童話や昔話に登場するオオカミは、いつでもずる賢くて悪さをするイメージが強い。
しかし、歴史をさかのぼると、オオカミを神様として崇めていた時代があることが分かった。現に、全国各地でオオカミを祀っている神社が複数存在する。
そんなオオカミのなかでも、今回の雑学記事ではニホンオオカミに焦点をあててみた。日本古来から存在したニホンオオカミはなぜ絶滅したのか? その理由を解き明かしていこう。
【動物雑学】ニホンオオカミが絶滅した理由
ニホンオオカミが絶滅した5つの理由
一般社団法人日本オオカミ協会の公式HPによれば、ニホンオオカミが絶滅した理由として、次の5つが考えられるようだ。
- 農作物を荒らすシカやイノシシなどの害獣を捕獲したことで、ニホンオオカミのエサがなくなり数が減少した
- 害獣の捕獲により、ニホンオオカミが放牧家畜や馬などを襲うようになり、駆除された
- 文明開化の途上にある中、ニホンオオカミの存在が邪魔になり政策の一環として駆除された
- 換金目的として価値の高いニホンオオカミが捕獲されたために減少した
- イヌから狂犬病などの伝染病がうつり、死に追いやられた
この5つの理由が正しいのであれば、5つのうち4つは日本人によって数が減少させられ、繁殖もままならない環境に陥ったことが考えられる。
では、ニホンオオカミの絶滅はいつ発覚したのだろうか。
いきものログによれば、ニホンオオカミは19世紀頃まで北は東北、南は九州各地にまで生息していたことが分かっている。
しかし1905年1月、奈良県東吉野村で捕獲されたニホンオオカミを最後に、パッタリとニホンオオカミの情報が途絶えてしまった。つまり、このニホンオオカミが生存確認された最後の1匹であり、ニホンオオカミは絶滅したと考えられるわけなのだ。
人間の財産ともいえる家畜を襲われてしまっては対抗する他に策はないけれど、換金目的で命を奪われたニホンオオカミがいたなんて、ちょっとかわいそうな気もする…。
大昔は神様扱いだったのに、文明開化と共に疫病神だなんて、ニホンオオカミに同情してしまう。
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【追加雑学①】絶滅したニホンオオカミの剥製は国内に3体しか現存していない
絶滅したニホンオオカミの剥製は、国内にわずか3体しか現存していないというから、さらに驚きだ!
その3体は、東京上野の国立科学博物館・東京大学農学部・和歌山県立自然博物館にそれぞれ1体ずつ保管されている。海外には、江戸末期に来日していたシーボルト(ドイツ人の医師・博物学者)が剥製を入手し、オランダ国立自然史博物館に持ち帰ったとされている。
また、イギリスの大英博物館自然史館には、ニホンオオカミの毛皮と頭骨が保管されており、なんと! このニホンオオカミは奈良県東吉野村で捕獲された最後のニホンオオカミなのだ。
当時、東アジア動物探検隊として来日していたイギリス人が猟師からニホンオオカミを買い取り、イギリスに持ち帰ったとされている。
ニホンオオカミの剥製は、国内の3体を含めても4体しか現存していないことを考えると、いかに貴重なものであるかが分かる。興味がある人は、国立科学博物館や和歌山県立自然博物館で展示されているニホンオオカミの剥製を見に行ってみてはどうだろうか。
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【追加雑学②】絶滅したニホンオオカミの復活を願う人々がいる
国内には、ニホンオオカミの復活を願う人々が少なからず存在する。一般社団法人日本オオカミ協会によれば、ニホンオオカミを復活させることで、近年問題化しているシカやイノシシなどによる農作物や人への被害を減らすことができるのだという。
また、別のNPO法人では、ニホンオオカミに似た動物に遭遇した・吠えられた・写真を撮ったといった証言も複数あり、証言を元に定点カメラを設置してニホンオオカミの生存確認を調査している団体もある。
ニホンオオカミは恐ろしくて人間に危害が及ぶ生き物だと多くの人は考えがちだけど、実際には「人間とニホンオオカミはうまく共存することができるはず」という意見もあるようだ。
【追加雑学③】イヌの誕生はオオカミの家畜化から始まった
オオカミがイヌの祖先であるという説は、近年の遺伝子解析によって真実に迫りつつある。諸説あるが、その中でも広く知られている説は、オオカミが家畜化されてイヌになったという説だ。
たしかに、オオカミの子どもであったなら、母性本能をくすぐられた人間が餌付けしようと考えたかもしれないし、オオカミの中でも警戒心が薄い個体が人間に近づいてきたのかもしれない。
ただ、オオカミは非常に警戒心が強く、人間に近づこうとしないため、家畜化説を否定する意見もあるようだ。
現に、海外でオオカミの子どもを捕まえて家畜化に成功したものの、飼い主に対して急に咬んだり吠えたりしたケースもある。
オオカミがイヌとは違う点は、イヌは昔から人間に従順になるよう改良されてきたということ。野生のオオカミをいくら手なずけたと思っても、オオカミの本能や性質のようなものは簡単には変えられないということが分かる。
狼酒と呼ばれる秘薬が存在した
山と渓谷社のニュースリリースによれば、同社出版の遠藤公男氏の著書『ニホンオオカミの最後』で書かれている「狼酒(おおかみざけ)」と呼ばれる秘薬が存在していたことが分かった。
同氏は、1978年(昭和53年)に岩手県大槌町を訪れた際、ある民家で江戸時代から代々受け継がれている秘薬の存在を知った。狼酒はオオカミの骨肉と塩水を漬けたもので、心臓の薬として用いられていたのだ。
さらに、狼酒に残る骨を最新科学で分析したところ、原料となったオオカミの骨肉はニホンオオカミのものであることが分かったとのこと。
そのため、ニホンオオカミが当時、価値が高い動物とされていたわけだ。
雑学まとめ
今回は、ニホンオオカミが絶滅してしまった理由についての雑学をご紹介したが、いかがだっただろうか。童話や昔話で悪者というイメージから「かわいそうな動物だなぁ」と感じた人もいることだろう。
ニホンオオカミが絶滅してしまった今、時計の針を戻してやり直すことはできない。だが、多くの動物と人間は同じ生き物なのだから、共存はできるはず。やはり命は大切にしたいものだ。
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