幕末を語るうえで、必ず登場する「新選組」。殺気だった反幕府派の浪士たちを取り締まり、京都の治安を守る武装集団だ。今でいう警察のような部隊で、この新選組を率いていたのが、近藤勇(こんどういさみ)である。
「真剣を持たせれば敵なし!」といわれるほどの剣の達人で、容赦ないやり方に京都の町では恐れられていた…というところまでは、筆者の中にもイメージとしてある。しかし、近藤勇の妻のことは、あまり知られていないのではないだろうか。
妻!? 奥さんいたんだ…。筆者など、存在すら気にかけたこともなかった。
近藤勇には「つね」という妻がいるのだが、妻を選んだ理由が「美人じゃないから」なのだという。なんだその理由は…。ちょっとイラッとする。
ほんとうにこんな理由で結婚したのか!? 今回は近藤勇と、美人じゃないから結婚したなどといわれている妻についての雑学を紹介していくぞ!
【歴史雑学】近藤勇はあえて「美人じゃない妻」を選んだ
【雑学解説】近藤勇は、美人じゃない妻を選んだのには理由があった
近藤勇は、もともと宮川という名の百姓の子として産まれた。14歳のときに、江戸にある剣術の流派「天然理心流(てんねんりしんりゅう)」の道場・試衛館(しえいかん)へ入門した。そして、剣の腕をあげ、近藤家の養子となり4代目を継ぐことになったのである。
このころ、たくさんお見合いをしたらしいが、勇はどの女性も受け入れなかったという。そして、徳川家の家臣の娘である「松井つね」という女性に出会い、ようやく結婚を決めたのだ。
ことごとく見合いを断ってきた勇が、なぜつねを受け入れたのか? 仲人も不思議に思って勇に聞いたという。その質問に対して勇が語った内容とは…。
「美人というのは、浮気者である。醜い女性は、自分がそうだと知っているから、控えめで夫に尽くすものだ」
「あんた何様なの!?」と思われ、現代では誰も嫁に来てはくれなさそう…。しかしこの頃は、とにかく妻は夫に仕えるという時代だったのだ。
美人じゃないから貞淑な妻になるはずだ…。こう言った勇が、どこまで本気でそう考えていたかは分からないが、「美人じゃないから良い」理由はほかにもあったようだ。
容姿ではなく礼儀作法を重視して選んだ!?
勇が4代目となった道場には、たくさんの若い門下生がいたのだが…
「妻が美人だと、道場の若い連中がうつつをぬかすから、道場をきりもりする女将として、容姿よりも礼儀作法が大事」
といった考えもあったそうだ。
つねは、由緒正しい武家の出身。百姓の子として産まれた勇にとって、つねからにじみ出る育ちの良さや、武士の娘らしく強く賢い凛とした姿に、魅力を感じたのではないだろうか。
近藤勇は、あえて美人じゃない妻を選んだというよりも…容姿は問題ではなかったという風には思えないだろうか。見かけではなく、一緒に道場をきりもりしていくための支えとなる伴侶を、つねだからこそ選んだのだ! と、思いたい…。
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【追加雑学①】京都に3人の愛人がいた
新選組を率いて京都の警備にあたることが決まり、勇は江戸の道場をまかせ、つねと子供を残し、京都での単身赴任生活となった。
新選組の局長として活躍していたとあって、京都での女性関係もなかなか派手。たくさんの愛人がいたともいわれているが、なかでも有名な3人の愛人を紹介しよう。
- 深雪太夫(みゆきたゆう)…遊女の中でも最高位だった彼女を近藤勇が身請け(金を払って、稼業を辞めさせる)したが病死している。
- お孝…深雪太夫の妹で、勇との間に女の子をもうけた。
- 駒野…芸妓。勇との間に男の子をもうけた。
美人じゃないからと言ってつねと結婚したが、愛人3人はとびきりの美人だったらしい…。
【追加雑学②】近藤勇の稽古着には、妻が刺繍したドクロが…
近藤勇が愛用していた稽古着が残っている。その稽古着には、ドクロの刺繍が入っているのだ。つねの反撃か!? と、かなり嬉しくなったが、ドクロの刺繍には、夫を心配するつねの思いが込められているそうだ。
つねが刺繍したドクロがこれだ!
つねがドクロの刺繍をした、近藤勇の稽古着が残されている。
なんだかかわいらしいドクロで、思わずにんまりしてしまった。
当時、ドクロマークは、常に決死の覚悟をもって戦いに挑むという意味合いと、力の誇示をあらわしていたものらしい。また、魔よけの意味もあったそうで、つねの夫に対する思いが込められているのだろう…。
雑学まとめ
今回は、新選組局長の近藤勇が妻として選んだ女性についての雑学を紹介した。近藤勇はそうとう女遊びをしていたが、この時代ではそんなに珍しいことではなかったようだ…。
勇は、つねと娘に会うのを楽しみにしていたという。そして、つねは勇の死後、強引に再婚をすすめられたときは自殺を図るほど拒み、最後まで勇の妻として生きたそうだ…。
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