毎年テーマを変えながらも、5人の仲間が1つの悪の組織と戦う「スーパー戦隊シリーズ」。そして『この紋所が目に入らぬか!』という格さんの名台詞でおなじみの「水戸黄門」。
これらのオープニングの原作に、「八手三郎」「葉村彰子」と書かれているのを目にしたことはないだろうか。
私も以前まで、このお二方は実在すると思っていた。しかし調べてみると、この二人は実在していない原作者であり、架空の人物であることが判明した。
ではなぜ、この二人が原作者の名前で出るのだろうか。今回の雑学では、「八手三郎」「葉村彰子」の謎に迫っていくぞ!
【面白い雑学】八手三郎・葉村彰子は実在しない脚本家
【雑学解説】八手三郎・葉村彰子は共同ペンネーム
八手三郎・葉村彰子は実在しない…。
ではそれらの名前はどうやって誕生したのか。それぞれの名前の由来について見ていこう。
八手三郎とは?
八手三郎は「やつでさぶろう」もしくは「はってさぶろう」とも読む。これは、当時東映テレビ部のプロデューサーであった、故・平山亨氏が考え出したものである。
東映とは違う他社の作品を手がける際、『東映の社員が別の作品の製作に携わるのはおかしい。』ということから、平山氏が考えてつけたものだ。名前をよく見てみると、「やってみろ」という風に見えるのがお分かりだろうか。
1976年以降、東映が製作する特撮ドラマにて、東映テレビ部が製作したペンネームとして使われるようになった。なお平山氏は1990年に東映を定年退職するが、現在でもこの八手三郎のペンネームが使用されている。
葉村彰子とは?
葉村彰子(はむらしょうこ)は、TBS系列で放送されていた「水戸黄門」「大岡越前」「江戸を斬る」などの時代劇シリーズで原作、共同ペンネームとして使用されていたものである。
かつて松下電器産業(のちのパナソニック)の宣伝部に所属していた、故・逸見稔(へんみみのる)氏がナショナル劇場製作の際に、ドラマを作る脚本家やプロデューサーの待遇改善のために結成した創作集団で、そのペンネームが葉村彰子であった。
名前の由来は、布施明主演のドラマ『S・Hは恋のイニシァル』のイニシャルであるS・Hを拝借している。このドラマが終了後、ナショナル劇場は時代劇主体のシリーズが続くようになり、葉村彰子という名も多くのテレビ視聴者に知れ渡ることとなった。
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【追加雑学①】実在しない脚本家の名前を作った理由とは?
八手三郎・葉村彰子が存在しない脚本家であることがお分かりいただけただろうか。いったいなぜ、存在しない脚本家の名前を作る理由があるのだろうか。
それは、著作権の関係がある。著作権管理の際、一つの過程を複数の人数で進めると、特定の業績がわからなくなってしまう。それらを解決するために、ペンネームとして八手三郎・葉村彰子を使用した。
脚本は大抵の場合一人で作るが、共同作業で作成する場合、連名もしくは共同ペンネームを使用することがある。漫画の場合は『オバケのQ太郎』を執筆した藤子不二雄。『キン肉マン』を執筆したゆでたまご。『カードキャプターさくら』を執筆したCLAMPなどが挙げられる。
また八手三郎の箇所でも述べたが、平山氏のように製作会社が違う作品を提供する場合、ペンネームを使用することによって、そのやっかみを避ける目的がある。
作家がその作品の著作権を放棄すれば、その作品に関わっていないとの証明にもなるし、また作家にとってもシークレットとして活動できる利点がある。
他にも個人のプライバシーが荒らされるのを防いだり、架空ペンネームを使うことによって、作品に先入観をもたせないようにしたりできる。
また、契約上の都合で本来の筆名を使用できない場合がある。
その対策をしたのが、架空ペンネームを使用するという案だった。架空ペンネームというのは、一言でいえば『大人の事情』によるものであり、八手三郎・葉村彰子は大人の事情を解消するためにつけられたものであったのだ。
現在、八手三郎と葉村彰子は、テレビ製作会社によってオリジナル原作の名前として使われることがほとんどであり、脚本家は別途名前を出すのがほとんどのようだ。
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【追加雑学②】他にもまだある架空の脚本家
八手三郎・葉村彰子以外にも、実在しない脚本家の名前は多々ある。
ここでは現在日本で共同ペンネームとして使用されている架空の脚本家を紹介しよう。
プリキュアシリーズの『東堂いづみ』
女の子に大人気のプリキュアシリーズ。
プリキュアシリーズのオープングに『原作・東堂いづみ』という名前を目にしたことはないだろうか。実はこれも実在しない架空の脚本家であり、実際はプリキュアシリーズを製作している東映アニメーションオリジナルのペンネームである。
名前の由来は、東映アニメーションの『東』、旧社名である東映動画の動を『堂』にして、いづみというのはかつて本社があった『大泉スタジオ』の「泉」を拝借して、名前にしたものである。
プリキュアシリーズ以外にも、東映アニメーションオリジナル作品には、この東堂いづみというペンネームを原作として使用することが多いようだ。
サンライズロボットシリーズの『矢立肇』
ガンダムシリーズをはじめとした特撮ロボットアニメ作品を中心に製作している『サンライズ』。そのサンライズオリジナル作品の原作者である『矢立肇(やたてはじめ)』も架空のペンネームだ。
名前の由来は諸説あるが、松尾芭蕉の『奥の細道』に使用されていた「矢立の初め」をもじってペンネームにしたのが有力である。
他にも、サンライズに所属していた企画部長の山浦栄二氏のペンネームであるともいわれているが、サンライズのロボット作品は、オリジナルで製作された作品が多いので、どちらが正しいかは不明である。
デジタルモンスターシリーズの『本郷あきよし』
バンダイが展開する『デジタルモンスター』シリーズの原作者である『本郷あきよし』。
これも実在しない架空のペンネームである。名前の由来は、バンダイと、バンダイの子会社でデジモンの製作元であるウィズに所属していた人物の名前を拝借したものだ。
デジモンは、渡辺けんじ氏をはじめとした3人が、デジモンの専属デザイナーとして活躍している。この3人と、関わっているスタッフ全員が『本郷あきよし』ということになるのだ。
八手三郎と葉村彰子の雑学まとめ
今回の雑学で八手三郎と葉村彰子、それ以外にも存在しないペンネームがあるということがお分りいただけただろうか。共同で製作作業をしなくてはいけないと考えると、こうした架空のペンネームのありがたさを感じられる。
また、自分が製作したのではなく、スタッフ全員が一丸となって製作したというのも架空ペンネームの強みになるのかもしれない。
今後また様々なペンネームが登場すると思われるが、どのペンネームが架空か、実在するかを調べてみるのも面白いだろう。
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