日本の夏の風物詩といえば夜に光るホタルである。
「物思へば沢のホタルも我が身よりあくがれいづる魂(たま)かとぞみる」…『後拾遺和歌集』に載っている和泉式部の歌だ。恋に焦がれる魂をホタルの光に見立てている。
1000年も昔の和歌にもたびたび登場するホタル。ちらちらと儚げに光りながら漂うホタルは、はるか昔から雅で風流な虫として日本人の心をがっちりつかんできたのだ。まさにひとつの文化だといえるだろう。
「ホタルの光」に「火垂るの墓」。文学だけでなく歌にアニメにと、多くの人々に親しまれて愛されてきたホタル。ホタルの光を鑑賞する「ホタル狩り」は今も昔も夏の楽しみなイベントだ。
そんななくてはならない日本の文化の一端を担うホタル。光らない種類もあることをご存知だろうか…。
今回は、ホタルの驚きの雑学を紹介しよう。
【動物雑学】ホタルは光らない種類が多い
【雑学解説】日本のホタルのうち光る種は5分の1しかいない?
キラキラとおしりが点滅するするホタル。まずはきれいなホタルの光を見てもらいたい。
暗闇で儚く優しく光るホタル。そんな美しいホタルだが、実は世界には約2000種も存在している。すごく種類の多い虫なのだ。
そのなかで、日本でブンブン飛んでいるのは約50種。そしてそのうち、光るホタルは14種類ほどしかいない。「光らないホタルもいる」どころか、光らない種の方が多いのだ。ちなみに光らないホタルは、思った以上にただの虫だ。光らないというだけで急に虫感が増して見えるから不思議である。
さらにいえば、私たちが「ホタル狩り」と称して観に行くホタルは主に2種類。ゲンジボタルとヘイケボタルだ。
この2種類のホタルはなんと卵から成虫まで一生涯光っているのだ。光らないホタルも多いなかで、まさしくホタルのエキスパート。ホタルの中のホタルである。
うん。千年のホタル文化は、ゲンジとヘイケが牽引してきたといっても過言じゃないだろう。
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【追加雑学①】ホタルが光る理由とは?
それにしても、ホタルがどうして光っているのか疑問に思ったことはないだろうか。
ホタルの光る理由、それはずばり「子孫を残すため」。実はホタルは大人になるのがとても難しい生き物。無事に成虫になるまで成長できるホタルは全体の5%ほどなのだ。厳しい自然界を生き抜いて大人になったあとも大変だ。成虫になったホタルは2週間ほどしか生きれないのである。
成虫になるまでも大変、なってからも大変。ホタルの人生はハードモードだ。そんななかで子孫を残すこともしなければならない。
ホタルの成虫は短い命のなかで、てっとり早くパートナーを探し、命を繋がなければならないのだ。そのために彼らは光っている。たしかに鳴くより光る方が効率よさそう。
とはいえ、ホタルが光る理由はまだまだ謎も多い。パートナーを探す必要があるのは生殖を行う成虫のみと考えられているが、卵や幼虫、さなぎが光る種も存在するのだ。
もしかしたら、「子孫を残すため」以外に彼らが光る理由があるのかもしれない。
【追加雑学②】ホタルはどうやって光っているの?
冒頭の動画でもわかるように、ホタルはおしりを光らせる。
彼らの光る仕組みは化学反応だ。おしりにある発光器のなかに発光する物質「ルシフェリン」と発光を補助する「ルシフェラーゼ」というタンパク質が蓄えられている。
ルシフェリンは酸素と結合すると光を放つ。空気中の酸素とホタルのおしりにあるルシフェリンが化学反応を起こして発光するのである。
このとき、化学反応を助けるルシフェラーゼはホタルの種類によって性質が変わる。そのため、黄色や黄緑、オレンジ色などさまざまな色の光を発するホタルがいるのだ。
自らの体内に発光する仕組みが備わっているなんて、ホタルの体は実によくできている。感心してしまった。
雑学まとめ
今回はホタルについての雑学を紹介した。
ホタルといえば「光る虫」イメージが強かったが、光らない種の方が多かったなんて…。まさかすぎる。光っていないときのホタルはその辺にいる虫感が強くて、歩いていても素人目には気が付けなそうだ。
「ホタル狩り」に行くときは、光るホタルだけでなくその他大勢の光らないホタルも見つけてみたい。
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