オリンピックのメダルというと、獲得した選手の活躍によってその価値は何倍…いや、何千倍にも高まる。
ましてや近代オリンピックが開催されるようになった当初のメダルなど、億を出してもまだ足りないぐらい価値があるのではないか。
もし手に入ったとしても、自分がもっていてもしょうがない物のようにも感じる。メダルは手に入れた選手がもっていてこそ、価値があるものではないか。
…と、思っていたのだが、どうやら世の中にはそう思わない人もいるらしい。
第1回オリンピックの優勝メダルは、日本にて展示されていたものの、なんと盗難されてしまったのだ! 今回はそんな驚きの雑学をご紹介する。
【オリンピック雑学】第1回アテネオリンピック体操競技の優勝メダルは日本で盗難された
【雑学解説】アテネ五輪の優勝メダルが日本で盗難された
日本にあった第1回オリンピックの優勝メダルは、東京の秩父宮記念スポーツ博物館にて展示されていた。しかし2010年、何者かによってこのメダルが盗まれてしまう。
盗まれたメダルは1964年の東京オリンピック体操競技の金メダリスト・遠藤幸雄氏が、第1回大会の鉄棒優勝者ヘルマン・ヴァインゲルトナー氏の遺族から譲り受けたものだ。
ヘルマン氏の遺族は遠藤氏の活躍に感動してメダルを贈ったのだが、遠藤氏はそれを「自分だけでなく、みなさんに見ていただけるように」と秩父宮記念スポーツ博物館に寄贈した。
このような心温まる経緯のある品が盗まれてしまうとは…不届きな人間もいたものだ。調査によると転売などの形跡はなく、犯人がただ個人で楽しむために盗んだ可能性が高いとされている。
盗むことの後ろめたさより、「コレクションしたい」という欲が勝ったというのか? まったくもって理解に苦しむ。
メダルが盗まれた状況も、結構お粗末なものだったという。博物館には防犯カメラは設置されておらず、施錠されたガラスケースに入ってはいるものの、肝心のケースも道具を使えばなんとか開けられる作りになっていた。
「遠藤氏の善意で寄贈されたものを、まさか盗もうだなんて考える者はいないだろう」と、博物館側も油断していたのかもしれない。
そして事件は2017年3月14日に、ついに時効を迎えた。結局犯人は見つからず、真相は迷宮入りとなったわけだ。今もどこかで、一人メダルを愛でている人物がいるのだろうか…。
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【追加雑学】遠藤氏が獲得した東京オリンピックのメダルも紛失していた
実は遠藤氏が東京オリンピックで獲得した金メダルも、展示用にとイベント担当者に貸し出したところ、なくなってしまったことがあるという。
「そんなに頻繁になくなるものなの!?」と驚いてしまうが、ここで注目するべきは紛失したときの遠藤氏の対応だ。
遠藤氏はなくしてしまったイベント担当者に対して、怒るどころか「誰も責めないでほしい」と言って、メダルがなくなったことを大ごとにしなかったのだ。
金メダルを獲得するには、相応の努力が必要。そこに辿り着く選手は、やはり遠藤氏のような器の大きさをもっているものなのだ。
ちなみになくなった金メダルは、新聞を通して返還を訴えたところ後日返送されたという。このときの犯人は、メダルは欲しいものの、後ろめたい気持ちも持ち合わせていたのだろう。
雑学まとめ
今回はオリンピックメダルにまつわる雑学をご紹介してきた。ヘルマン・ヴァインゲルトナー氏の遺族から、遠藤幸雄氏へ。そして遠藤氏から秩父宮記念スポーツ博物館へ。
これらはそれぞれ「活躍を讃えたい」「多くの人に記念すべきメダルを見てもらいたい」という善意からくる行為だ。
盗まれてしまったことは残念だが、だからといって両者の行為や気持ちが消えるわけではない。メダルはそれを手にした選手によって価値が生まれる。
メダルそのものが他の人の手に渡ってしまっても、選手の残した結果と価値は盗めないのだ。