日本の伝統芸能とされる「能楽」。「能楽」というのは、明治維新後に付けられた名称で、かつては「猿楽」と呼ばれていた。ところで「能」を舞う際にかかせないのが、舞を披露する舞台である。
では、日本一古いとされる舞台は、いったいどこにあるのだろうか。この記事では、日本一古い能舞台とされる、京都・西本願寺にある「北能舞台(きたのうぶたい)」についてのトリビアをご紹介する。
【歴史雑学】日本一古い能舞台は西本願寺の「北能舞台」
安土桃山時代に建造された京都市の西本願寺にある「北能舞台」は、日本一古い能舞台である。
【雑学解説】「本願寺北能舞台」が建造されたのは安土桃山時代!
日本一古いとされる能舞台は、ズバリ、京都市・西本願寺にある「北能舞台」である。この舞台は1581年に造営された、現存する最古の能舞台として国宝に指定されている。
北能舞台は、豊臣秀吉の臣下だった下間少進(しもつましょうしん)という人物が、後の征夷大将軍・徳川家康から拝領し、寺内に移したものとされている。ここで、実際の動画をご覧いただこう。
動画1分あたりに登場する中庭にある舞台が北能舞台だ。
入母屋造(いりもやづくり)という様式で建造されたこの舞台は簡素な美しさに特徴がある。舞台の対面には、「白書院」といわれる能の見所(観客席)も設けられている。
北能舞台は、本舞台に続く「橋掛(はしかけ)」と呼ばれる部分が簡素な意匠で作られており、屋根が小さく、舞台の床の張り方などに特徴がある。こうした作りは、江戸時代以前の形式を伝えるものだという。
なお寺院の南側には、江戸時代初期に造営された「南能舞台(みなみのうぶたい)」も設けられている。南能舞台は、かつてこの地にあった伏見城の遺構とされるもの。こちらは国の重要文化財に指定されている。こちらは「対面所」と呼ばれる豪華絢爛な書院が、能の見所となる。
ちなみに、過去の京都検定三級合格ガイドには、日本一古い能舞台はどの寺にあるかを解答させる問題が出題されたようである。京都にお住まいの方は、要チェックのトリビアである。
スポンサーリンク
【追加雑学】「北能舞台」では現在も能が披露されている
日本一古い能舞台が、西本願寺にある「北能舞台」であることはお分かりいただけただろう。つぎにこの舞台では、現在でも能が奉納されていることをご紹介しよう。
西本願寺では、毎年5月21日、浄土真宗の開祖・親鸞(しんらん)の生誕にあわせて、祝賀能が披露されるという。その起源は、本願寺派の第8世にして、本願寺の中興の祖ともいわれる蓮如(れんにょ)にある。彼は教えを広める手だてとして能を奉納したというのだ。
また2013年11月には、人間国宝に認定された能楽師たちがこの舞台で能を上演した。人間国宝を含む数人の能楽師らが、招待客の約100人の前で舞を披露したのだ。
2013年は、室町時代に能を大成させた世阿弥(ぜあみ)の生誕から650年にあたる年。舞を披露した関係者によると、自然の空気が感じられる舞台では、ふだんとは違った緊張感や人々の視線を感じたという。
国宝を舞台とした能の上演。多くの舞台を踏んだであろう関係者でさえ、北能舞台はふだんとは違った気持ちで能を披露したことが、この発言からも伝わってくる。
雑学まとめ
以上、日本一古い能舞台「本願寺北能舞台」にまつわるトリビアと、現在もこの舞台で能が奉納されているトリビアについてご紹介してきた。
国宝に指定されている西本願寺「北能舞台」。それは能楽師にとってもなかなか立つことが出来ない舞台なのだろう。
これからも北能舞台が末永く後世に受け継がれ、この舞台で多くの能が奉納されることを願ってやまない。