暗がりの中から聞こえる川のせせらぎ。闇に線を引くように光りながら飛ぶホタル。情緒あふれる光景である。
ホタルは、ホタル科に属する肉食の昆虫だ。黒くて固い羽根をもつその姿は、ちょっとゴキブリっぽい気もする。しかし、彼らのお尻は光る。その一点だけで、その他の昆虫にはない特別感があるのである。
日本には40種ほどのホタルの仲間がいる。有名どころでいうと、ゲンジボタル・ヘイケボタルだろう。今回の雑学は、ゲンジボタルについてである。なんと、西日本のゲンジボタルはせっかちだという。いやいや、ホタルがせっかちって。
そんなわけないでしょ。というわけで、本当に西日本のゲンジボタルがせっかちなのか調べてみた。
【動物雑学】西日本と東日本のホタルは光る頻度が違う
【雑学解説】東日本のホタルは4秒に1回、西日本のホタルは2秒に1回
調べてみたところ、本当に西日本のゲンジボタルはせっかちであった。東日本のゲンジボタルが1回光る間に、西日本のゲンジボタルは2回光っているのだ。
東日本は4秒・西日本は2秒に1回のペースで光る。
暗がりの中で光っているので正確な秒数まで把握するのは難しいが、西日本のゲンジボタルの方が光る間隔が短いことがおわかりいただけると思う。
飛びながら光るホタルの多くはオスで、メスに魅力をアピールするためといわれている。しかし、明滅の間隔が地域によって異なる理由はいまだにわかっていないようだ。
光らないホタルもいる
ホタルといえば光ると思いがちだが、実は光らないホタルもいる。むしろ光らない昼行性のホタルの方が多いのだそうだ。たしかに日中に光ったところで目立たない。
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そのかわりといってはなんだが、ほとんどのホタルの卵や幼虫は光るとのこと。卵や幼虫のときには光っているのに、成虫になると光らなくなるものが多いんだとか。
夜行性のホタルが光るのは求婚のため、というのは納得できる。しかしそれならば卵や幼虫はなぜ光るのか。それもまだ解明されていない。
ホタルは美しいけれど謎も多い昆虫なのだ。
【追加雑学①】唱歌「ホタルの光」の歌詞は故事成語からきている
「ホタルの光」という唱歌がある。卒業式や閉店間際の店内でよく聞くあれである。「ホタルの光 窓の雪」で始まるこの歌、実はある故事成語をもとに歌詞が書かれているのだ。
その故事成語のもとになった話がこちらである。
むかしむかしそのむかし。中国が晋(しん)と呼ばれていた頃の話である。車胤(しゃいん)と孫康(そんこう)という二人の青年がいた。二人は官吏(かんり:役人のこと)になりたいと思っていた。
官吏になるためには昼夜を問わず勉強する必要がある。しかし、二人の家は貧しく、明かりに使うための油を買うこともできないほどだった。
そこで、車胤は集めたホタルを袋に入れて明かりとして勉強した。また、孫康は窓の外に雪を積み、その雪明かりを頼りに勉強した。後に二人は高級官吏となったのである。
この話から「蛍雪の功」という故事成語ができた。そしてそこから「ホタルの光 窓の雪」という歌詞が誕生したのだ。ちなみに故事成語「蛍雪の功」の意味は「苦労して勉学に励むこと」である。卒業式にピッタリの曲といえるだろう。
そしてこの曲の原曲は、なんとスコットランドの民謡なんだとか!「ホタルの光」についてはもっと深く追求した記事もあるぞ!
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【追加雑学②】東日本と西日本はフォッサマグナで分けられている
さきほど、東日本と西日本でゲンジボタルの明滅間隔が異なる、という話をした。しかし、そもそも東日本と西日本はどのようにわけているのだろうか。
日本列島がきれいな長方形であればわかりやすいが、そんなわけがない。複雑な形を東西に分けるには何か根拠があるはずである。
というわけで調べてみると、東日本と西日本はフォッサマグナで分かれていることがわかった。そういえば中学生の頃の教科書に載っていた気がする。
フォッサマグナは大地溝帯(だいちこうたい)とも言われ、本州の中央にU字形の溝が南北に走り、その溝に新しい地層がたまっている地域のことを指す。
その大きな溝の西縁(せいえん:西の端のこと)は新潟県糸魚川市から諏訪湖を通って静岡市駿河区を結ぶ糸魚川静岡構造線であり、このライン以西のゲンジボタルはせっかちということになる。
また、東縁(とうえん:東の端のこと)は新潟県柏崎市と千葉県を結ぶラインといわれているが、諸説あり未だに確定していない。
ちなみに、フォッサマグナを発見したのは、ドイツ人のハインリッヒ・エドムント・ナウマンという、日本初の地質学者といわれる人である。
横須賀で発見された象の化石を研究・報告したことから、その象がナウマン象と名づけられたことでも有名な人物である。
雑学まとめ
ホタルについての雑学、いかがだっただろうか。人間でも関西の人はせっかちだ、なんていう話を聞く。それが真実かどうかはさておき、西日本のゲンジボタルは本当にせっかちであった。
西日本の何がそうさせるのかは不明だが、ゲンジボタルの本能が明滅の感覚を短くしろ!! と訴えかけているのだろう。
それにしても、ホタルについて調べているうちに、フォッサマグナなんてものがでてきて、思ったよりもスケールの大きな話になって驚いた。
ナウマンは、地質構造の違うラインが糸魚川から静岡まで続いていることから、フォッサマグナの存在に気づいたそうだ。
その地質構造の違いが、ゲンジボタルの明滅間隔にも影響を与えているのかもしれない。