お弁当の定番、幕の内弁当。しかし、肝心の中身がどんなものであるかといわれると、意外と説明できない。
そもそも、幕の内とは何のことなのか?
筆者は偏食児なせいで、幼稚園のお弁当は「おにぎり・唐揚げ・きゅうり・卵焼き・りんご」一択だったのだが、このように決まったメニューのことを幕の内と呼ぶのか?
それとも、幕の内とは丸の内のような地名のことで、特定の界隈で食べられていたから幕の内弁当と呼ばれるようになったのだろうか?
というわけで今回の雑学記事では、幕の内弁当の由来についてご紹介しよう!
【食べ物雑学】幕の内弁当の由来とは?
【雑学解説】幕の内弁当の由来と変遷
幕の内弁当の由来には、ざっと以下のようなものがある。
①観客が芝居の幕間に食べる説
②役者が幕の内側で食べる説
③芳町の万久という店が売り出した説
④小さなおむすび→小結→幕の内へ、という相撲由来説
しかし、「幕の内」という言葉が基本的に「芝居の幕の内側、幕間」を意味すること、相撲の位階は「幕内」と表記することから、芝居小屋で客(または役者)が食べていた弁当が由来とするのが定説。まさかの①と②合わせ技である!
幕の内弁当が広く知られるようになったのは、明治期の鉄道と関係がある。鉄道の普及によって地方へ伝播した文化は少なくない。幕の内弁当も例にもれず、駅弁として広まった。
駅弁初の幕の内弁当は、明治22年(1889年)、まねき食品が姫路駅で売り出した商品。当時の駅弁はおにぎりと沢庵のセットが主流だったので、さぞかし人目を引いたに違いない。
ご飯とおかずを組み合わせた幕の内弁当は、駅弁を経て、現在のコンビニ弁当の元祖ともいうことができるのだ!
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【追加雑学①】幕の内弁当のメニューって決まってる?
幕の内弁当のおかずに決まったものはない。
あえていうなら、定番トップ3は、卵焼き、かまぼこ、焼き魚。そこに煮物や揚げ物、佃煮などが加わるのが王道パターン。もともとは膝上で広げた弁当なので、着物が汚れないよう汁気はないのが望ましい。
ご飯は俵型に抜いて、ごまを振ってあることが多いが、こちらも特に決まりはない。
さらに言えば、必ずしも和食である必要はなく、ハンバーグやエビフライなど洋食のおかずでも構わない。なんというフリーダムさ! もうご飯とおかずが入ってりゃみんな幕の内ってレベルの寛容さ!
ちなみに、先述のまねき食品の元祖幕の内弁当のメニューは、以下のラインナップだった。なかなか豪華だぞ!
鯛の塩焼き・伊達巻・焼いたかまぼこ・卵焼き・大豆と昆布の佃煮・ごぼう・フキ・ゆりね・たけのこ・にんじん・ソラマメ・きんとん・奈良漬・梅干し
【追加雑学②】松花堂弁当と幕の内弁当は別物
幕の内弁当と混同されることが多い松花堂弁当。両者は全くの別物だ。
松花堂弁当は料亭「吉兆」の湯木貞一が考案したもので、懐石料理の流れを汲む。つまり、お茶の前に食べる軽い食事がベース。
一方、幕の内弁当は武家のおもてなしから発達した本膳料理がベースである。時代劇によく出てくる黒い膳に乗った食事を想像してもらいたい。
しかし、一番わかりやすい違いは容器。
松花堂弁当は、「四つ切り箱」という十字の仕切りを使った独自の箱に料理を詰めている。
対して、幕の内弁当に特有の弁当箱はない。またもフリーダム! この位置に仕切りがないとダメとか、盛り付けに厳格なルールがあるとかは一切ないのだ。
ちなみに、「吉兆」は現在歌舞伎座にも出店している。相手の土俵でしれっと商売をする強かさ…嫌いじゃない!
幕の内弁当の雑学まとめ
幕の内弁当についての雑学、いかがだっただろうか。もはや由来とは真逆に、幕の外で食べられることがほとんどな幕の内弁当。
意外なことに、中身は「そんなに自由で大丈夫か?」といいたくなるほどフリーダムだった。
弁当の代表的存在として定着するからにはそれなりに明確な定義があると思いきや、逆にこれといった枠を設けず自由に作れるからこそ、定番となるに至ったのかもしれない。
筆者が幼稚園時代、キティちゃんのお顔の弁当箱に詰めてもらっていた偏食弁当も、だいぶ広義でとらえれば幕の内弁当ということに…いや、ならないな!