実際に格闘するわけではなくても、「○○の格闘技」などという異名をもつ競技が数多くある。氷上の格闘技と呼ばれる「アイスホッケー」に、水中の格闘技と呼ばれる「水球」、またスポーツではないが、「チェス」は盤上の格闘技などと呼ばれている。
そんななか今回の雑学で紹介するのは、「最速の格闘技」という異名をもつスポーツ「ラクロス」だ。ラクロスというと、名前は知っていてもどんな競技か詳しく知らない人も多いだろう。実はその異名に違わず、随一の激しさをもったスポーツなのだ!
【スポーツ雑学】「ラクロス」は最速の格闘技と呼ばれている
【雑学解説】「ラクロス」はアイスホッケーとアメフトをミックスさせたようなスポーツ
ラクロスは、約100メートル×55メートル(屋外の場合)のフィールド上で、選手たちが先端に網のついたスティックを用い、ゴム製のボールを相手ゴールに入れて得点を争うスポーツである。
1チーム10人の構成。サッカーと同じように、攻撃を担当する選手、中盤でパスを繋ぐ選手、最後尾で守備をする選手、ゴールマウスを守る選手など、ポジションごとにそれぞれ役割が与えられている。
ラクロスの特徴は何といっても、選手同士がボールを奪い合うボディコンタクトの激しさにある。以下に北アメリカで行われる「メジャーリーグ・ラクロス」の試合の動画を載せておこう。
どこかアイスホッケーを彷彿させる、激しいぶつかり合いが展開されていた。動画のように、男子の試合では「ヘルメット」や「プロテクター」を装着する。まるでアメフト選手のような装いである。
女子の試合ではボディコンタクトは禁止されているが、フェイスガードなどは装着している。やはり禁止していても、アクシデントは付き物のスポーツだということか。
また選手たちが放つシュートは、ときに160キロ以上を記録する。その激しさとスピード感から、ラクロスは「最速の格闘技」という異名をもっているのだ。
ラクロスのルーツとは?
ラクロスは北米の先住民がおこなっていた儀式や、部族間で争いが生じた際に解決のために用いられていた行事にルーツがある。
部族間の争いが戦争ではなく、スポーツで解決されていたことがあったというのは意外だ。また争いから生まれたという背景から、激しい競技になったことにも合点がいく。
ちなみに現在の競技人口は世界に約60万人、国内では約2万5000人ほどだ。4年に1回、男女のワールドカップも開催されており、北アメリカにはプロリーグも存在する。
またオリンピックでは公開競技として実施された歴史もあるなど、紛れもない国際的スポーツである。競技が行われたのは、1908年のロンドン・1928年のアムステルダム・1932年のロサンゼルス・1948年のロンドンの4回。
こう聞くとオリンピックでの実施はかなり昔の話に思えるが、なんと2018年には国際オリンピック委員会が「国際ラクロス連盟」を承認団体とした。
このことから、2028年のロサンゼルスオリンピックまでには、再び大会の正式種目となっている可能性が高いといわれている。オリンピックで「ラクロス」が観戦できる日は近いかもしれない。
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【追加雑学①】男女でこれほど違うラクロスのルール
ラクロスは男女でルールが大きく異なることも、特徴の一つだ。
たとえば男子ラクロスでは、クロスと呼ばれるスティックで、相手選手にプレッシャーをかけることが許されている。ボールを持っている選手のグローブやクロスを叩いたり、タックルをしたりと、ボディコンタクトはかなり激しい。
しかし女子ラクロスのルールでは、相手選手のクロスを叩くのは認められているが、ボディコンタクトはルール上認められていない。
また、試合を開始する際のスタートの形式も異なる。男子は「フェイスオフ」と呼ばれる、フィールドの中央にボールを置き、両リームの選手たちがスティックや体をぶつけ合って、ボールを奪い合うことから始まる。
女子の場合は両チームの選手が試合開始の笛を合図に、クロスの裏側でボールを宙に上げ、そのボールを奪い合うことからスタートする…といった具合だ。以下の動画で、その模様が確認できる。
男子と女子とでは体格がまず違うので、こういったルールの違いはいわば当然ともいえる。もっとも、相手のクロスを叩いていい時点で女子ラクロスも十分激しいのだが…。
【追加雑学②】ラクロスと似た「ポロ」という競技がある
ラクロスと似た競技に、馬に騎乗してボールを打ち合う「ポロ」という競技がある。紀元前6世紀のペルシャ(現在のイラン)を起源とし、世界で最も古い歴史をもつスポーツ競技といわれている。
当時の移動手段といえばまず馬だ。身近な動物だったが故に、スポーツに使われる流れにもなったのだろう。
ポロは、270メートル×150メートルの広大な競技場で行われる。1チーム4人で構成され、選手は馬に乗って、マレットと呼ばれるスティックで球を打ち合い、相手チームのゴールエリアに入れた得点数で勝敗を争う。
以下の動画では、ポロの競技の様子が見られる。動画からも広大な敷地が必要なことを実感できるだろう。
ちなみに日本でも、2016年に「日本ポロ協会」が設立された。しかし広大な競技場が必要なほか、選手ごとに最低2頭の馬を用意しなければならないなど、条件が厳しいため、現状では国内のごく一部でしかおこなわれていない。
オリンピックでも、1936年のベルリン大会までは実施されていたが、それ以降は廃止されている。やはり他のスポーツよりも実施のハードルは高いのだろう。
ちなみに「ポロシャツ」は、この競技に出場する選手が着用して生まれたものだ。そう考えると、意外と身近に感じられるのが不思議である。
雑学まとめ
ラクロスについての雑学、いかがだっただろうか。ラクロスは日本での認知度こそ低いが、北米ではセミ・プロリーグとして確立している人気スポーツだ。最速の格闘技という異名に違わず、激しい試合運びは見応え抜群である。
オリンピックの正式種目となれば、その人気もさらに加速するのではないだろうか。今後の発展に目が離せない競技である。