子どものころに多くの人が歌ったであろう童謡の『ロンドン橋落ちた』。陽気なリズムとメロディが覚えやすく、大人になった今聞いても「いい歌だな~」と思わされる名曲である。
ところでこの歌のなかで、何度も「落ちた」といわれるロンドン橋…筆者はジョークのような感じでそう歌われているのかと思っていた。しかし史実を辿るとこの橋は、本当に歌われているぐらいの回数落ちているというのだ!
…まさかベニヤ板でできた橋とかいうオチじゃないよな? ということで、今回はこのロンドン橋の雑学に迫っていこう。
【世界雑学】童謡「ロンドン橋落ちた」は事実だった。
【雑学解説】長い歴史で何度も落ちたロンドン橋
ロンドンのテムズ川にかけられたロンドン橋は、以下の動画で映されているタワーブリッジとよく勘違いされる。
うん…どこか中世の香り漂う荘厳な佇まいである。
これは歌になるのも不思議ではないな…とみんな勘違いするのだが、本当はその隣にある、比べると地味でともすれば見逃してしまいそうな橋が、童謡で有名なロンドン橋だ。
良くも悪くも普通。
現在のこの橋は1973年に完成したもので、当時は現イギリス女王のエリザベス2世によって盛大に開通式が行われたことでも知られている。
しかしそこにいたるまでの歴史は西暦46年からと長く、実は童謡になっているように、何度も崩れ落ちた過去があるのだ。ざっと辿ると以下のような流れである。
- 46年…この辺りを統治していたローマ人によって木製の橋が建てられる
- 1013年…北からやってきたバイキングたちの侵入を防ぐために焼き落とされる
- 1091年…修復されたものの嵐で崩壊
- 1136年…火災で崩壊
- 1209年…33年の歳月を要して石造りの橋に造り替えられる
- 1381~1450年…度重なる内乱の攻防戦によって半壊
- 1633年…火災により北側3割が崩壊
- 1831年…巨額を費やし、大理石の橋に造り替えられる
- 1968年…船の渋滞を解消するためアーチの幅を広くしたところ、沈下が進み取り壊される
- 1973年…古い橋の売却資金が一部充てられ、現在のコンクリート製の橋が完成
約2000年の歴史があることを踏まえると当然っちゃ当然だが、それにしても圧巻の崩壊頻度だ。
当初は木製だったため、天災や敵の侵略で破壊されたことは想像に容易いが、それ以上に1750年にウェストミンスター・ブリッジが建設されるまで、テムズ川の南北をつなぐ橋がロンドン橋だけだったことが、度重なる崩壊の理由といえる。
そこしかなければ使用頻度はうんと高くなり、負荷もかかれば橋の上での争いも起きるということだ。
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「ロンドン橋落ちた」の歌詞は崩壊の歴史【動画】
ロンドン橋の崩壊の歴史を巡って、1700年代には童謡の『ロンドン橋落ちた』も登場しているが、その出自ははっきりしていない。何度も崩れ落ちていることを揶揄して、お遊び的に歌われるようになった感じか?
歌詞の内容にはさまざまなバージョンがあるが、おおまかには橋の材質を巡って「あーでもないこーでもない」とやり取りするものだ。
内容をまとめると以下のような流れになっている。
- 木と泥で造れ→流される
- レンガと砂で造れ→崩れる
- 鉄の棒で造れ→曲がる
- 銀と金で造れ→盗まれる
- 寝ずの番を置け→眠くなる
印象的なのは「銀と金で造れ」という部分。これは14世紀ごろ、橋の上に建物が100軒以上も立ち並び、盛んに貿易が行われていたことを表すものである。実際に内乱などで建物が焼き払われたことを考えると、「盗まれる」としているのも妥当だ。
そしてその次の「寝ずの番を置こう」という部分は、一説には橋に捧げる生贄を表すものだともいわれる。橋を建てる際に生贄を埋めると、その橋は永遠に守られるという考えがあったのだとか…。
また16世紀には、南側の水門で頻繁にさらし首が行われていたため、それを表しているなんてものも。…いずれにしても物騒な話だ。ちなみに動画では歌われていないが、この後に以下のような歌詞が続く。
- 丈夫な石で造れ→アメリカ人が持ってった
「アメリカ人が持ってった」という部分は現在の橋が建てられる際、アメリカの企業が以前の大理石製のものを買い取ったことから、後年に付け加えられたものだ。
こう、歌詞を見てみると見事なまでに「何度も崩れ落ちたこと」がロンドン橋の代名詞になっていると実感させられる。
【追加雑学】「ロンドン橋落ちた」は子どもの監禁を表している?
子どものころに『ロンドン橋落ちた』を歌いながら、アーチ役の腕の下を順番にくぐっていく遊びをしたことがある人もいるだろう。歌い終わったときにアーチ役の2人がつないだ両手を降ろし、捕まった人がアウトというゲームである。
実はこの遊びには、10世紀ごろのイギリスの城や教会に子どもが監禁されていたことにちなんでいるという、怖い都市伝説があるのだ。ゲームで捕まってしまった人は、監禁されたことを表すというのか…。
なんでも当時のロンドンでは、「子どもを監禁するとその建物が頑丈になる」という、意味不明な言い伝えがあったという。前項にもある橋に捧げる生贄というのは、実は監禁された子どもたちのことだったのかも…?
「ロンドン橋落ちた」の雑学まとめ
今回は、「ロンドン橋落ちた」についての雑学をご紹介した。
ロンドン橋は長らくテムズ川を渡る交通手段がそれしかなかったことや、天災などさまざまな理由で崩壊を繰り返してきた。そしてそういった経緯から揶揄するように生まれたのが、童謡の『ロンドン橋落ちた』である。
一部恐ろしい言い伝えなどもあるが、真実は誰にもわからない。なんにせよロンドン橋が丈夫に生まれ変わり、ほかにも多くの橋が渡された現在では、もう落ちる心配はないだろう。