夏の太陽がふりそそぐ暑い日、外で過ごすときには、とにかく影になる涼しいところを探してしまうものだ。
たとえば公園に植えられている大きな木の木陰。太陽の光がさえぎられ、影になったところだけ気温が低く感じられ、汗をぬぐいながら一休み…。そんな経験はないだろうか。
日が当たらない日陰だから涼しい…。単純にそう思っていたのだが、じつは木陰が涼しいのはちゃんとした自然のメカニズムがあってこそなのだ。
今回は、やっぱり緑って大事だよなぁ~と思える、植物の働きについての雑学を紹介しよう。
【自然雑学】木陰が涼しい理由は影だからではない
【雑学解説】木陰が涼しい理由は、葉っぱから水が蒸発するときに、まわりの熱を奪うから
たとえば、ビルの陰や運動会のグラウンドに張られたテントの中。同じく日光をさえぎっているのだが、ちっとも涼しく感じられない…。なんだかよけいに蒸し暑く感じることさえあるのだが、木陰に入って感じる涼しさとは何が違うのだろう。
木陰が涼しい理由は、「植物が生きているから」なのだ。植物が生きるために行う「蒸散」が、木陰を涼しくしているのである。蒸散…。学校の理科で習った記憶があるが、すっかり忘れているため、確認してみた。
蒸散とは?
植物は、生きていくために必要な水分や養分を土の中の根から吸い上げ、余分な水分を葉の裏にある気孔という穴から蒸発させている。
この働きを蒸散というのだ。
蒸散の役割
- 植物の体温調節…暑い日に水をまく、打ち水のようなもの
- 新しい水分を循環させる…古い水分を出すことで、新しい水分を吸い上げる
- 光合成に使われる
このように、蒸散は植物にとって欠かせない生命活動だ。
もし蒸散が行われなかったら、根から常に水分を吸い上げているためパンクしてしまい、葉も日光で高温になってしまう。
蒸散することで、雨が降らない日が続いても、つねに植物の内部は新しい水分が循環する。また、真夏の強い日差しの中でも、打ち水のような働きで葉を冷やし、葉は青々と生い茂っていられるのである。
水分が気孔から水蒸気となって蒸発するとき、おどろいたことに、水の分子同士のつながりを切断するため、じつは周囲から熱を奪っているのだ!
木陰に入って涼しさを感じる理由は、日光をさえぎり日陰を作るうえに、蒸散によって回りの熱を奪い、温度を下げているからなのである。
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【追加雑学①】夜は芝生のような木のない場所のほうが涼しい
日中は、日光が地面も熱し続けるので気温も上がるが、夜になると今度は地表から熱が逃げていき、気温も下がる。これは「放射冷却」という現象である。
「砂漠の夜は寒い」と、聞いたことがないだろうか。これは、地表から逃げる熱をさえぎるものが砂漠には何もないため、強い放射冷却が起きているのだ。
同じように、木のない芝生などでは、地表から逃げる熱をさえぎるものが少ないため、気温が下がっていく。逆に木が生い茂ったところでは、木の枝や葉が地表から逃げる熱をさえぎるので、極端に気温は下がらないのだ。
つまり、日光がふりそそぐ日中は、木陰が涼しいのだが、日が落ちて夜になってからは、芝生のような木のない場所の方が涼しいのである。
【追加雑学②】都会の夜が、田舎の夜より暑く感じる理由
夏休みに帰省したときや、旅行に出かけたときに、田舎の夜は涼しいと感じたことはないだろうか。建物が密集していないため、風通しが良いということもあるのだろうが…。
都会は、車や電車・人も多いため、日光以外の熱が田舎に比べて圧倒的に多い。そして一番の理由は、都会は高層ビルに囲まれ、地面がアスファルトに覆われていることだ。
アスファルトは熱をため込み、夜になっても熱が逃げていきにくい。熱が上空へ逃げようにも、高層ビルがさえぎってしまうため、暑い空気がなかなか逃げていかないのである。
都会の夜の方が暑く感じるのは、日中にたまった熱が夜になっても逃げていかず、気温が高くなってしまうからなのだ。
雑学まとめ
今回の雑学では、木陰が涼しくなる理由を自然のメカニズムとともに紹介した。日陰だから涼しい…なんて、単純な考えしかなかったのだが、植物が生きていくための生命活動のおかげで、涼しい空間が作られていたのである。
ビルの屋上に、たくさん植物を植えた屋上庭園を見かけるが、実際に行ってみると都会の中なのにとても涼しいそうだ。暑い日には、植物が自然に作る涼しさを感じるのも良いかもしれない。みずみずしい緑を見て、リラックスもできるのでは。
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