海豚・河馬・海象・河豚。これらの漢字はそれぞれ動物を表している。海豚はイルカ・河馬はカバ・海象はセイウチ・河豚はフグと読むのだ。
海にいる豚のような生き物・イルカ。豚に似ているわけではないと思うが、ほ乳類というくくりでいけば近いか。
河にいる馬・カバ。こちらは水中で軽やかに動くカバの様子から、この字があてられたそう。
海にいる象・セイウチ。セイウチの大きさから、象にたとえられるのも納得である。
そして河にいる豚・フグ。…え? なんかいろいろ間違ってない? フグは海にいるし、魚である。イルカのときのように「ほ乳類だし」ではすまされない。
間違いだらけなのに、なぜフグは「河豚」と書くのか雑学として調べてみた。
【動物雑学】フグは海にいるのになぜ「河豚」と書くのか?
【雑学解説】中国でフグといえば、河にいるメフグ
日本で親しまれているトラフグやマフグは海にいる。しかし、中国でフグといえば、揚子江や黄河といった河にいるメフグを指すのである。
このメフグを釣り上げると「ブーブー」と豚のような音をたてることから、中国では「河豚」と書いてフグを表すようになったとのこと。
一方日本では、ふくらむものやふくらんだものに「フク」とつけて呼ぶ慣習があった。ふくらはぎ・ふくろ(袋)などがその例である。フグも、ふくらんで敵を威嚇するその姿から、当初は「フク」と呼ばれていた。それが、いつのまにか「フグ」となっていったのである。
ちなみに、フグの本場・山口では今も「フク」という呼び方が一般的なようだ。
「フグ」という日本の呼び方に、中国由来の「河豚」という漢字をあてたために、海にいる魚に「河豚」というよくわからないことになってしまったのである。
【追加雑学①】大阪ではフグを「てっぽう」と呼ぶ
山口ではフグを「フク」と呼ぶが、大阪では「てっぽう」と呼ぶ。
これは「どちらもたまにあたる(鉄砲は弾にあたる・フグは偶にあたる)」という洒落からきたもの。ちょっとした洒落として使うだけでなく、そのものの名前として定着してしまうところがさすが大阪だ。
ちなみにフグ鍋を意味する「てっちり」は「てっぽうのちり鍋」の略であり、フグの刺身を意味する「てっさ」は「てっぽうの刺身」の略である。
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【追加雑学②】フグもフグ毒で死ぬ
種類によってある部位は異なるが、ほとんどのフグは毒をもっている。テトロドトキシンと呼ばれるフグの毒は非常に強く、青酸カリの1,000倍以上の毒性があるともいわれている。
しかも、フグ毒には解毒剤も血清も存在しない。そのため、間違えて摂取すると多くの場合死に至る。
しかし、実は生まれたばかりのフグには毒がない。
毒を作るプランクトンなどを貝類やヒトデが食べ、それらをフグが食べる。そうすることでフグの体内に毒が蓄積されていき、フグは毒をもつのである。
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体内にテトロドトキシンをもっているため、当然フグはテトロドトキシンの耐性をもっている。
しかし、その耐性はそこまで強いものではない。そのため、非常に強いテトロドトキシンを与えると、フグでもフグ毒で死んでしまうのである。
【追加雑学③】豊臣秀吉はフグ食禁止令を出したことがある
豊臣秀吉が生きていた時代、人々はどれほどフグについての知識をもっていたのだろうか。
肝にのみ毒があるフグもいれば、皮にも毒があるフグもいる。おいしいからと手を出して、毒にあたって死んだ人は数知れないだろう。
豊臣秀吉がフグ食を禁じたのも、それが理由だったようだ。朝鮮出兵の時、フグを食べて死亡する兵士が続出したことで、秀吉は兵士たちにフグ食禁止令をだしたんだそう。
後の徳川家康の時代にも、フグ毒で死んだ武士には厳しい処分があった。主家に捧げるべき命を己の食い意地で落とした輩ということで、当主がフグ毒で死ぬとお家断絶となることもあったんだとか。
どう考えてもリスキーすぎるフグ食だが、そこまでしてでも食べたいくらい美味しいものとして知られていたに違いない。
雑学まとめ
「河豚」についての雑学を紹介してきた。「海にいる魚なのに河豚とはこれいかに」と思ったが、中国で使われていた文字をそのまま使っていただけだった。漢字から言葉の意味を考えることもできるが、たまに河豚のようなひっかけ問題があるので要注意である。
フグには毒があることを、現在ではほとんどの人が知っている。それは多くの犠牲のうえに成り立った事実なのだろう。
身をもってフグに毒があることを検証してくれた先人たちには頭が上がらない。フグを食べるときは相応の感謝をもっていただきたいものである。
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