オリンピックや世界大会の水泳競技は、「クロール」や「平泳ぎ」などの泳法で実施されている。これらの泳法は近代になって海外で考案されたものだ。だが、日本には古くから伝わる「古式泳法」があることをご存知だろうか。
それがおもに江戸時代にルーツをもつ「日本泳法」である。この記事では武術上の必要性から確立された「日本泳法」についての雑学をご紹介する。
【スポーツ雑学】江戸時代から伝わる日本泳法とは?
【雑学解説】日本泳法にはどんな種類がある?
私たちに馴染みの泳法は、「クロール」「平泳ぎ」「バタフライ」「背泳ぎ」の4つである。いずれの泳法も、18世紀以降に競技として考案された「近代泳法」と呼ばれるものである。
では、日本には独自の泳法が存在しないかというとそうではない。日本には江戸時代から伝わる「日本泳法」が存在しているのだ。「日本泳法」とは、日本古来の水泳術のことで、全13の流派に分かれている。
なかでも有名なのが、
- 水戸藩(現・茨城県)の「水府流」(すいふりゅう)
- 津藩(現・三重県)の「観海流」(かんかいりゅう)
- 細川藩(現・熊本県)の「小堀流」
- 大洲藩(現・愛媛県)の「神伝流」(しんでんりゅう)
などである。
13の流派の多くが江戸時代の初期にルーツをもっている。どの流派にも共通するのが、古式泳法の基本とされる「横泳ぎ」や「立ち泳ぎ」である。下の動画は、水府流の泳法を紹介したものだが、その中に2つの基本泳法が紹介されている。ご覧いただこう。
こうした「泳法」が開発された背景には、江戸時代に、武士が武術の一環として水泳をたしなんでいた背景がある。
そのため海や川で泳ぐ目的のほかに、水中で弓をつがえたり、剣や槍を使用したりするなど、速さに重きが置かれる「近代泳法」とはその目的が全く異なるのだ。
こうした各藩の泳法は、専門的指導者によって確立されていったという。現在は「近代泳法」が広く知られているが、水泳の歴史をひも解くと、日本には江戸時代から「日本泳法」が存在していたのである。
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【追加雑学】「日本泳法」の全国大会が開催されている
武術の一環として、江戸時代の武士のたしなみとされた「日本泳法」。この「日本泳法」の大会が毎年開催されていることをご存知だろうか。それが昭和31年より毎年8月に開催される「日本泳法大会」である。
この大会は、戦国・江戸期に発祥した日本泳法の各流派の正しい保存と普及を目的に、日本水泳連盟が主催している。実施される競技は、「泳法競技」「横泳ぎ競泳」「支重競技」 団体種目の「団体泳法競技」などがある。
各競技を簡単に説明していこう。第1回大会からメイン競技とされるのが「泳法競技」である。この競技は、規定の3つの泳法スタイルから、各流派に則った規定の演技を予選・決勝とそれぞれ行い、合計得点を争うものだ。
また「横泳ぎ競泳」は、水面との角度を90度から45度の姿勢を保つ「横体」(おうたい)と呼ばれる泳法で、100メートルのタイムを競うもの。さらに立ち泳ぎで重量物を水上に掲げられる時間を争うのが「支重競技」である。
上の動画は、2011年に開催された大会の模様である。大会中には、日本泳法の資格審査や公開演技なども実施されるという。競技種目によっては、「ジュニアクラス」「シニアクラス」などの年齢別に分かれており、男女別の競技も実施される。
このように、スピードが重点に置かれる「近代泳法」とは異なり、日本に古くから伝わる「日本泳法」は、武術の一環として武士のたしなみとされていた。ひと口に「泳法」といっても、目的が違うとその泳法にも違いがあることが見てとれる。
雑学まとめ
以上、江戸時代から伝わる「日本泳法」についての雑学と、毎年8月に開催される「日本水泳大会」のトリビアについてご紹介してきた。
動画でもご覧いただいたように、「日本泳法」には、「アーティスティック・スイミング」や「水球」などの競技でも見られる「立ち泳ぎ」が組み込まれている。
数百年前に考案された泳法の一部が、現代のスポーツ競技で利用されている事実を考え合わせると、「日本泳法」は私たちが想像する以上に、凄い泳法ではないだろうか。
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