先日、居酒屋でのことである。隣の席に座っていたお客さん達の会話が耳に入ってきた。
「刺し身とおつくりって何が違うの?」
たしかに…。筆者は正直なところ、美味しければ何でもいいのスタンスだったので「刺し身とおつくりの違い」を明確に気にしたことがなかったのである。隣のお客さんたちも具体的な答えは知らなかったようで、その答えはわからずに終わってしまった。
そもそも、お刺し身もおつくりの違いを思い浮かべても、何ら変わりはない気がする。どちらも魚の切り身であることは確かだ。
だが大人になってくると、ちょっと良いお店でそういった雑学を披露して良い格好をしたいと思う人もいるだろう。
かくいう筆者も格好をつけたいタイプなので、さっそく調べてみることにした。
【食べ物雑学】「刺し身」と「おつくり」の違いとは?
【雑学解説】刺し身とおつくりは厳密には一緒だが例外もある
結論を先に述べると「刺し身とおつくり」は厳密にはどちらも一緒である。
語弊のないように補足しておくと、どちらも新鮮な魚介類などの食材を生のままで切り身にした状態のものだそうだ。
厳密には一緒なだけであり、違いがあるといえばあるので、順を追って説明したいと思う。
そもそも「刺し身・おつくり」の語源だが、これは地域差によるものだそうだ。具体的には関東では刺し身、関西ではおつくりと呼ぶのが一般的とのことである。
つまり、厳密な意味でいえば「刺し身」も「おつくり」も一緒なのである。
が! おつくりに関して補足すると、諸説では切り身に対して昆布締めなどの手間をプラスしたという意味も含まれているとのこと。さらに舟盛りなどの凝った盛り付けを施した魚介の切り身という限定的な用途で扱われている場合もある。
そのため「刺し身」には魚介だけではなく、新鮮な食材の切り身全般を含む広義的な使い方がなされているといえるだろう。さらに現代においては牛肉やこんにゃくなどを「刺し身」として提供している飲食店も少なくない。
これらのことから、どちらも一緒の意味ではあるが、使い分けも可能という結論に至ったのである。覚えておいても損はないと思うので、料亭や居酒屋に行く機会があれば、ぜひ話のネタにしてみてほしい。
(ちなみに筆者は格好つけてこの雑学を披露したところ、酒の席で細かい話をするなと怒られてしまった…)
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【追加雑学①】魚の切り身の呼び方と語源
ちなみに「刺し身」や「おつくり」と同様に切り身のことを「あらい」や「たたき」と呼んでいるのを聞いたことはないだろうか。
再び細かい話をするなと怒られそうだが、せっかくなのでそれぞれの語源について掘り下げてみようと思う。
刺し身
これは元々、江戸時代の関東では「切」という字は縁起が悪いとされており、切り身のことを刺し身と言い換えたことが発端といわれている。
おつくり(お造り)
こちらは関西が発祥の言葉だそうだ。関西圏でもとくに京都では「切」に加えて「刺」も縁起が悪いとされており、刺し身から「つくり(造り)身」へと変化したそうである。
それがさらに変遷を経て、現代では「おつくり」と呼ぶようになったそうだ。
刺し身の語源を知ったときに筆者は「刺」も充分に物騒な響きだが…と思ったのだが、間違いではなかったらしい。
ちなみに、現在の関西でも「刺身」という人はいるので、言葉に気をつける必要はない。
あらい
これは主にタイやスズキといった白身魚に使われる言葉だそうだ。珍しいものでいうとコイのあらいというのもあるらしい。
調理法もただ包丁で切り身にするのではなく、そこからさらに文字通り冷水や氷で「あらう(洗う)」ことにより「あらい」と呼ばれるようになったそうだ。
たたき
こちらは主にサバやアジなどの青魚に対しての言葉だそうだ。有名どころでいえばカツオのたたきが該当する。
身は赤いのにカツオって青魚なの? と思ったあなたは安心して欲しい。筆者も知らなかったのだが、カツオはサバ科に属するので立派な青魚だそうだ。
たたきも切り身をさらに包丁で「たたく(叩く)」ことが語源。
ただし、そこから調味料をまぶしたり火であぶったりなど、調理方法の派生がいくつかあるので、同じ名前でも少し違う料理になることには留意してほしい。
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【追加雑学②】おつくりや刺身に大葉や菊を添える理由
さて、もう少しおつくりや刺身に関するトリビアを紹介しよう。おつくりや刺身には、よく大葉や菊などが添えられているのを目にすることがある。あなたはその意味を知っているだろうか?
私は子供のころは「食べないのにどうして飾りをつけるんだろう…?」と不思議でならなかった。しかし、大葉や菊などは飾りではなく、消毒や風味を良くするためにおつくりや刺身に添えられているのだ。
おつくりや刺身は生ものだ。これらが誕生した当時は、冷蔵庫もないので食中毒の危険性もあった。食べた人が食中毒にならないために、殺菌効果のある大葉や菊などを添えるようになったのだ。
このほかにも、大根のつまは魚が出す水分を吸収する働きもある。大葉や菊の場合は、香りもあるので、魚を風味良く味わう薬味としての役割も担っている。
おつくりや刺身を安全に食べられるようにするだけでなく、魚を楽しく味わえる脇役にもなっているというわけだ。
添えられているものは基本的に食べられるものなので、魚と一緒に食べたらどんな食感や風味があるのか、1度味わってみよう。
菊ってどうやって食べるの?
刺身やおつくりについている菊だが、菊を食べる際は菊の花をそのまま食べるのではなく、菊の花びらを醤油に散らすのが基本。動画を見つけたので、確認してみよう!
菊と魚を一緒に食べると、ほのかな菊の風味と魚の食感に加わるアクセントを楽しむことができる。今度お造りや刺身を食べる機会があれば、ぜひ試してみたいところだ。
ちなみに、普通に菊の花を食べる地域もある。日本は狭くて広い。
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「刺し身とおつくり」の雑学まとめ
今回は「刺し身とおつくりは違うもの?」という雑学をご紹介してきた。
厳密にはその意味は一緒だそうだが、現代では使い分けもされているとのこと。だが、言葉は時代と共に意味も用途も変わっていくので、曖昧な感じで使っても問題はなさそうだ。
何にせよ魚の切り身は美味い。これだけは間違いないというのが筆者の一番の感想である。
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