盲腸の手術を受ける人は1,000人に1人と、意外にも少ない。こう聞くと大掛かりに思えるが、手術を受けた人も術後は何不自由なく過ごしている…。
ん? 切除しても別に困らないということはもしや、もともといらない臓器なんじゃないか? なんの役にも立たず、ただ病気になると痛いだけなら、さっさと退化してなくなってほしいものである。
などと思っていたが…盲腸の知られざる能力が、近年になってわかってきたというぞ?
【人体雑学】盲腸の存在意義とメリットとは?
【雑学解説】盲腸は腸内環境を整えてくれる!
長い間、何の役にも立たず、痛くなるだけの厄介者として扱われてきた盲腸だが、実は最近少しずつ脚光を浴びるようになっている。
具体的には2014年に大阪大学が発表した研究において、以下のような事実が発覚したのだ。
- 盲腸の手術をした人は、していない人の1.2倍大腸がんになりやすい(術後1年半~3年半の間の統計)
- 盲腸の先にある虫垂には免疫細胞があり、善玉菌がたくさん棲んでいる。よって腸内環境のバランスが整える役割を担う
つまり盲腸がない人より、ある人のほうが腸内環境が整いやすく、病気にもなりにくいということだ。
腸内環境に関してはアンチエイジングや認知機能に関わりがあるとして、昨今の流行といっても過言ではない。「腸は第二の脳」などと言われるぐらいで、ヨーグルトやヤクルトのような製品を利用して気を遣っている人も多いのではないか。
こういった風潮を踏まえると盲腸は、現代においてその存在意義を十分にアピールできることがわかる! ただ…盲腸を取りたくて取る人なんていないし、付け直すなんてこともできない。せいぜい「盲腸があってラッキー!」と思うぐらいか?
ちなみに飽くまでもおまけ的な効果なので、すでに手術してしまった人も落胆するほどのことではないぞ。要するに「無駄ではない」というだけだ。
【追加雑学①】「盲腸」は虫垂(ちゅうすい)という別の臓器の病気
盲腸という病気は聞いたことがあっても、具体的にどこに盲腸があるのかは知らない人も多いのではないか。盲腸は大腸と小腸の境目にある臓器で、丁度大腸の終着点に位置している。わかりやすく言えば、右の下腹辺りだ。
そして病名まで盲腸と呼ばれているのは、その部分を切除するがゆえの通称で、正式には「急性虫垂炎」という。
「急性盲腸炎じゃなくて?」と思った人は鋭い。実はこれは盲腸そのものの病気ではなく、盲腸の先にまるで虫のように垂れ下がっている、「虫垂」と呼ばれる臓器の病気だ。
虫垂は直径1cmもないほどの管状で、長さも5~8cmと非常に短い。それだけでは存在感が薄いため、いつしか盲腸と一緒くたに呼ばれるようになってしまったのである。
この虫垂に便などが溜まり、細菌の繁殖によって炎症を引き起こすのが、盲腸と呼ばれる病気だ。よって手術で切除されるのも、盲腸ではなく虫垂である。
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【追加雑学②】虫垂炎の症状と治療法
虫垂炎(盲腸)になると具体的には以下のような症状が出る。たった数cmの臓器とはいえ、馬鹿にならない症状だ…。
- 風邪の症状に似た微熱やだるさ
- みぞおちやヘソの辺りの痛み
- 食欲不振や嘔吐
- 便秘
- 押さえるとビクッとお腹全体が反応する
「お腹を押さえてビクッと反応する」というのはわかりやすいが、実はけっこうこの症状が出る例は珍しく、気付きにくいものである。吐き気を伴う腹痛を覚えた場合、早めに病院で診てもらうほうがいいだろう。
治療に関しては切除手術を受けるか、抗生剤で炎症を緩和する方法があるが、後者の場合は再発の可能性が高く、その際は手術を余儀なくされる。
近年は水着などを着ても、傷が小さくて目立たない「腹腔鏡下手術」を選ぶ人が多いようだ。術後の回復が早く、入院期間が短いのも魅力的である。しかし症状が進行しすぎている場合、この方法は選べないので注意が必要だ。
【追加雑学③】盲腸は草食動物たちのマストアイテム
人間や肉食動物の盲腸は小さく退化したため、切除しても問題がない。しかし草食動物の盲腸は非常に長く、未だに現役で重要な役割を担っているというぞ! コアラなど、どこにそんなものが入っているんだと言いたくなるが、2mもの盲腸をもっている。
草食動物は肉を食べず、植物のみで栄養を取り入れるため、消化分解をサポートする盲腸の善玉菌が必要不可欠なのだ。…ということは、今後ベジタリアンの人たちも盲腸が長く進化していったりして…?
なるほど、草食動物たちが重宝していることからも、無駄な臓器ではないことがわかる。
雑学まとめ
盲腸(正確には虫垂だが…)は小さくて存在感こそ薄いが、腸内環境を整えることに一役買う、有効な臓器である。草食動物の消化分解を助けていることを考えると、その存在意義も実感しやすい。
…ちょっと想像してしまったが、もしコアラが虫垂炎になってしまったら、とんでもない大手術になるのではないか…。くれぐれも健康に気をつけて生活してほしいものである。