水族館ではイルカやマンタといった大物に人気が集まっているが、ひそかに人気になっているウミウシ。企画展が開催されると、行列が出るほど人気になっている。
英語ではSea Slug…。直訳すると海のナメクジ…。英語でのネーミングセンスはないが、海の宝石とも呼ばれる自然のものとは思えないほど、カラフルな色彩に魅了される人が続出だ。
今回は、現在3,000種類が発見されているウミウシの雑学について紹介していく。
【面白い雑学】ウミウシには面白い名前のものが多い
【雑学解説】ウミウシの名前が面白くなる理由とは?
ここで知っておくべきことは、ウミウシの名前には学名と和名の2種類あることだ。
・学名…世界で通用する名前で、1種類に対して1つだけと定められる。一般的にラテン語で表記される。
・和名…日本でのみ通用する名前。1つの種類に対して複数あることもある。さすがに1種類にいくつも名前があると混乱するので、標準和名として1つの名前を学会で提唱されているものもある。ウミウシの場合は、日本貝類学会で標準和名が提唱または承認されることが多い。
ウミウシは潮だまりといった浅いところでも見ることができるため、よく見られるウミウシは古くから和名がついていて普通の名前が多い(アオウミウシやシロウミウシなど)。
スキューバダイビングが普及した1980年代頃から、ウミウシの新種や和名がなかった種類が続々見つかるようになった。若くて、感受性豊かなダイバーの通称が独り歩きし、それがそのまま標準和名となったケースが多いという。
ダイビングインストラクターの中には、日本貝類学会に所属している人も多く、そこで標準和名として提唱され、学会からのお墨付きももらっているのだ。
ダイバーの間で大人気の、通称「ピカチュー」と呼ばれるウミウシの学名は「Thecacera pacifica(セカセラ・パシフィカ)」。発音すら難しいし、誰も覚えようとしない。標準和名はウデフリツノザヤウミウシだが、これも長々しくて覚えづらい。
ピカチューは言いえて妙で誰もが納得する名前だ。しかし、学会が認める標準和名は、不変的な名称にすることとしているため、100年後までピカチューが人気があるかは誰もがわからないため採用されていない。
【追加雑学①】昭和天皇が名付けたウミウシがいる
昭和天皇は海洋生物学者として有名だが、専門分野のクラゲやサンゴなどのヒドロ虫とともに、貝類についても詳しかったようだ。葉山の御用邸で採取したウミウシの中に和名がつけられていないウミウシが見つかり、サメジマオトメウミウシ・サギリオトメウミウシと命名された。
さらに昭和天皇は、葉山の御用邸の料理人にウミウシを料理させて食べてみたそうだ。その感想は「硬くて、味がしなくてあまり美味しくない…」ということだ。
【追加雑学②】貝があるウミウシがいた!
カタツムリの貝が進化の過程で貝を失ったものがナメクジで、乾燥に弱くなる代わりに動きやすいメリットを得ることができた。
ウミウシも進化の過程で貝を失ったのだが、中途半端な貝が残っているウミウシもいたのだ! そのウミウシはミスガイやコンシボリといった、残った貝を含めて美しい姿で、ファンも多い種類だった。
ここで「だった」とか「いた!」というのがこのトリビアの味噌で、現在の分類では「貝が残ったウミウシ」から「もろくなった貝」に変わってしまった。
今までも、クリオネもウミウシに入れるか入れないかといった議論があったり、アメフラシはどうだなんて話もあったけど、あまり難しいことは考えないで、みんなウミウシっぽいでいいんではないだろうか。
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【追加雑学③】60cmの大きさのウミウシがいる
スキューバダイビングをしていて見つけるウミウシは大きくても10cmほどで、浅いところにいる大きなアメフラシといっても20cmがいいところだ。しかし、世界には体長60cmにもなるウミウシが存在している!
熱帯地域に生息するミカドウミウシは、その巨大さと真っ赤な色彩から、可愛いというよりグロテスクというべきであろうか。子供の頃は可愛いのにモッタイナイ。
ウミウシは日本人以外のダイバーにはあまり見向きもされない存在だが、こいつだけはスパニッシュ・ダンサーなんていうかっこいい通称がついているように、欧米人ダイバーからも一目置かれている。
その理由は動画を見てもらえばわかるが、真っ赤で体をくねらせながら泳ぐ姿がフラメンコに似ているからなのであろう。
【追加雑学④】ウミウシにはオスもメスもない
ピカチューウミウシは男の子、ちっちゃいアオウミウシはちゃんづけで呼んだりと、人は勝手にウミウシに性別を付けたがるが、ウミウシには性別はない。いや、正確にいうとオスでもあり、メスでもあるのだ!
ウミウシの交尾を見たことがある人は少ないと思うが、同じ種類が2匹集まればお互いの体の右側をくっつけて、相手に精子を渡し、相手から精子をもらっている。3匹や5匹集まれば、数珠つなぎのように交尾をすることもあるのだ。
ウミウシの雑学まとめ
今回の雑学では、ウミウシにはどうしておもしろい名前が多いのかについて解説した。毎年のように新和名がついたウミウシが登場してくるが、自分の名前がついたウミウシを見つけられるかもしれない。
日本や日本人が多く行くリゾートだと、なかなか和名がついていないウミウシを見つけるのは至難の業だ。しかし、日本人があまりいかないマイナーな海に潜りにいけば、和名のないウミウシがザクザク見つかるかもしれない。ぜひ狙ってみてほしい!
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