これが好きといえば、なんだか通な酒飲み。そんな気にさせられる珍味「酒盗(しゅとう)」。発酵していて風味が強いので、大人にならないとその味わいが楽しめないことも。
冷蔵庫に常備してある家庭は少ないかもしれないが、実は酒盗、酒だけでなく料理にも使える万能選手なのだ。
そんな魅力あふれる酒盗だが、食べ物としてはなんともおかしな響きの名前である。「酒盗」は一体どうして酒盗というのだろうか? 今回の雑学ではこの謎に迫っていくぞ!
【食べ物雑学】カツオの塩辛「酒盗」の名前の由来は?
【雑学解説】「酒盗」の名前の由来は殿様のユーモア
カツオの塩辛・酒盗は高知県(土佐)で300年近く愛されてきた郷土名物だ。名付け親は、土佐藩第12代藩主・山内豊資(やまのうちとよすけ)だといわれている。
酒盗を肴にしていた山内が、あまりの美味しさに「この珍味、酒を盗みおったわい!」と称賛したのが由来とされている。
「酒が進んだのは俺のせいではない、この珍味が美味しいせいだぞ」というなんとも粋なユーモアである。
酒が進んでしまって、まるで盗まれたようだ、という意味もあれば、酒がなくなれば盗んででも飲みたくなる、という意味もある。それだけ美味しい珍味ということだ。
【追加雑学①】塩辛と酒盗の違いは?
「塩辛」といえば、真っ先に思い浮かぶのはイカの塩辛だろう。酒盗と塩辛は似ているが、この違いは分かるだろうか?
酒盗は基本的に「鰹(かつお)の内臓を使った塩辛」のことだ。高知名産の鰹を使って、新鮮な原料と塩で発酵させて作る。
塩辛との一番大きな差は、魚介の身を使うか内臓を使うかということだ。身を使ったものを塩辛、内臓を使ったものを酒盗というのだ。
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【追加雑学②】カツオ以外の酒盗もあるよ
酒盗は、今では冷蔵技術が進んだので塩分控えめの「甘口」が主流だが、昔はうんと塩を効かせた発酵保存食だった。
今でも昔ながらの「辛口」はとびきりしょっぱいが、塩以外の添加物が極力排されたシンプルなものなので、より鰹の風味を味わいたければ辛口をおススメしたい。
また、昔は鰹しかなかった酒盗だが、今では鰹よりややマイルドな鮪(まぐろ)、真鯛などでも酒盗が作られている。イカも塩辛だけでなく、内臓を発酵させた「イカの酒盗」が存在する。
筆者の激オシの「飯盗」
高知県のアンテナショップで初めて「飯盗(はんとう)」を食べたとき、その旨さに筆者は思わずうなった。なんだこの歯ごたえ?
そう、酒盗には酒だけでなく、米を盗みたくなる「飯盗」まである。鰹の最も旬な時期にしか作られない期間限定の逸品だ。
その正体はなんと鰹の胃袋! さまざまな内臓をすべて使う酒盗に比べ、胃袋だけの飯盗はスッキリした後味で大変食べやすい。コリコリとした食感もクセになる。
飯盗は酒のお供より、米のお供に向いている。だから飯盗。正直ちょっと高級品だが、これさえあれば白飯2杯は軽い。酒盗好きならぜひ食べ比べて下さい(本当に旨いから)。
酒盗の雑学まとめ
酒を盗みたくなる高知生まれのスゴい珍味・酒盗についての雑学を紹介してきた。美味しいがゆえの名前とは、珍味冥利に尽きるだろう。独特の風味で好き嫌いが分かれてしまうが、一度ハマると酒のお供に最適である。
酒盗は加熱料理でもかなり使える万能調味料だ。チャーハンやパスタなど、アンチョビの代わりに入れてみてほしい。味に深みが増し、香りを存分に楽しむことができる。
書いていたら酒盗が食べたくなってきたので、今日は酒盗をお買い物リストに追加します。酒もお忘れなく!