週末の歓楽街は千鳥足のサラリーマンや騒ぐ学生であふれ、テレビCMでは有名俳優がビールを豪快に飲む。祝い事の際にはたとえ苦手でもお酒を勧められ、コンビニに行けば必ず缶ビールが目に入る。
どれだけあなたがお酒嫌いだとしても、日常生活の中でお酒との生活を完全に断ち切るのは難しい。世界はアルコールであふれているのである。
これほどまでに現代の生活に浸透しているお酒だが、一体いつから飲まれていたのだろうか。今回の雑学記事ではお酒の歴史について紐解いていこう。
【食べ物雑学】お酒の歴史とは?
【雑学解説】古代の酒はなんだった?世界最古の酒とは?
お酒の歴史をただると、諸説はあるが紀元前8000年にはジョージア地方でワインが飲まれていた。土器に入れたぶどうを地中で発酵させるというこの製法は、現代にも受け継がれている。
また、紀元前7000年には中国でハチミツやブドウなどを醸造したお酒が飲まれていた。これらは砂糖と酵母を混ぜ合わせて土器の中に保存された。
紀元前5000~10000年のメソポタミアでは、すでに大麦のビールが飲まれていた。大麦のお粥を放置したところ、発酵が始まりアルコールが発生したことがビールの始まりと言われている。
飲まれ始めた正確な順番は不明だが、これら3つが世界最古のお酒であるといえるだろう。
メソポタミアの栄養ドリンク「大麦ビール」
古代メソポタミアではビールがに日常生活に浸透しており、なんと3度の食事と共にビールを飲んでいた。さらに旅行時には、溶かすとビールにできるパンが携行された。現代の居酒屋のように、酒とつまみを出す店もすでに存在していたようだ。
ビールにはビタミンや糖分が含まれるため、当時は貴重な栄養分として扱われていたようだ。娯楽目的でお酒を飲むことが主流の現代とはかなり異なっている。
この大麦ビールの作り方はこうだ。ツボの中に発芽した大麦(麦芽)で作ったパンとお湯を入れ、ふたをして発酵させる。最後にどろどろになった液体を布でこして完成だ。
しかし味のほうは現代のそれとは似ても似つかないようで、どろどろに溶けた大麦の微炭酸の液体と薬草の味がするそうだ。一度は飲んでみたいが…。
現代のビールのようなのど越しと苦味を手に入れるには、9世紀にポップ添加が考案されるまで待たなければならない。
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太古のブランド酒「ワイン」
一方で古代メソポタミアにはワインもすでにあったが、これらは高級品とされ、上流階級のみが楽しむことができた。
ワインはブドウ栽培に適した気候である地中海に浸透した。ローマ帝国ではすでにブランド物のワインも存在していたようだ。一方でビールは、北方のゲルマン人が飲む野蛮な飲み物として扱われていたようだ。
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イスラム技術によって完成した「蒸留酒」
時が流れて11世紀。イスラム世界によってもたらされた蒸留技術により、ヨーロッパでウイスキー等の蒸留酒が現れた。
一方、一説によると中国ではすでに6世紀半ばに蒸留酒である白酒が作られていた。これは13世紀に日本に伝わり、沖縄の泡盛の源流になっている。白酒は現在、中国で最も多く作られているお酒である。
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【追加雑学①】現代まで残っていた口噛み酒
日本でも、縄文時代から果実を利用した醸造酒が作られていた。しかし、米を原料とした酒の登場には、稲作の伝来を待つ必要がある。
あの大ヒット映画「君の名は。」で有名になった口噛み酒は、縄文時代後期以降に飲まれ始めた。 大隅国風土記には、村の男女が集まり十分に噛んだ米を容器に吐き入れ、酒の香りがすると再び集まってそれを飲んだという記述がある。
米は糖度が低いためそのまま醸造することはできないが、唾液中の酵素で米のデンプンを糖化させることで発酵が可能になるのだ。
口噛み酒の作り方はいたって簡単だ。10分ほど噛んだ米で容器をいっぱいにし、ふたをして暖かいところで一晩寝かせる。翌朝ふたを開ければ口噛み酒の完成である。
ただし、口内にすむ様々な細菌たちも一緒に繁殖するため、完成した物からは排泄物のような匂いがしてくるらしい。衛生上危険なので家で試すのはやめたほうがいいかもしれない。味は…あなたのご想像にお任せする。
以上の理由も手伝ってか、神社で口噛み酒を造るのは未婚の巫女とされた。この口噛み酒は、ほんの半世紀前まで沖縄やアイヌの祭りの行事として残っていた。
食卓でもなじみ深いお酒のルーツ
8世紀には日本酒も飲まれ始めたが、これは上流階級のみが飲める高級品であった。
日本酒が一般庶民に広まり始めたのは鎌倉時代に入ってからである。正月や祭礼で日本酒を飲む習慣は、現代になっても田舎に行けば根強く残っている。
16世紀にはヨーロッパからワインがもたらされるが、お酒としてのワインの普及は明治になるまで待つ必要がある。一方、生食用のブドウは山梨を中心として江戸時代に広まった。
18世紀にもたらされたビールは、当時はその苦さから不評だったようだ。
そして、ペリーの来航と共にウイスキーが日本に伝わった。
明治時代に突入した日本では、ヨーロッパ諸国への憧れも手伝い、これらの洋酒が急速に普及していった。
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【追加雑学②】醸造酒と蒸留酒
ここまで様々なお酒が出てきたが、これらは作り方によって大きく2つに分類することができる。
醸造酒
醸造酒とは、原料の糖分を食べてアルコールを発生させる酵母が作るお酒である。
ブドウなどの甘い作物は、そのままの状態で発酵するのに十分な糖度がある。
一方で大麦などの糖度が低い作物は、どうにかしてそれを上げる必要がある。大麦の場合は、発芽させることで糖度が増す。そのため、古代メソポタミアのビールは発芽した大麦(麦芽)から作られていたのだ。
日本酒の場合、米の糖度を高めるために麹という微生物が使われている。
この麹は、大豆を原料とした醤油やみそなどにも利用されている。このように、麹は日本人の食生活と共に生きてきたといっても過言ではないほど日本料理に浸透している。
蒸留酒
蒸留酒とは、醸造酒を蒸留することでアルコール度数を高めたお酒である。
醸造酒を熱して水より沸点の低いエタノールを気化させ、それを冷やして液化させることでアルコールを凝縮させるのである。
これはベースとなる醸造酒がないとできないので、蒸留酒の登場は当然ながら醸造酒の後になった。
「お酒の歴史」の雑学まとめ
今回はお酒についての雑学を紹介した。現在、お酒はもっぱら娯楽用として大衆に親しまれている。しかし、お酒は遥か紀元前から人間と共にあり、栄養源・祭礼用とさまざまな使われ方をしてきたのだ。
古代のロマンを感じつつ大麦のビールを作って飲むというのも、また乙な楽しみ方かもしれない。口噛み酒は怖いのでやめておこう。
そして、今日からいつもの晩酌を少しだけ美味しく感じることができるだろう。…やはり酒は最高だ。
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