突然だが、あなたは「タイヤの色は?」と聞かれてなんと答えるだろうか。恐らく99%の人が「黒」と答えるのではないか。街中で黒以外のタイヤで走っている車を見かけることなんてほぼない。もちろん海外に行ったってタイヤの色は一律黒である。
当たり前すぎて今まで考えもしなかったが、そもそもなんで黒で統一されているんだ? 赤や青のタイヤをした車が走っていても、なんら問題はないはずだ。
その理由に迫ってみると、タイヤ開発の歴史や、そのなかで染み付いたイメージが影響していることが見えてきたぞ!
【生活雑学】タイヤが黒い理由は「カーボンブラック」
【雑学解説】タイヤを黒くする「カーボンブラック」とは?
結論からいうと、タイヤが黒い理由はゴムにカーボンブラックという、黒色の炭素粉末を混ぜて作っているからだ。なぜカーボンブラックを混ぜるかというと、タイヤの耐久性を上げるためである。
実際のタイヤを想像してもらえばわかるように、タイヤは輪ゴムなど、ほかのゴム製品に比べて伸びにくく、硬い。カーボンブラックにゴムの繊維をガッチリと結びつける力があるからだ。これによって地面と接している部分の耐久度は10倍にもアップするというぞ。
またカーボンブラックには紫外線を吸収する働きもあり、日差しにさらされてのゴムの劣化も遅らせることもできる。重い車体を支えながら、デコボコの屋外を走るにはうってつけの素材なわけだ!
ゴムタイヤが開発された1800年代後半には、単純にゴム樹脂を固めただけの、白や飴色のタイヤが使われていたこともある。しかしブラックカーボンを使っていないこれらのタイヤは耐久性がなく、すぐにひび割れて劣化してしまうのが問題点だった。
そして1912年のこと、ブラックカーボンを混ぜたタイヤが考案されると、以降100年以上に渡ってこれより優れた素材が発見されることはなかった。
それだけ長い間黒なのだから、世間にも「黒が当たり前」という認識が広がるわけだ。
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最近のタイヤにカーボンブラックは使われない?
このように長らく敵なしの素材だったカーボンブラックだが、最近では技術革新が進み、通称ホワイトカーボンと呼ばれる、「シリカ」という素材を使ったタイヤが主流になっている。
耐久性を上げる意味ではカーボンブラックは申し分ない。しかし代用品になるシリカを使えば摩擦抵抗の少ないタイヤに仕上がるため、近年のトレンドである低燃費・エコを実現できるのだとか。
ちなみにシリカを使えばホワイトカーボンという通称の通り、白いタイヤを作ることができる。しかし現在も相変わらずタイヤは黒のまま。シリカ主体のタイヤに少量のカーボンブラックを混ぜることで、着色しているのだ。
白だけではなく、赤や青のタイヤだって理屈上は作ることができるし、実際に作っているメーカーもある。しかし100年以上続いてきた「タイヤは黒」という一般認識をくつがえすことは難しく、「あるにはあるが、あまり売れていない」というのが現状なのだろう。
以下はカラータイヤを市場に普及させようと奮闘するメーカーの宣伝動画だ。車もオシャレの一環となった現代のこと、今後トレンドとなる日がやってくる可能性も…?
【追加雑学】意外と身近なカーボンブラック
いかにもタイヤの強度を高めるために生まれたようなカーボンブラックだが、当初は黒色の顔料として使われていたものだった。
横文字の名前が付いているが、カーボンブラックとは要するに「スス」のこと。紀元前16世紀のエジプトの人々は、火を起こした際にできるススを集めて、文字を書くことに利用していたとされているのだ。
そして現代になっても、「文字を書く」という当初の用途は健在である。書道の墨汁にはカーボンブラックが使われているし、印刷のインクにも使われている。
そしてまさかのお化粧道具…マスカラにもカーボンブラックが入っているぞ! タイヤの補強材にバッチリといういうことは偶然発見されただけで、けっこう身近なものだったんだなあ…。
「タイヤが黒い理由」の雑学まとめ
タイヤが黒いのは、ゴムの耐久性を上げる目的でカーボンブラックが混ざっていることからだ。そして代用品が現れた現在でも、あまりにも浸透しすぎた影響で、タイヤは黒であり続けている。
カラータイヤもオシャレでいいけど、やっぱり黒のタイヤはスタイリッシュ。流行りが変わらないのは、慣れだけの問題ではなさそうな気もする。
今後「一生劣化しないカーボンレッド!」のようなトンデモ素材が発見されれば、市場が裏返ることもあるかもしれないが…。