日本発祥のハンバーガーチェーン「モスバーガー」。日本ではマクドナルドに次ぐ、第2位の店舗数を誇るハンバーガー屋さんだ。
マックとはまた違った高級志向のメニューが特徴で、ライスバーガーやテリヤキバーガーなどを生み出したパイオニア的存在でもある。
モスのハンバーガーは、ほかのハンバーガーチェーンとは一線を画している。いつもはちょっと高く感じるけど、たまにご褒美的に食べたくなるあの感じ…まさに唯一無二だ!
その商品開発や経営方針の根底にあるのは、やはり創業者の想いだ。実はその想いを何より物語っているのが、"モスバーガー"という店名である。
いったいモスバーガーの"モス"には、どんな意味が込められているのか? 今回はその由来を辿ると同時に、モスの目指したハンバーガーショップ像の雑学を垣間見ていこう。
【生活雑学】モスバーガーの「モス」とは何か?
【雑学解説】モスバーガーの由来には創業者の熱い想いが込められている
「久々にモス食いてえ!」
というセリフは、もはやみんな言い慣れたものである。しかしこの"モス"という言葉にどんな意味が込められているのかを知る人は少ないはずだ。
答えはモスバーガーの公式サイトにて紹介されていた。
MはMOUNTAIN(山)、
OはOCEAN(海)、
SはSUN(太陽)。
「山のように気高く堂々と、
海のように深く広い心で、
太陽のように燃え尽きることのない情熱をもって」
という人間・自然への限りない愛情が、
そこには込められているのです。(出典:MOSの由来って知ってモス?|モスの想い|モスバーガー公式サイト)
なるほど…いかにも自然派のモスらしい。人材に当てはめてみても、一人一人が商品に自信をもち、誠意をもってお客に接するような、そんな人物像が浮かんでくるキャッチフレーズだ!
ただ、このMOSという言葉自体はモス・フード・サービスの前身企業「Merchandising Organizing System」の頭文字から取ったもので、山・海・太陽の意味は後付けだといわれている。
前身企業は革製品を扱う会社だったので、それとはまた違う意味が欲しかったのだろう。
スポンサーリンク
モスバーガー創業秘話
モスバーガーの店名の由来を知ると同時に、創業者・櫻田慧(さくらださとし)の人物像にも興味が湧いてくる。それこそモスの創業時の逸話を辿ると、この店名が付けられたことにも納得がいくぞ!
東京都板橋区にあるモスバーガーの1号店「成増店」は、1972年にオープンした。この1号店は6畳にも満たないほどの狭さで、店内はカウンター6席のみ。それこそ「ハンバーガーチェーン…?」と、疑問符のつくようなお店だったという。
しかしこの店舗の狭さもまた、櫻田の考えていたモスのイメージには合致するものだった。その他のハンバーガーチェーンが、安さや手軽さを武器に掲げるなか、モスが掲げたのは「地域に密着したお店であること」。
地域密着型の経営をするのに6席しかない狭い店舗はぴったりだったのだ。カウンター席のみのバーや、立ち飲み屋なんかでマスターとお客さんの会話が弾んでいるところを想像するとわかりやすい。
その後、モスは個人のオーナーと契約して店舗経営を委託するフランチャイズを中心に店舗を展開していく。この方針にしても、その地域で育った人が経営したほうが、地域に密着したお店が作りやすいからだという。
このようしてモスはお客さん一人一人を大切にすることをモットーに経営をスタートさせていったわけだ。そして、その想いが反映されたのはなにも接客面だけではない。
日本人の味覚に合ったハンバーガーを!
モスには、ほかのハンバーガーチェーンにはない「高級志向・和風テイスト・自然派」といったイメージがある。こういった商品のイメージにしても、お客さん一人一人を思いやったがゆえに出来上がったものだ。
櫻田がハンバーガーチェーンを開こうと思ったきっかけは、彼が独立する以前、日興証券に務めていた折、赴任先だったアメリカのハンバーガーショップ「Tommy's」のハンバーガーに感動したことだったという。
以下がTommy'sのチリバーガー。たっぷり塗られたチリソースが印象的だ!
https://twitter.com/AlanSemsar/status/1013158947761487872
モス1号店を開く前段階で櫻田は実際にTommy'sで働き、ハンバーガーの作り方を学んだのだという。さすがは気合いの入り方が違う!
しかし彼は、単にTommy'sのハンバーガーをお手本にしたものを日本に持ち込んだわけではなかった。
Tommy'sで働くなかで彼が学んだことは、ハンバーガーの作り方だけでなく、「アメリカのハンバーガーは日本人の味覚には合わないんじゃないか?」ということだったのだ。
アメリカ仕立てでも、そのころすでに流行っていたマックの例があったにも関わらずである。これはまさにお客さん一人一人の満足を考えるからこそ、浮かんでくる思考ではないか。
そこから以下のような方針で、ハンバーガーの開発が行われていった。
- アメリカでは牛肉100%のパティが使われていたが、日本人に合わせて豚との合い挽き肉を使用
- アメリカではチリソースが主流だったが、コクや旨みを好む日本人に合わせ「濃厚ミートソース」を開発
特に濃厚ミートソースに関しては、調味料の製造を行う「タミー食品工業」の創業者・中島民雄の協力を得て、約100回にも渡る試行錯誤の末に完成したものだという。
https://twitter.com/mos_burger/status/1052076693580435456
こだわりのミートソースはポテトに絡めても絶品!
なんでも櫻田は料亭の息子という生い立ちをもっているため、味にはかなりうるさかったのだとか。一人一人を満足させる味を追求するというのも、実家の商売柄から譲り受けたものだったのかも。
またモスといえば、なにより野菜が新鮮なこともポイントである。モスの野菜は単に契約農家から仕入れているというだけでなく、担当者が実際に農家へ向かい、肥料や農薬、どのように育てられたのかなど、約50項目に渡って細かくチェックする。
農家の人たちがモスの店舗での仕事を体験する試みも行われており、相互に信頼関係を築く努力もいとわない。このようにして、モスの高品質なハンバーガー作りは行われていくのだ!
https://twitter.com/mos_burger/status/1262608986907348992
【追加雑学①】2020年…完全植物由来の「グリーンバーガー」が登場!
お客さん一人一人を思いやることをモットーにした櫻田の意志を、現在のモスバーガーも確実に受け継いでいる。最近の話だと2015年の国連サミットにて採択されたSDGs(持続可能な開発目標)に乗っ取った新メニュー「グリーンバーガー」が、2020年5月から販売開始となったぞ!
SDGsというのは、2030年を目途により良い世界を作っていくための17の目標のこと。モスとしては、人々の健康という面から、この目標に貢献していく姿勢を示しているのだ。
で、健康志向を謳うグリーンバーガーはどういった商品なのかというと…
- 大豆・こんにゃく・キャベツなどを使用した完全植物由来のパティ
- 刻んだにんじんやごぼうで食感、ハーブで奥行きを演出したトマトソース
- ほうれん草ピューレーを練り込んだバンズ
動物性の食材や、仏教では臭いがきつくてよくないとされる五葷(ごくん)を使わないことを徹底し、それでも食べ応えを損なわないように工夫されたベジタブルバーガーだ! ちなみに五葷とは玉ねぎ・らっきょう・ニラ・ねぎ・にんにくのことである。
以下の動画でグリーンバーガーの開発秘話が語られている。
パティの開発だけでも半年以上を要したとは…。開発に携わったスタッフの情熱が伝わってくる。こんな感じで現在もモスはお客さんへの思いやりを第一に、絶賛邁進中だ!
【追加雑学②】モスバーガーはファーストフード店ではない?
ハンバーガーショップと聞くと、一般的なイメージはファーストフード店という捉え方になる。しかし、モスに限ってはファーストフード店の概念からちょっと外れている。
ファーストフードは、英語にすると「fast food」。手軽で速く食事を提供するという意味だ。
これに対してモスは、速く提供することに重きを置いているお店ではない。注文を受けてから調理を始める「アフターオーダー方式」を採っているのがその証拠だ。速さや安さよりも素材を厳選する店舗の考えは、ファーストフードとは完全に異なるのである。
創業者の櫻田も「ハンバーガーショップは競合ではない」と話しており、モスの店舗をファーストフードの枠組みでは見ていないことがわかる。
カフェ形態を採っているモスカフェという店舗になると、雰囲気はさらにファーストフード店っぽくなくなるぞ。以下の動画で「モスカフェ表参道店」の様子が紹介されている。
メニューにはハンバーガーだけでなく、焼肉ごはんやカレー、ロコモコなどのご飯ものもある。
https://twitter.com/mos_burger/status/1149196682967388161
このような例を見てもやっぱり、モスは明らかにファーストフード店とは違う方針で経営されているのだ。
ファーストフード店よりは高価で時間がかかるけど、ファミレスまではいかない。となると、モスはその中間にあたる"ファーストカジュアル"と捉えるのが一番合っている気がする。
まあ、おいしけりゃなんでもいいんだけど!
【追加雑学③】モスバーガーの価格はタバコの価格次第
モスバーガーには、一番売れているタバコの価格を元にメニューの価格を決めるという意外な一面がある。これは創業者の櫻田が講演にて話していたことだ。
高級志向のハンバーガーはちょっと異質な存在であるため、その他の飲食店と比較することは難しい。そこで櫻田は満足感の比較対象として、タバコ1箱を選んだわけだ。
たしかにタバコは増税の影響も受けやすく、景気を一番如実に表しているといって過言ではない。社会に合わせた価格設定をするには、実はかなりお手本にしやすい商品なのかも。
しかし、健康志向の強いモスバーガーがタバコの価格を参考にしているのはなんかおもしろい。まあ、値段以外はまったく関係ないのだが。
おすすめ記事
-
ニコチン怖い…。タバコを2本"食べる"と死ぬ。
続きを見る
雑学まとめ
今回はモスバーガーの「モス」の由来についての雑学を紹介した。
モスは兼ねてから、ほかのハンバーガーチェーンとは違う高級志向・地域密着型の店舗で経営を波に乗せてきた。しかし、近年は海外から上陸したプレミア感のあるハンバーガーチェーンがちょっとしたブームになっていることもあり、苦戦気味という事情もあるようだ。
私はこれまで通り、お客さん一人一人を大切に…という方針を貫いていれば、またすぐに人気が戻ると信じているぞ! モスファンのひとりとして、どうか頑張ってほしいと願う。
おすすめ記事
-
"星"じゃない!スターバックスの名前の由来とは?
続きを見る