今でこそ厳選され、人気競技が揃っているオリンピックだが、創成期にはさまざまな競技が生まれては消えていった歴史がある。何事もやってみないとわからない。そういった試行錯誤のうえに、現在のオリンピックの人気は成り立っているといっていい。
しかし…なかには「そんなのあり?」と思うような珍競技があるという。
【オリンピック雑学】五輪には廃止された謎の競技がいろいろある
【雑学解説】数回で廃止されたオリンピックの珍競技を一挙に紹介
オリンピックで廃止された競技のなかには、数回しか行われなかったものが無数にある。
なかでもひときわ目を引く珍競技を紹介していこう。
ひとりアーティスティックスイミング
まずひとりでアーティスティックスイミングを行う「シンクロナイズド・ソロ」は1984年のロサンゼルス大会で始まるも、1992年のバルセロナ大会を最後に、3回の実施で廃止されている。
複数でやるシンクロの迫力を知っていれば、1人でやるのってどうなの…と思わされるが、実際観てみるとフィギュアスケートを観ているような感覚というか、十分に見応えがあるぞ! 以下は2012年の日本選手権の動画だ。
どうして廃止されてしまったのかが謎の競技である。広いプールを独り占めするのがもったいないから…? ってそんなわけないか。
ちなみに「1人なら誰ともシンクロしてないじゃん」と思った人がいるかもしれないが、これは音楽に合わせて演技を行うという意味のシンクロである。
ハト射撃
ハト射撃は1900年のパリ大会にて行われた。平和の象徴であるハトが300羽も撃ち落されたというから、平和の祭典ちゃうんかい! とツッコみたくなる。
案の定、実際の動物を撃ち落とすのは動物愛護の観点からも問題があったからか、次の大会からは飛んでくる素焼きの皿を撃ち落とす「クレー射撃」という競技になった。
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綱引き
今でこそ運動会ぐらいでしかやらないイメージの綱引きだが、1900年初頭にはオリンピック隋一の人気を誇る花形種目だったというぞ!
しかし1920年のアントワープ大会を最後に、「オリンピック種目と認めるには国際的な統括組織が必要」という理由で廃止されることになった。
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それでもめげない綱引き愛好家たちは、1960年に国際綱引連盟を結成。2002年にはIOC(国際オリンピック委員会)に加盟と、時間をかけながらも着々と復活に王手をかけているのだ。
以下の動画は2016年の綱引き世界選手権の日本VSベルギー戦である。選手たちの隣で声掛けをしているのは監督。コート脇で指示を飛ばすのはほかのスポーツと変わらないのだ!
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馬幅跳び・馬高跳び
1900年の第2回パリ大会では馬幅跳び・馬高跳びという珍競技も行われた。要するに陸上競技の走り幅跳びと走り高跳びを、馬にまたがってやってしまおうというものである。ちなみにこの2種目が行われたのはこの大会だけ。
パリ大会、いろいろ迷走してないか? なんでもパリ万博の附属大会ということで、オリンピックがメインではなかったらしいが…。
ちなみに幅跳びの優勝者は6.1m、高跳びの優勝者は1.85mという記録だった。対して人間の世界記録はそれぞれ幅跳び8.95m、高跳び2.45mである。そりゃあそうでしょうよ…競技でジャンプするために鍛えられた馬なんていないんだから。
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潜水競泳
またまたパリ大会のみで行われた競技に「潜水競泳」がある。競泳といってもこれは早さではなく、潜っていた時間と進んだ距離を競う。1m泳げば2ポイント、潜っている時間1秒ごとに1ポイントという、数えるのがめっちゃ大変そうな競技だ。
…大変だから廃止になったのかな?
廃止とは関係ないかもしれないが、この大会の水泳競技の会場となったセーヌ川は当時、ゴミの投棄や生活排水の関係でめっちゃ汚染度が高かったという。泳いで大丈夫だったのか…?
また1904年のセントルイス大会では、潜水競泳によく似た「距離飛込」が行われた。こちらは飛び込んだ後に潜水して進んだ距離を競うもの…数えるのは楽になったが、この競技も一度行われただけで廃止されている。
綱登り
綱登りは1896年のアテネ大会から行われ、以降1932年のロサンゼルス大会まで続いた競技だ。
内容は名前のまんまで、選手たちが座った状態から腕の力だけを使い、ロープを登るというもの。想像するだけでかなり過酷な競技だとわかる。そのせいかアテネ大会では15mだったロープが、次の大会からは7.6mに変更されたのだとか。
ちなみに、15mを登り切ったのは優勝者を含め2人だけである。なんとそのときの優勝者ジョージ・アイザーは片足が義足だったことで、一層感動を呼んだのだとか。腕だけで人生を切り拓いてきた賜物というところか!
雑学まとめ
数回行われただけで消えていったオリンピックの珍競技たち。たしかに「なんだそれ…」と思うようなものもあるが、一見変に思えてもフタを開けてみれば競技として盛り上がりそうなものが大半ではないか?
ただオリンピックと銘打つからには、やはり普段からそれに向けてトレーニングを積んでいるアスリートの活躍が観たいものだ。思いつきで作られた競技が長続きしないのは、致し方ないことなのだろう。