中国風の名称をつけて、その名前で呼ぶこともあった。
姓(かばね)と氏(うじ)、そして名字
個人を特定する名称は、諱や通称だけではない。所属や地位も、個人を特定するのに必要な情報だ。
最初に体系化したもののひとつが、天皇からたまわった位である姓(かばね)だ。684年に天武天皇が8つの位に整理し家臣に与えたのだという。一方で、同じように氏(うじ)は、同じ祖先をもつ血族集団の名称で、古代日本ではよく使われたらしい。
この姓と氏は時代がすすむにつれて、同じ名称を名乗るものが多くなり、だんだんと本来の役割を果たさなくなっていったという。そこで、区別するために現れたのが、名字だった! これは、姓や氏よりも細かく、どの家のひとなのか、を表しているのだ。
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つまり、簡単にまとめると…
- 名字:家の名称
- 通称または字(あざな):幼名や役職名など諱(本名)の代わりに使われた呼称
- 氏(うじ):本姓、主に祖先を同じくする一族の名称
- 姓(かばね):天皇が家臣にたまわった位の名称
- 諱(いみな):本名、個人の名称
ひとつ具体例を見てみよう。有名な戦国武将・織田信長のフルネームは、「織田三郎平朝臣信長」だ。
長くて呪文のようだが、名字である「織田」と諱(本名)である「信長」。そしてその間には、通称の「三郎」、氏の「平」、天皇からたまわった姓の「朝臣」が挟まれている。この「三郎平朝臣」が、いわばミドルネームだ。
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いつごろに今の形に変化したのか?
では、いつこの複雑な名前のシステムが現代のような名字と名前のシンプルな形になったのか?
答えは、明治時代の初めらしい。明治が始まって間もない1872年、公的な名前をひとつに決めるという法律が定められた。明確な戸籍制度のもとで、名前が固定化されたのだ。
これにより、これまでの名字・氏・姓がひとまとめにされ、通称と諱の習慣は廃れたようだ。
ミドルネームと聞くとどこかカッコイイ気もするが、ここまでややこしいとは…現代に生まれて良かった気がする…。
【追加雑学】日本国憲法のもとで、ミドルネームはもてるのか?
ここで、気になるのが、現代の日本でもミドルネームをもてるのかということ。国際結婚もめずらしくないのだから、もっている人がいてもいいのでは?
しかし、残念なことに、今の日本国憲法のもとでは、公的に独立したミドルネームをもつことはできないらしい。どうしても、ミドルネームを登録したい場合は、名前にくっつけた形で登録するのだという。
たとえば、オリンピックの銀メダリストであるケンブリッジ飛鳥選手は、戸籍上の名前は飛鳥アントニオ。ミドルネームをもつことはは不可能ではないにしても、やはり想定外という扱いのようだ。
雑学まとめ
今回は、日本人の名前についての雑学を紹介したぞ。昔の日本人は、欧米人も顔負けの長い名前をもっていたとは…知らなかった。
暇な週末に、明治以前に生まれていたらと、自分で妄想して日本風のミドルネームを作ってみても面白いかもしれない。
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