学生時代の宿題で1番嫌われているものといえば、読書感想文ではないだろうか? 感想文を書くこと自体も厄介だが、何より課題となる本を読むのに時間がかかって仕方ない…。
さて、もしアナタが世界一長い小説の感想文を書きなさい、という課題を出されたら、どのくらいの長さを想像するだろうか?
1000ページ? それとも2000ページ? いずれにしても読破するまでには、かなりの時間がかかりそうだ。
そこで今回は、読書感想文の課題図書には絶対になってほしくない、世界一長い小説にまつわる雑学を紹介していこうと思う。
【世界雑学】世界一長い小説は?
【雑学解説】世界一長い小説とその作者にまつわる話
2004年までのギネスブックには、世界最長の小説としてフランスの作家であるマルセル・プルーストの『失われた時を求めて』が掲載されていた。この作品は、960万以上の文字数を誇るかなりの大作である。
それでは、この作品が世界一長い小説かというと、そうではなく、2007年からは別の作品がギネスブックに掲載されている。
その作品とは、ヘンリー・ダーガーの『非現実の王国で』。この作品は、1万5000ページを超える大長編であり、300枚以上の挿絵もダーガー本人が描いているというかなりの力作だ。
ちなみに、同作の正式タイトルは『非現実の王国として知られる地における、ヴィヴィアン・ガールズの物語、子供奴隷の反乱に起因するグランデコ・アンジェリニアン戦争の嵐の物語』であり、こちらの長さもギネス級である。
とはいえ、ダーガーの名前を聞いたことがある人は少ないだろう。なぜなら、彼はいわゆる作家ではなく、ただの「引きこもり」だったのだから。
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引きこもりだったヘンリー・ダーガー
1892年にシカゴで生まれたダーガーは、幼少の頃に母と死別し、12歳になると知的障害が見られたために施設へと送られてしまう。そして、15歳のときに父が亡くなったことを知ったダーガーは、施設を脱走して徒歩で260キロ離れた故郷のシカゴまで戻ったそうだ。
その後、シカゴの病院で清掃人として勤め始めたダーガーは、19歳のときに『非現実の王国で』の執筆を開始。1973年、81歳で亡くなる半年前まで、同作品の執筆を続けていたらしい。
しかし、ダーガーは職場と教会に行くとき以外は基本的に引きこもりだったようで、『非現実の王国で』も世に発表するために書いていたものではないようだ。
『非現実の王国で』が発見されたのは、ダーガーのアパートの家主が、彼の荷物をまとめるために部屋を訪れたときのこと。しかも、家主がダーガーに「部屋のものはどうするか?」と聞いた際にも同作のことには触れず、「(部屋のものは)捨ててくれ」と言ったようだ。
アパートの家主のおかげで日の目をみることになった『非現実の王国で』。もしかしたら、永遠に世に出ることがなかった作品だったかも…と考えると、感慨深いものである。
なお、ダーガーの生涯については謎が多く、それを究明しようとした映画も作られている。
とはいえ、この予告編を見るだけでも、謎は深まるばかりである。ヘンリー・ダーガーとは、いったいどんな人物だったのか? とても興味をそそられる人物なのは間違いない。
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【追加雑学】日本一長い小説『グイン・サーガ』こそ世界一長い小説!?
さて、ここまでは世界一長い小説を紹介してきたが、日本一長い小説について気になる人もいるだろう。そして、その答えは、『グイン・サーガ』である。
『グイン・サーガ』は栗本薫によるファンタジー小説であり、豹頭の戦士・グインを中心として、数多くの魅力的な登場人物が活躍する作品だ。1979年(昭和54年)から文庫書き下ろしの形で刊行された『グイン・サーガ』は、第1巻の「豹頭の仮面」発売時から全100巻完結という構想を発表していた。
しかし、2005年(平成17年)に発売された第100巻でも話は完結することはなく、全200巻完結にすると方針変換。結局、2009年(平成21年)に130巻の半ばまで執筆したところで作者の栗本薫が死去しており、作品は未完のままで一旦終了することとなってしまった。
これだけの長編作品である『グイン・サーガ』だから、ギネスブックに載っても不思議じゃないのでは? と思う人もいるだろう。実は、第93巻が発行された2004年(平成16年)に、英語換算で3000万文字以上の「世界一長い小説」として、ギネスブックに申請しているのだ。
しかし、ギネス側は、「1冊にまとめられた作品ではない」という理由で申請を却下。分冊による最長作品のカテゴリーを新設するように要請したものの、これも却下されている。
ちなみに、『グイン・サーガ』1冊のページ数は約300ほど。つまり、『グイン・サーガ』は300ページ×129.5巻(130巻は半分で終了)=3万8850ページとなり、『非現実の王国で』の1万5000ページをはるかに超えるボリュームとなるのだ!
つまり、本当の「世界一長い小説」は『グイン・サーガ』だといっても過言ではない。
なお、『グイン・サーガ』以外にも『宇宙英雄ペリー・ローダン』シリーズのように何百冊にも及ぶ小説はいくつか存在する。しかし、それらの作品は複数の作者によるリレー形式で書かれたものであり、単独作者による小説としては『グイン・サーガ』が最長なのには変わりない。
雑学まとめ
今回は、世界一長い小説についての雑学をご紹介した。その作者の人物像は、かなり意外なものだったのではないだろうか?
それにしても、1万5000ページを超える小説の読書感想文を出されたら、休みがいくらあっても足りないことは間違いない…。だが、安心してほしい。同作はあまりにも長いため、全編が日本語訳されたものは刊行されていないのだから。
とはいえ、日本には『グイン・サーガ』もあるので、そちらの感想文ならありえない話ではないかも!? もしもボリュームある小説を読んでみたいという、読書好きの方がいたら、今回名前があがった作品にチャレンジしていただきたい。
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