死後も数百年、ときに数千年の時を超えて保存される「ミイラ」。世界各地ではミイラの存在は昔から知られているが、実は日本においてもミイラが存在していたことをご存知だろうか。
では、日本でもっとも古いミイラはどこにあり、どのような人物なのだろうか。この記事では、日本で一番古いミイラの雑学についてご紹介する。
【歴史雑学】日本で一番古いミイラは?
【雑学解説】ミイラ化した原因はいまだに不明
日本最古のミイラはどこに眠っているのか。その場所はズバリ、岩手県平泉町の「中尊寺金色堂」である。この金色堂の内部には、奥州藤原氏・3代にわたるミイラと、4代・泰衡の首級が眠っているのだ。
中尊寺金色堂は、1124年に奥州藤原氏・初代の藤原清衡によって建立された阿弥陀堂である。国内においては、平安時代の浄土教建築の代表例とされる由緒ある建築物だ。
中尊寺の雰囲気を感じてもらうために、公式動画を貼っておくぞ。筆者もぜひ一度は行ってみたい場所だ。
金色堂の内部には、須弥壇(しゅみだん)と呼ばれる本尊を安置する3つの場所が設けられており、各壇には奥州藤原氏・3代のミイラ化した遺体が安置されている。
3つの須弥壇は、中央・左・右にそれぞれ分かれており、どの位置にどの人物の遺体が眠っているかは、ある時期まで寺に伝わる伝承の通りに信じられていた。つまり、中央壇に清衡(きよひら)、本尊から見て左壇に基衡(もとひら)、その右壇に秀衡(ひでひら)である。
だが、1950年の調査以降、左壇に秀衡・右壇に基衡が安置されていることが定説になった。なお、遺体がミイラ化しているのは、人工的な処置によるものか、自然発生的なものかは、現在になっても分かっていないという。
ちなみに、1950年の調査において、秀衡の子である4代・泰衡の首(遺体はなし)を納めた桶の中から意外なものが発見されている。それは100粒にのぼるハスの種子である。
この種子を開花させようとする試みが長年にわたって続けられていたが、ついに発見から50年経った1995年に、研究者の手で発芽の成功をみた。
そして2000年、ハスは見事に開花した。このハスは現在、「中尊寺ハス」として栽培されているという。ぜひ寺院に行った際、ハスも一緒に見学していただきたい。
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【追加雑学①】世界最古のミイラは、南米のチンチョロ人のミイラ
日本最古のミイラが奥州藤原氏3代だったことをご紹介した。では、世界最古のミイラは、どのような人物で、どこに眠っているのだろうか。ズバリ、南米である。
世界最古のミイラは、チリ北部・アタカマ砂漠で狩猟生活を送っていたとされるチンチョロ人である。紀元前7000年頃に起こした彼らの文化は、紀元前5000年頃に最盛期を迎えたといわれる。
彼らのミイラは南米チリやペルーに分布し、最も古いもので紀元前5000年頃に作成されたと推定されている。その年代は、古代エジプト文明から発見されているミイラよりも2000年以上古いことになる。
だが、数千年にわたり安らかな眠りについてきたミイラは、近年の気候変動によるバクテリアの繁殖によって、急速に遺体の溶解が進んでいるという。
近年の気候変動の影響は、実はミイラにも及んでいたのである。何千年ものあいだ、安らかに眠っている彼らのためにも、この異常気象をどうにかしたいものだ。
【追加雑学②】ミイラから世界最古のタトゥーが発見されている
ミイラのトリビアをもうひとつご紹介しよう。2018年3月、大英博物館が5000年前の古代エジプトのミイラから、あるものを発見して世界を驚かせた。
それが、世界最古といわれる男女のタトゥーである。大英博物館が所蔵していた約5200年前のミイラを赤外線で調べたところ、右腕のあたりから、絶滅した雄牛と羊をかたどったタトゥーが発見されたのだ。
このタトゥーは図柄として彫られたものとして世界最古のものだという。またこの調査によって、アフリカにおけるタトゥーの風習は、1000年さかのぼることも証明されたという。
いずれの動物たちは、当時、男性らしさを表すシンボルとして認知されていたのだという。またこのミイラのほかにも、同時期の女性のミイラからもタトゥーを発見したことが発表されている。
この女性のミイラには、右肩から右上腕にかけて小さなS字状のタトゥーが彫られていたという。これもまた女性最古のタトゥーだとされている。いずれも従来の定説を覆す、大発見だった。
雑学まとめ
以上、日本で一番古いミイラの雑学と、世界最古のミイラおよびミイラから発見された最古のタトゥーの雑学についてご紹介してきた。
数千年の時をこえて、生前の面影を残すことも珍しくない「ミイラ」。紀元前5000年頃の人々の死体が、現在でも痕跡を残していることが、不思議に思えてならない。
彼らが生前に遭遇した出来事や脳裏に刻んだ記憶のなかには、どのような風景が広がっているのだろうか。興味がつきない。