スーパーの総菜コーナーなんかでよく見かける「鶏の竜田揚げ」。マクドナルドに行っても「チキンタツタ」なんてメニューがあったりして、割とみんななじみ深い料理なのではないか。
しかしこの竜田揚げ…、なんで竜田揚げっていうの? 唐揚げと同じじゃないの?
など、疑問を感じ始めると、気になることがたくさん出てくる。竜田ってどっかの地名なのか? その割にご当地料理という感じでもないけど…。
ということで、今回はそんなとっても気になる竜田揚げの雑学に迫るぞ!
【食べ物雑学】「竜田揚げ」の名前の由来
【雑学解説】竜田揚げの由来は奈良県北西部を流れる「竜田川」から
竜田揚げの由来は、一説に奈良県北西部を流れる「竜田川」だといわれている。生駒市内から平群町(へぐりちょう)、斑鳩町(いかるがちょう)と南下していき、大阪湾に続く大和川へと合流する一級河川だ。
なるほど、この辺りが竜田揚げ発祥の地ってこと? と思っていたらそうではない。その名前の由来は、竜田揚げの色合いが、竜田川の水面に浮かぶ紅葉とよく似ていたからだ。
竜田川は有数の紅葉スポットとして知られ、平安時代の歌人・在原業平(ありわらのなりひら)もこんな一節を詠んでいる。
「ちはやぶる神代も聞かず竜田川からくれなゐの水くくるとは」
現代風に訳すと、
「神様が暮らした太古の時代には不思議なことも起こったのだろうが、それでも竜田川の水がここまで真っ赤に染まってしまうようなことはないんじゃないか…」
という感じ。要はこんな大げさな例えをしたくなるぐらい、竜田川の紅葉は美しいということだ。
竜田揚げの色合いは紅葉にそっくり
竜田揚げはしょうゆとみりんで下味をつけるため、普通の唐揚げよりも赤く揚がる。これがまず、紅葉の色にそっくりなわけだ。
そして小麦粉ではなく、片栗粉を使っていることで衣に白くなる部分がある。この白い部分は水面に反射する光に見える。
これらの理由から竜田川の紅葉にちなみ、竜田揚げという名前がついたというのだ。めっちゃ風流!
以下の動画で竜田川の紅葉の美しさも紹介されているので、ぜひ見てみてほしい。歌に詠みたくなる気持ちもよくわかる。
竜田揚げを斑鳩町のソウルフードに!
竜田揚げはこんなに美しい観光名所が由来になっているのに、まだまだそれを知っている人は少ない。そんな状況を受けて、近年は生駒市観光協会や、斑鳩町の有志たちがご当地グルメとしての竜田揚げの推進に尽力している。
竜田揚げが食べられるお店を載せた「竜田揚げ食べ歩きマップ」の作成や、合同会社を設立して「斑鳩名物 竜田揚げの漬け込みダレ」を開発するなど、竜田揚げをソウルフードにしようという試みが、かなり本気で展開されているぞ!
推進プロジェクトの始動に伴い、竜田揚げの特別メニューを出すお店も増え、竜田川周辺でしか食べられない竜田揚げが満喫できるようになった。…これは紅葉と竜田揚げ目当てに旅行すれば、相当に楽しめるんじゃないか?
生駒市ご当地グルメ「たつた揚げプロジェクト」が、今日の日経新聞夕刊で取り上げられタケ。市内31店で提供しているので、ぜひ食べてタケ。https://t.co/Td1T5wtgtx プロジェクトの詳細はこちら→https://t.co/oqGrVThacI #生駒 #ご当地グルメ pic.twitter.com/DnDn3lJ7t3
— いこまタケ (@Ikoma_kouhou) May 9, 2017
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【追加雑学①】巡洋艦「龍田」が由来という説も…?
竜田川が竜田揚げの由来になったという説は古くからいわれているもので、地元奈良の人たちから強く推されている。しかし実は、竜田揚げの由来にはもうひとつ説がある。
第二次世界大戦などで使用された巡洋艦「龍田」の料理長が開発したという説だ。こちらはTBSの情報番組「この差って何ですか?」の2019年3月12日分の放送でも紹介されていたぞ。
具体的な時期はわかっていないが、竜田揚げが開発された当時、日本ではクジラ肉が安く手に入り、重宝されていた。
しかしクジラ肉には独特のクセがある。今となっては食べられる機会もそうそうないが、食べたことがある人のなかには「ちょっと苦手かも…」と感じた人もけっこういるんじゃないか。
このクセの原因は、魚をさばいたときなんかによく見られる"血合い"の部分にある。以下はマグロの血合い。このように背骨付近の身が赤黒くなっているのを見た覚えはないだろうか。クジラは特にその割合が多いのだ。
クロマグロの血合いを入手したので汁にする。 pic.twitter.com/ApDoBsnRqx
— nobi@紅楼夢を予定 (@nobiechigonia) July 12, 2020
この血合い特有の生臭さを消すために龍田の料理長が考えたのが、しょうゆとみりんで下味を付けることと、小麦粉より衣が分厚くなる片栗粉を使うことだった。
この料理がのちに全国に広がっていき、そのなかで龍田揚げと呼ばれていたものが、竜田揚げへと呼び名を変化させていったというのだ。なるほど…いかにもそれっぽい説のように思える。
しかし、この説には根拠となる資料などがなく、信憑性は定かではない。結局、竜田川説・巡洋艦龍田説のどちらが正しいかははっきりわからないのだ。ただ…せっかく地元の人たちが盛り上がっているのだし、個人的には竜田川説を推したい!
竜田揚げのレシピ動画も紹介しておこう。カラッと揚げるための秘訣が参考になる!
【追加雑学②】唐揚げと竜田揚げの違い
唐揚げと竜田揚げは、ともすれば「どう違うの?」と思うほど似ている。両者の違いを結論付けるなら、"竜田揚げは唐揚げの一種"とするのが正しいのではないか。
それぞれの定義をまとめると、以下のような点が挙げられる。
- 竜田揚げ…しょうゆ・みりんで下味を付ける。片栗粉で揚げる
- 唐揚げ…下味を付ける場合・付けない場合があり、使う調味料もさまざま。小麦粉で揚げることが多いが、片栗粉を使うこともある。
このように、唐揚げという言葉はより広義な揚げ物を意味し、竜田揚げはそのなかの一種であることがわかる。つまり竜田揚げを唐揚げと呼んでも、別に間違いではないわけだ。
ちなみにどちらも鶏肉を挙げている印象が強いが、揚げるものは肉に限らず、魚や野菜など、上述の手法で揚げていればどんなものでも唐揚げ・竜田揚げと呼べる。
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唐揚げの起源は中国料理から?
唐揚げの起源は、江戸時代に中国から伝わった普茶料理(ふちゃりょうり)という、精進料理にあるという。普茶料理の唐揚げは「からあげ」または「とうあげ」と呼ばれ、豆腐を細かく切ったものを揚げ、そのあとにしょうゆと酒で煮たものだ。
この料理を参考に、鶏肉を揚げた唐揚げを考案したのが、銀座の「三笠会館」だったといわれている。
鶏の唐揚げの開発は、昭和初期の時代、経営難に陥ったお店を立て直すための打開策だったというぞ! 唐揚げの成り立ちには、今や創業100年近く続く老舗レストランの危機を救った経緯があるのだ。
またこのほかにも、唐揚げの由来は「空揚げ」で、特に下味を付けずに揚げたものをそう呼んだことからとする説もある。
北海道の「ザンギ」も中華料理から
北海道では、唐揚げのことを"ザンギ"と呼ぶ。ほかの地域のものとなにか製法が違うのかと思いきや、明確に「これはザンギで、これは唐揚げ」という線引きはない。ただ、ザンギのほうが味付けが濃い傾向にあるという話も。
このザンギという呼び方も、実は由来は中華料理からである。中国では唐揚げのことを炸鶏(ザーチー)といい、これに日本語の"運"という言葉を掛けてザンギと呼ぶようになった。いわゆるゲン担ぎというやつだ。
濃い味付けになっているのも、ひょっとして中華料理の影響かも?
最初にザンギを出したのは釧路の料理店で、当時は骨付きの鶏肉を揚げたものに、ソースを添えて出していたというぞ!
【追加雑学③】唐揚げにレモンをかける理由
居酒屋などで唐揚げを頼むと、必ずといっていいほど添えられているレモン。「レモンかけていい~?」なんて確認作業はもはやお決まりである。
レモンをかければ風味が変わることはなんとなくわかるけど、それにしたって、どこのお店でも決まってレモンなのはどうしてか。それは、レモンと唐揚げが相性抜群だからだ。
レモンのような柑橘類の酸味は、口のなかをリフレッシュさせてくれる。その効果で、唐揚げのような味の濃い料理でもたくさん食べることができるのだ!
普段はレモンかけない派の人も、食べていて飽きて来たらかけてみるといいかも。
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【追加雑学④】ローソンのからあげクンは妖精
ローソンの人気商品「からあげクン」のパッケージに描かれたキャラクターは、ただのニワトリではない。「いや、どう見たってあれはニワトリでしょ…」と思うだろうが、彼らはからあげクン王国からやってきた"妖精"である。
目には見えないが、ときにローソンの店舗にも現れるという。
…ていうか、からあげクン王国ってなんだよ…。それにローソンの店舗に来てるって、仲間のお肉が売られているのを見るのは複雑…いや、これ以上はやめておこう…。
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雑学まとめ
今回は竜田揚げの由来に関する雑学を紹介した。
紅葉がとっても美しい竜田川を由来とする説・巡洋艦「龍田」の料理長が開発したとする説…どちらが合っているかはわからない。でもやっぱり竜田川の説のほうが風情があるし、現代の町おこしにも繋がっている感じが好きだ。
私も次に旅行するときは、竜田川の紅葉と竜田揚げを堪能したい!