春頃を過ぎると毎年低木に咲き始める、赤くてとっても綺麗なツツジ。日本のあちこちで咲いている、日本人にはとってもなじみ深い花である。
しかしその親近感とは裏腹に、ツツジを漢字で書くととっても難しいし、由来を辿るとちょっとおっかなかったりもする。
…おっかないってどういうこと? いったいツツジはどんな漢字で書かれ、どんな意味が込められているんだ?
今回はそんなツツジという漢字の成り立ちの雑学に迫ってみよう!
【自然雑学】「ツツジ」を漢字で書くと?その由来とは?
【雑学解説】ツツジを漢字で書くと…読めない。
ツツジは漢字で書くと「躑躅」。二文字合わせて42画という、そこそこな難関漢字である。
しかも草冠も木偏も付いていない、一見植物とは想像もつかない様相をしている。どっちにしてもほかで見たこともないような漢字だけど。
いったいどんな意味をもった漢字なのか?
躑躅は音読みでは「てきちょく」と読み、この言葉には以下のような意味がある。
- ためらう
- 行き戻りする
- 足踏みする
現代の日本ではまず使われないが、中国では今でも上記のような意味で使われている。ちなみに「躑」「躅」と一文字ずつに分けても、それぞれの表す意味は変わらない。
なるほど、たしかにどちらも足偏だし、「躅」なんかは「濁る」にどこか似ているのもあって、行き留まっている様子がなんとなく想像できる。言うのをためらうことを「言葉を濁す」なんて言ったりするし!
…でもさ。
やっぱり花はなんにも関係なくないか?
…と、思うよね。
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ツツジの漢字が「躑躅」になった由来とは?
ツツジを「躑躅」と書く理由には実はふたつの説があり、どちらが正しいのかはわかっていない。
- 見るものが立ち止まってしまうほど美しいから
- 羊が誤って食べると毒で動けなくなってしまうから
という具合だ。
立ち止まってしまうほど美しいから、「足踏み」を意味する躑躅という字があてられたというのは、いかにもそれらしい。
しかし気になるのは「羊が毒で動けなくなってしまう」という説である。なんか急に物騒な感じじゃないか。
これに関しては、5~6世紀の中国の学者・陶弘景(とうこうけい)という人が、こんな話を残している。
「羊が食べると躑躅して死んでしまうから、その花を羊躑躅と呼ぶ」
え…ツツジってそんなにヤバイ花なの?
羊躑躅というのは、中国原産の「シナレンゲツツジ」のことで、この花にはたしかに毒がある。日本にも亜種にあたる「レンゲツツジ」が咲いているが、これにも毒があって、野生の鹿などは絶対に食べないというぞ。
つまりシナレンゲツツジを食べて動けなくなっている羊の様子を当時の中国の人が見て、花の名前を「躑躅」としたわけだ。「毒がある」という事実があるのだし、これはかなり有力な説ではないか。
というか…読者のみなさんは子どものころ、ツツジの花の蜜を吸ったりしなかっただろうか。種類に気をつけないと、あれはけっこう危ないことだったのだ…。躑躅しなくてよかった~!!
毒のあるレンゲツツジは以下の動画のように、オレンジ色の花を咲かせる。人間でも痙攣による呼吸障害を引き起こすほどその毒性は強いというぞ。でも綺麗だよね!
五味池破風高原自然公園は長野県須坂市のツツジの名所としても知られている。シーズンに見られる満開のツツジはまさに絶景だ。
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【追加雑学①】「ツツジ」と読む漢字は他にもある
実は日本では「躑躅」以外にもツツジと読ませる漢字が使われている例がある。
- 杜鵑花(「とけんか」とも読む)
- 映山紅(「えいさんこう」とも読む)
などだ。正岡子規・森鴎外・泉鏡花など、明治~大正期の作家の作品には、これらの漢字でツツジが表現されているものがしばしばある。
ただ…このふたつは読みこそ「ツツジ」で同じだが、品種的には躑躅とは区別されている。
「杜鵑花」「映山紅」は、「サツキツツジ」という種類。躑躅はサツキツツジ以外のツツジである。
それはサツキツツジがそのほかの種類とは違った咲き方をするためだ。
サツキツツジはその名前にもなっているように、5~6月ごろに花開く。これはほかの種類のツツジたちより、1ヶ月ほど遅い開花である。つまり、ツツジのなかでは季節感が唯一違う種類なのだ。
そのため昔の小説などでは季語として区別され、違う漢字が使われているのである。
ちなみに杜鵑花というのは「ホトトギス(杜鵑)が鳴く頃に咲く花」という意味。映山紅に関しては定かではないが、おそらく「赤い花が山を彩る様子」から来ているのではないかといわれている。…シャレオツ。
【追加雑学②】日本で「ツツジ」と呼ばれる由来は?
パソコンやスマホなどでツツジを漢字変換するとたしかに「躑躅」と出てくるが、本場中国では、もちろんこの漢字をツツジとは読まない。中国語での躑躅の呼び名は「チーチュー」である。
つまり躑躅という漢字は中国由来でも、ツツジと読むのは日本ならではということだ。日本人がツツジと読むようになったことにもまた、以下のような諸説がある。
- 「続き咲く木」という意味
- 「綴り茂る」という意味
- つぼみが女性の乳頭に似ているため「垂れる乳」から転化した
- 韓国語でツツジを「tchyok-tchyok」と発音するから
ちょっとアダルトな説が含まれているのも気になるが…あえて触れないでおこう。
で、筆者としてはなんとなく、「続き咲く木」「綴り茂る」という説が有力な気がする。
ツツジは非常に強い木で、園芸初心者でも育てやすいというし、その生命力から名付けられたというのは納得のいく話だ。
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【追加雑学③】ツツジの花言葉は?
ツツジの花言葉は「節度・慎み」である。日本人に馴染み深いツツジはまさに、日本の国民性を表しているかのような花言葉なのだ! みんな! 慎もう!
また花の色によっても違う花言葉があり、赤は「恋の喜び」、白は「初恋」である。どちらもなんだか初々しい、甘酸っぱさを感じる響きだ。
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【追加雑学④】ツツジの名所をご紹介【動画】
全国には、美しいツツジが見られる名所があるぞ!
以下は広島県江田島市にある「水島観光さつき園」の様子だ。サツキツツジの鮮やかなピンク色が美しい!
動画のさつき園は江田島湾を一望できる、山手をさつき園にしたという絶好のロケーションだ。
庭園に面した料亭「さつき荘」でおいしい料理をいただきながら…。なんて贅沢もいいかも。
さらに、奈良県にある「大和葛城山」もオススメだ。
「一目百万本」といわれる大和葛城山のツツジは毎年、5月ごろに揃って咲き始める。以下の動画のように真っ赤に彩られた山がとっても綺麗だ!
単純に山歩きを楽しむだけでも、リフレッシュには最適である。アクセスは以下の通りだ。
「ツツジの漢字」の雑学まとめ
今回はツツジを漢字で書いた「躑躅」の雑学をお届けした。
なんだか植物らしくないこの漢字には、「ためらう・立ち止まる」のような意味があり、その由来は花に見惚れる様子や、毒をもっていることから来ていた。
どちらが正しいとはっきり言うことはできないが、どちらも当てはまるという意味では、どちらも正しい!
花の蜜を吸うなら毒のある種類に気をつけて、シーズンにはまたうっとり見惚れようではないか!
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