あなたは犬派? それとも猫派? 私は子どものころに飼っていたので猫に愛着があるが、人懐こい犬も大好きだ!
そもそも元を辿ればどっちも同じ先祖に繋がっているんだし、もう同じ動物みたいなもんだよね! …というのは少し言い過ぎだが、犬と猫の先祖が同じというのはほんとである。
彼らの先祖であるミアキスがどのように進化していったかを辿ると、同時に犬や猫がもつ特徴が、いかにして培われていったのかもわかる。彼らのもつ習性や身体の構造は、すべて進化の過程で必要だったからこそ備わったものなのだ!
今回はそんな哺乳類たちの進化の鍵を握る動物、ミアキスの雑学を紹介しよう。
【動物雑学】犬と猫の先祖は「ミアキス」という動物
【雑学解説】ミアキスはそれぞれ森と草原に居場所を求めて進化していった
今から約6,500万~4,800万年前、大型の恐竜が絶滅して哺乳類の時代を迎えたころの話。地球には「ミアキス」という動物が生息していた。
ミアキスは体長約30センチ、スリムな体に短めの足と長い尾をもった、イタチのような小型の四足歩行の動物だったと考えられている。なんといっても目を引くのは、犬と猫、両方の特徴を併せもっていることだ。
骨盤は犬のようだが、四本足の先端の爪を猫のように引っ込めることができる。その爪を器用に使い、木の上で生活していたのだとか。
当時は数メートルにもなる大型哺乳類・ヒアエノドンが陸上を牛耳っていたため、ミアキスは木の上での生活を余儀なくされていたのだ。
このミアキスが進化したものが、いまの猫や犬だという。ライオンくん、そういう君も元を辿ればミアキスなんだぞ。
どうしてまったく別の進化を遂げたかというと、彼らの住む環境が分かれていったからだ。
種が繁栄し始めると、みんながずっと森で暮らしていくには食料が足りない。また天敵のヒアエノドンも2,300万年前ぐらいには絶滅しているので、絶対に木の上に留まっていなければいけない理由もなくなった。
こうしてある者は草原に安住の地を求め、ある者は森に残り…といった棲み分けが生まれ始めたのである。これが、のちに猫・犬というまったく別種族として生きていくきっかけとなるのだ。
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森に残ったミアキスは猫に進化
森に残ったミアキスは、木々のなかで身を隠して獲物を狙えるように単独行動を行っていた。そうなると身体は小さいほうがいいし、なにより獲物に一瞬で襲い掛かる瞬発力が大事になってくる。
そう、森に残ったミアキスたちは森で生きるために必要なその特徴から、段々と猫へと進化していったのである。猫が多少高いところから落っこちてもヒラリと着地してみせるのも、ミアキス時代に培った独自の身体構造によるものだ。
たしかに猫は犬と比べて、あまり他の個体と群れなさそうな感じがする。人間に対してもツンデレだし。
また彼らがエサにしていたと考えられるパラミスはネズミの先祖だ。そのころの捕食関係が今も残っているのはおもしろい。
もちろん、現代の猫の木登りも職人技! まるで忍者のごとく!
森に残ったミアキスは各年代において、以下の種族に進化していった。
- 約2,500年前…プロアイルルス(体重10キロ前後で現在の猫より多少大きい。モンハンのアイルーが思い浮かんだけど、多分関係ない)
- 約2,000万年前…プセウダエルルス(チーターやヒョウのように大きな身体になっているが、相変わらず木登りは得意)
- 約1,800万年前…シザイルルス(今度はエグザイルっぽいけど余計関係ない。この次からイエネコの先祖へと進化していく)
という感じ。ちなみにプセウダエルルスから枝分かれしたマカイロドゥスは、サーベルタイガーの先祖だ。そっちは絶滅しちゃったけど。
こうして現在のネコ科動物の姿へと進化を遂げた彼らは、数百万年前、海面の水位が低くなって大陸がつながったことを利用し、世界中へと移動していく。
最古のネコ科は2500万年前の漸新世中頃のプロアイルルスだと言われているけど、現生のヤマネコよりしっぽがやたらと長い。今の猫はモップだが、これはムチだな。 pic.twitter.com/aRLM1bYY4m
— 立見@ReverseGear (@reverse_gear12) April 14, 2013
紀元前1万年に人との共存が始まる
そんななか紀元前1万年ごろ、小アジア(現・トルコ)にて、リビアヤマネコという種類が人に飼われ始めたことをきっかけに、人と共存するイエネコの歴史が始まったという。
根拠は国際チームによる2004年の発掘で、トルコ南部のキプロス島・シルロカンボス遺跡から、約9,500年前に人間と一緒に埋葬された猫の化石が見つかったことによる。
一説に彼らはネズミ捕りを目的に飼われていたのでは? と言われている。一緒に埋葬されるぐらいよく働いた猫だったのかも。
以下はリビアヤマネコの捕食シーンを捉えた動画。舞い上がったハトを捕らえる身体能力がすごすぎる!
猫の先祖は彼らのように卓越した狩猟技術を武器に暮らしていたのだ!
草原に出たミアキスは犬に進化
新天地の草原へと繰り出した好奇心旺盛なミアキスには、遠くの獲物を見通すための背丈、それらを追いかける脚力や持久力が必要となる。
また草原では群れで狩りをするほうが有利なため、チームワークに必要となる主従関係も芽生え始める。開けた草原では、大きな鳴き声でコミュニケーションを取る能力も求められるだろう。
そう、草原に出たミアキスに求められたのはまさに犬の能力。こうして彼らは犬へと進化していったのだ!
たしかにネコ科の猛獣は瞬発力はあってもすぐ疲れるイメージがあるし、走り回るのは犬の方が得意そう。飼い主に従順なのも、群れのなかで培われた主従関係の名残りなのだろう。
以下はイギリスやオーストラリアで人気のある犬版競馬、ドッグレースの動画だ。現代社会においては飼い犬が走り回る場面というのはあまり見かけるものじゃないが、これを見ればその脚力のたくましさを思い知らされる!
草原へ出たミアキスは以下のような経緯で、犬へと進化していったという。
- 約3,800万年前…ヘスペロキオン(まだ胴長短足で、犬というよりイタチ、マングースのような見た目)
- 約2400万年前…キノディスムス(体長1メートルぐらいで、コヨーテのような細長い身体をしていた)
- 約1,500万年前…トマークタス(犬やオオカミと見た目はほぼ変わらない。ここからオオカミを経て犬へと進化していく)
https://twitter.com/usakikou/status/908588421311905792
人との共存は猫より3,000年早い
2015年12月の科学誌『セル・リサーチ』における国際チームの発表によると、地球で最初にハイイロオオカミから犬への進化が確認されたのは約3万3,000年前、中国においてのことだったそう。
その後、約1万5,000年前には犬が人に飼われるようになり、そこから中東やアフリカ、ヨーロッパへと広がり、約1万年前には世界中で飼われるようになっていったのだという。
この研究はハイイロオオカミ12頭、オオカミと犬の中間にあたる原始的な犬27頭、一般的な飼い犬19頭という、世界中のイヌ科動物58頭の遺伝情報を調べたもので、信憑性も高い。
猫よりも犬のほうが、3,000年ばかり早く人と共存し始めたわけだ。犬の従順さはこの歴史の違いもあるのかも。
以下の動画ではオオカミの狩猟シーンが捉えられている。これがイヌ科動物の統率力! 見た目は犬とさほど変わらなくても、オオカミはまず人に懐きそうにない…。
このように、まったく同じ動物だったミアキスがそれぞれ環境の違いから、適した形に進化していった姿が、猫と犬なのだ。
これって草原に出たサルが人間に進化したのと同じ理屈だよね。そう考えると生き物の進化ってほんとにおもしろい!
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【追加雑学】ミアキスが先祖である動物は猫や犬だけではない
実はミアキスから進化した動物は、猫や犬だけではない。
草原に出ていったミアキスの中には、その場に順応できず、森へと戻った者もいたと考えられている。普通ならこういった者たちは猫になりそうなものだが、彼らはクマやイタチへ進化していったというのだ。
森のなかでもそれぞれ違うものをエサにできるように、異なる生態に進化していったってことか?
またこれらの中から海へ出ていった者もおり、その先で環境に順応していった彼らは以下のように進化していった。
ミアキスからの進化の流れ
- ミアキス→クマ→アザラシ・アシカへと進化
- ミアキス→イタチ→カワウソ・ラッコへと進化
クマからアザラシというのは意外な気もするが、ゾウアザラシのようにとてつもなくでかい種類もいることを考えると、なるほどと思わされる。
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このように多くの肉食哺乳類は、ミアキスがそれぞれ新天地を求めて進化していった末の姿なのだ。
「ミアキス」の雑学まとめ
今回は、猫や犬の先祖であるミアキスについての雑学を紹介した。
森に残ったミアキスは猫になり、草原へ出たミアキスは犬に。そのほか、同じ環境に暮らしていてもエサが被らないよう、彼らはさまざまな形態へと進化を遂げていった。
ミアキスは種が滅びないようにうまく帳尻を合わせ、現代まで命を繋いできたのだ。さらに祖先を辿れば、人間とだって繋がっている。詳しく辿ってみると、動物たちの進化ってほんとに計り知れない!
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