冬、本格的に寒くなるのを前に、松の木にワラを巻いているのを見たことはないだろうか? 松の幹の一部にだけ巻いていて、そう、おっちゃんの腹巻きみたいなアレ。
あのワラは、冬の訪れと同時に松に巻かれ、春になるとはずされる。なぜ冬になると巻くんだろう。寒さ対策? 木を守るため?
おっちゃんの腹巻きのような松の木のワラ。今回は、そんなワラについての雑学を紹介しよう。
【自然雑学】ワラを巻いた松の木「こも巻き」はなんのため?
【雑学解説】マツカレハの幼虫を一気に駆除するために行う「こも巻き」
松並木や日本庭園などで、冬になると松の木にワラを巻く風習がある。これは「こも巻き」と呼ばれ、立冬の頃に行われる。
ところで、なぜワラが巻かれているか知っているだろうか?
こも巻きは、松の木で成長するマツカレハという虫の幼虫を、駆除するために行われている。マツカレハは松の葉を食べる害虫なのだが、その幼虫は松の木の根っこ近くの地面など、暖かい場所で冬を越すのだとか。
そこで始まったのがこも巻き。マツカレハの幼虫が地面近くに下りてくる前に松の木にワラを巻きつけてあったかポイントにし、そこで冬を越させてしまおうというわけ。そして春になったら、松の木からワラをはずし、ワラごとそのまま焼却処分してしまうのだ。
殺虫剤をまき散らすこともなく、松の木に害を与える害虫を一網打尽。マツカレハにしてみれば、ワラというあったかポイントでぬくぬくしながら春を迎えるはずが、まさかのジ・エンドである。
だがしかし、あまり想像したくはないが、ワラをはずしたらそこには毛虫がうじゃうじゃってこと…? さ、寒気が…。
では実際のこも巻き作業の動画を紹介しよう。
【追加雑学①】実はこも巻きにはマツカレハの幼虫を駆除する効果はなかった!?
マツカレハの幼虫を一気に駆除する方法として長く定着してきたこも巻きだが、本当に効果があるのかを調べた調査結果がある。
その結果、な、な、なんと! まさかの効果なし!
姫路城で2002年~2007年までの5年間、ワラをはずしたときにその中にいる虫をすべて調べたんだとか。すると、中にいたのはほとんどが益虫だったという。マツカレハの天敵であるヤニサシガメ、そして害虫を食べるクモ。中にいた虫の60%近くが、この2種類の虫だったというのだ。
肝心のマツカレハの幼虫は、というと…。わずか4%ほど。害虫4%・益虫60%。もう全然意味ないじゃないか…。
ではマツカレハの幼虫はいったいどこにいるのか。これがなんと、ワラに覆われた部分の、幹の割れ目などに潜んでいたという。マツカレハの幼虫にあったかポイントを提供しただけで、そのワラには移動してこなかったということだ。残念。
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【追加雑学②】こも巻きは冬の風物詩として定着
こも巻きにはマツカレハの幼虫駆除の効果はほとんどなく、こも巻きを中止する自治体も増えている。しかし、効果はなくてもこも巻きを続けている自治体もまだまだたくさんある。
これは、害虫駆除というよりも、「冬の風物詩」という意味合いも強いようだ。たしかに、大きな日本庭園や、松の木がズラッと並ぶ松並木などでこも巻きしている松を見ると、本格的な冬の到来を感じさせる。だからこそ、その時期になると地元のニュースなどでこも巻きが取り上げられるのだろう。
【追加雑学③】こも巻きには雪や霜から木を守る効果も
もともとは害虫駆除のために始まったこも巻き。だが害虫駆除だけでなく、寒さによる雪や霜から松の木を守る役目も果たしている。
松は、根が完全に凍らない限り枯れることはないらしいのだが、それでも冷たくて乾いた風や雪、霜などは松の木のストレスになる。また、雪の重さで枝が折れたりすることも。こも巻きは、自然環境によって生じる松のストレスや被害を少なくするものでもあるのだ。
ちなみに金沢の兼六園では、松を雪から守るために、こも巻きではなく「雪づり」という方法をとっている。害虫駆除の目的ではなく、完全に雪から松を守るための方法だ。
この動画のいちばん最後に出てくる、松の木にかかった傘のようなもの。これが「雪づり」だ。支柱を立て、てっぺんから縄で松の枝をつるのだが、いちばん大きい松に使う縄は約800本! かなり大がかりだ。
雑学まとめ
松にワラを巻く「こも巻き」は、害虫駆除のためという雑学をご紹介した。
最初にこも巻きを考えた人はきっと思ったはず。「一気に害虫駆除とか、考えた俺天才!」と。…が、その効果はなかったとか…。もうホント、残念すぎ。
だが松の木をはじめ、こも巻きをした木にうっすら雪が積もっているのを見ると、日本の風情のようなものを感じるではないか。ザ・和風!
効果のないものに経費も人手もかけられないというのもわからなくはないが、冬の風物詩がこうしてだんだんとなくなってしまうのは、なんとなくさびしいものである。