ホッキョクグマは白く見えるため、一般的にシロクマと呼ばれるが、実は肌は黒いという。さらに、シロクマの毛はクマの中でも非常に特殊な構造をしていることがわかっている。
そのせいで、シロクマと呼ばれることになっているのだが、実は毛の色が変わるという不思議な現象も起きるという。毛が別の色に生え変わるわけではないが、全く別の色になってしまうのだ。
今回の雑学記事では、シロクマの肌が黒い理由や、シロクマの毛の秘密についてご紹介しよう。
【動物雑学】シロクマの地肌は黒い
【雑学解説】シロクマは肌が黒く、毛も白いわけではない。
シロクマは見た目が白いためにつけられた、ホッキョクグマの俗称である。そんなシロクマだが地肌は黒いことが分かっている。もちろん、肌が黒くても毛に覆われて見えないわけだが、シロクマの毛は白くない。
シロクマの地肌が黒いのは熱を集めるため
地肌が黒く毛は透明なシロクマだが、なぜ黒い肌をしているのだろうか?
これはシロクマが北アメリカやユーラシア大陸北部、北極圏など非常に寒い地域に住んでいるからである。黒い地肌は熱を吸収しやすく体が温まりやすいのだ。
日光を虫眼鏡で集めて紙に火をつける場合、黒い紙に火が付きやすいのと同じ理屈である。シロクマの毛は透明で中が空洞になっているのだが、それは体を温めやすくするため。透明の毛は日光を透過させ、効率よくシロクマの体を温める。
さらに内部が空洞になっているシロクマの毛は、通常の体毛よりも熱を逃しにくいのだ。シロクマには分厚い脂肪もあるため、非常に保温性の高い体をしているのである。人間の衣類で保温性が高いといわれるものは、遠赤外線素材を使用した体を温めるものがある。
しかし、動物の毛の場合は体を温めるわけではなく、体外に熱を出さないことが重要だ。そのため保温性が高いと放射する熱量に比例して、赤外線の量も少なくなる。シロクマの体からはあまり赤外線が出ないのだ。
赤外線カメラは隠れた動物の姿を捉えるのに便利だが、距離が離れるほど捉えることが難しくなる。体から出る赤外線の量の少なさと雪の反射光のせいで、赤外線カメラで行う空中撮影でシロクマの姿を映すことは不可能に近いという。
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シロクマの毛は透明
シロクマの毛は、実は透明である。毛が透明なら、地肌が透けて黒いクマに見えそうだ。しかし、シロクマの毛は、中が空洞になった特殊な構造をしている。光が散乱して、白く光り輝くため毛が白いように見えるのだ。
上の動画には毛が薄くなって、黒く見えるシロクマが映っている。シロクマの毛は中に汚れがたまりやすい。動物園のシロクマは少し黄色く見えるだろう。これは空洞部分に汚れが詰まって黄色く見えるのだ。
野生のシロクマも、黄色く見えることがある。これは汚れが毛の中に詰まっただけではなく、脂肪が酸化した影響もあるという。
さらにシロクマの毛の中には、藻が発生することもある。当然、毛も藻の色に染まって見えるため、この状態のホッキョクグマにはミドリグマという俗称がつけられている。ミドリグマは気温がある程度高くないと見られないため、野生で見ることはまずありえない。
上の動画には少しミドリグマ化したホッキョクグマが映っている。彼らの毛が空洞になっているのは、寒冷地で有利だからである。
【追加雑学】シロクマの祖先はヒグマで、ヒグマの先祖はシロクマである
シロクマは、遺伝子的にヒグマにかなり近いことが分かっているが、両者は違う種類のクマである。シロクマはヒグマから進化したと考えられてきたが、両者の関係はもっと複雑だ。
ヒグマはシロクマの先祖ということになる。しかし、最近になって一部のヒグマは、シロクマの遺伝子をもっていることが発見された。これは、大昔にシロクマとヒグマが交配した証拠である。
つまり、シロクマは一部のヒグマの先祖でもあるのだ。
また、シロクマとヒグマは、子供ができるほどに近い種類だということも分かっている。北極の氷が溶けた影響で、シロクマの一部は南下しているらしい。南下したシロクマはヒグマの生息圏に現れており、自然にヒグマと交配しているという。
その影響で、シロクマとヒグマが混ざったような毛色のクマが確認されるようになっている。余談だがヒマラヤにはシロクマに近い種類のヒグマが生息しており、これが雪男の正体ではないかともいわれている。
雑学まとめ
今回の雑学ではシロクマの地肌が黒い理由や、毛が透明なことについてご紹介した。
実は日本でホッキョクグマという名前がつけられた理由は、色素をもたないアルビノのツキノワグマがシロクマと呼ばれていたからだという。現在は、ホッキョクグマがシロクマと呼ばれることが一般的になった。
シロクマの毛は寒さに耐えるために、特殊な進化を遂げたと考えられている。しかし、そのせいでホッキョクグマがシロクマと呼ばれるだけでなく、ミドリグマと呼ばれることになったのは面白い話である。
毛の本来の色が変わるわけではないのに、シロやミドリ、クロと毛の色が変わって見えるのはホッキョクグマだけなのだ。
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