「さて、ここに2つの花があります。ボタンはどっちでしょう?」と聞かれて、結構悩んでしまうのが、ボタンとシャクヤク。この2つは花の形がけっこう似ている。
どっちがどっちだかわかんなくても、きれいならそれでいいんじゃね? という声もありそうだが、せっかくなので、今回の雑学をとおして見分けポイントを知っておこうじゃないか。
見分けるポイントをつかんでおけば、どこかで見かけたときにその違いがはっきりわかる。違いがわかると花のことが好きになるかも。そして、花を愛する人は人に愛されるようになる…かも?
【自然雑学】ボタンとシャクヤクの違いは?
【雑学解説】ボタンとシャクヤクには、たくさんの見分け方がある
形状が似ているためどっちがどっちだかわからないという人も多いボタンとシャクヤクだが、よく見ると素人でも見分けられる。2つを並べて見てみればなんとかわかるよね~、というものではなく、ボタンやシャクヤク単体でもわかるポイントだ。
いくつかあるので、その見分け方を紹介しよう。
ボタンの葉はツヤがなく大きい、ツヤがあり細長いのはシャクヤクの葉
ボタンとシャクヤクは、花は似ているが葉の形状はかなり違う。
ボタンの葉は、表面にツヤがなく、大きく広がった形をしている。また、葉の先に3つの切込みが入っていることもある。それに対して、シャクヤクの葉は表面にツヤがあり、少しだけ丸みを帯びた細長い形をしている。
ボタンのつぼみは尖っていて、シャクヤクのつぼみは丸っこい
花が咲く前であれば、つぼみの形で見分けることもできる。ボタンのつぼみはバラのように先が尖っているが、シャクヤクのつぼみは丸い形をしている。
ボタンは意外にトゲトゲしくて、シャクヤクは丸いイメージと考えると覚えやすいかも。花を見なくてもこれを知っていれば、バッチリなはず。
晩春に咲くボタン、初夏に咲くシャクヤク
ボタンとシャクヤクは、開花時期も違う。ボタンは晩春の4月~5月ごろ。シャクヤクは初夏の5月~6月ごろが開花時期となっている。
どちらも華やかさのある花なので、少し開花時期がずれているとその分楽しめる期間も長くなってうれしい。だが、最近は気候変動などで開花時期が同じころになることもあるという。こんなところにも異常気象の影響が…。
同じボタン科ボタン属でもボタンは「木」、シャクヤクは「草」
ボタンとシャクヤクは、生物学的にどちらも「ボタン科ボタン属」だ。どちらの花も英語表記では「Peony」となっている。
だがしかーし! ボタンは落葉低木、シャクヤクは多年草。
ボタンの原木は3mほど、園芸用でも1~2mほどの高さになる。そして、枝分かれしていくので横に広がり、どっしりとした感じだ。草であるシャクヤクの高さは、50~60cmくらい。球根からまっすぐ茎が伸びるのでスラっとしている。
まぁ木と草ならば、その様子をみれば一目瞭然だろう。
パラパラ花びらが散るボタン、シャクヤクは花ごと落ちる
花の散り方でもボタンとシャクヤクを見分けることが可能。ボタンは花びらがパラパラと落ちるのに対し、シャクヤクは花ごとポトッと落ちる。地面に花びらが落ちていたらボタン、花ごと落ちていたらシャクヤクだ。
どちらも散るときは一気に花の形がなくなることから、「崩れる」とも表現される。
香りの少ないボタン、シャクヤクの香りはワインにもたとえられる
花の香りにも特徴がある。ボタンはあまり香りがないのに対し、シャクヤクはバラのような甘い香りをもつ。ただ最近は品種改良が進み、ボタンでも香りの強い品種もあるとか。
シャクヤクの香りは、甘い、そして爽やか。そのためフランスでは、ワインの爽やかな香りを「シャクヤクの香り」と表現することもあるんだとか。
甘ったるいだけの香りだとしつこく感じるし、爽やかさだけだと軽すぎる。シャクヤクはワインのたとえにもちょうどいいバランスの香りなんだろう。草だけど。
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【追加雑学①】漢方にも使われるボタン、その歴史は?
ボタンの原産国は、中国だ。公式な記録はないらしいが、一時期中国の国花にもなっていたという。
日本にボタンが入ってきたのは奈良時代、弘法大師が持ち帰ったといわれている。平安時代には観賞用として広まり、鎌倉時代は寺や庭園などに植えられるようになった。その後江戸時代になると本格的に栽培され、品種改良も行われるようになった。
ボタンの根の皮は牡丹皮(ぼたんぴ)といい、大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴとう)や六味地黄丸(ろくみじおうがん)といった漢方薬に配合される。ペオノールという薬効成分が、止血・消炎・鎮痛などに効き、関節炎・腰痛・頭痛・婦人科系の症状の緩和にも使われることがある。
ではここでボタンの動画を紹介しよう。動画では、池の水面にボタンの花が敷き詰められている。
赤と白のボタンが、手作業で池に敷き詰められている。木に咲いている満開のボタンもいいが、一面の池のボタンも素晴らしい!
これはちょっと自分の目で実際に見てみたいなぁ。
【追加雑学②】シャクヤクの栽培は武士の素養?漢方でもおなじみのシャクヤクの歴史
シャクヤクは、チベットやシベリアが原産国だ。
平安時代には、薬草としてすでに日本に伝わっていたらしい。室町時代には観賞用として広まり、江戸時代になると、お茶の席で飾る茶花として使うために栽培されるようになる。
また、当時の肥後熊本藩の細川重賢が武士の素養として栽培をすすめた。熊本で品種改良されたシャクヤクは「肥後シャクヤク」と呼ばれている。
武士の素養としてシャクヤクの栽培を推奨って、なんとも不思議な…。人を切りつけることもある武士が花を愛でる…。ギャップ萌えってやつ?
シャクヤクの根も、ボタンと同じく漢方薬として使われる。おなじみの葛根湯(かっこんとう)や、婦人病に効く当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)などに配合されている。風邪のときに服用したり、生理痛や冷え性などの緩和、血管の働きを高める効果などがある。
では、シャクヤクの開花の様子をどうぞ。たくさんのシャクヤクの「開花」のシーンだけを集めた動画だ。
つぼみが力を溜めて、一気にポンッと咲く開花の瞬間は植物の生命力を感じる。しかしこの動画、ちょっとシュールと思ってしまうのは私だけ…?
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【追加雑学③】ことわざ「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」のもう1つの意味は?
有名なことわざとして、「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」というものがある。今では美人を形容するものとして知られているが、実はもともと、生薬の使い方を表す言葉だったのをご存知か。
今の使い方としては、「シャクヤク=立ち姿の美しい女性・ボタン=座った姿の美しい女性・百合=歩く姿が美しい女性」という意味合いがある。
しかし、この言葉には生薬の使い方を表す意味もある。体や心の症状とそれに効く漢方が対になっているのだ。
- 「立てば芍薬」の「立てば」…気が立ってイライラしている人を指し、そういう人にはシャクヤクが効く。
- 「座れば牡丹」の「座れば」…いつも力なくぺったり座って腹部の血流が滞っているような人には、ボタンの根が効く。
- 「歩く姿は百合の花」の「歩く」…ユラユラ歩いているような精神的なものが関係する症状がある人には百合が効く。
美人を形容する意味だけではない「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」ということわざ。生薬の使い方を表していたと知っている人はあまり多くないはず。ボタンやシャクヤクを目にする機会があれば、ウンチクを垂れてみてはいかがだろうか。
雑学まとめ
ボタンとシャクヤクの違いについての雑学だったが、花は似ていてもまったく違う植物であることがよくわかった。葉の形・つぼみの形・花の散り方…。そしてボタンは「木」で、シャクヤクは「草」だったということも驚きだ。
私としては、ことわざの本来の意味にもびっくりした。へぇ~! 体の不調とそれに効く生薬をセットにしてことわざになっていたとは。
ボタンとシャクヤクの見分けポイントも結構わかりやすいものが多かったので、今度どこかで見かけたら、葉やつぼみ、全体の姿で確認してみよう。
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