みなさんは和菓子はお好きだろうか。私が子どものころ、和菓子が好きな子は少なかった。
なんとなく「おばあちゃんたちが食べるもの」という感覚だったのだ。しかし現在小学生の子どもたちに聞くと、意外にも和菓子好きが多かったのである。
アメリカンでジャンクなお菓子にあこがれた我々時代とは違って、今やジャンクはどこにでもあるお菓子。
そんな中で、あまり食べない和菓子の方が興味をもちやすいということなのだろうか…。今回はそんな和菓子の中でも定番の「ようかん」についての雑学をご紹介しよう。
【食べ物雑学】ようかんの漢字が「羊羹」の由来とは?
【雑学解説】ようかん(羊羹)の名前の由来は「中国の羊のスープ」
ようかんを漢字で書くと「羊羹」。由来は中国の食べ物。
このようかんのもとになったのは「羊のあつもの」という羊肉を使って作ったとろみのあるスープなのだ。
この「あつもの」、漢字で書くと「羹」。そう、ようかんの「かん」の文字である。
和菓子「羊羹」のルーツは、5~6世紀頃の中国で生まれた羊のスープだが、実はこれ、普通に熱々を飲む料理ではなく、冷めてぷるぷるのゼリー状になった肉汁をいただくという、ちょっと変わったスープなのだ。
これが室町時代に日本の禅寺に伝わり、僧侶たちの間に広まった! しかし、殺生を禁じる戒律のもとでは精進料理しか食べられないため、羊のかわりに小豆で作ったのが、和菓子「羊羹」の始まりなのである。
がんもどきも大豆ミートな料理だが、肉を豆で代用できることに気づいた昔の人って、本当にすごい。
初期の羊羹は、小豆と葛(くず)粉で作った蒸し羊羹。当時は砂糖が国産でまかなえず貴重なものだったため、甘みを葛でつけていた。そのため、砂糖を使った羊羹はわざわざ「砂糖羊羹」と呼ばれていたという。
砂糖を使うのが当たり前になったのは、17世紀以降、琉球王国と貿易していた薩摩藩が砂糖を持ち込んでからのことだ。
そして、現代の姿にもっとも近い羊羹を作ったのは、京都の和菓子屋「鶴屋」の5代目・岡本善右衛門(おかもとぜんえもん)! 時は1589年(天正17年)のことである。
善右衛門が考案した、葛粉の代わりに寒天を使った「煉羊羹(ねりようかん)」はすぐに大ヒット! パク…真似っこした店が次々とオープンし、またたく間に江戸っ子たちの大人気スイーツとなったのだ!
善右衛門の「駿河屋」は、その後和歌山に移り、現在も日本が誇る老舗和菓子屋として、元祖・煉羊羹を販売中だ。
主に関西を拠点に展開しており、百貨店にも出店している。私はまだ食べたことがないため、どんな味なのかとても気になる…。一度でいいから食べてみたい!
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【追加雑学】ようかん(羊羹)は非常食に最適
そんな羊羹、実は非常食としてもとっても優秀! 糖度が高くて腐りにくく、常温保存ができるため、非常時はもちろんスポーツ時の栄養補給にもおすすめの和菓子なのだ!
老舗和菓子屋「とらや」の羊羹は、賞味期限を1年と設定しているが、実は2年はオッケーらしい! 一時期は2年と正直に記載していたのだが、「お菓子の賞味期限が2年もあるって、防腐剤使ってるんじゃないの?」と怪しむ声が続出したため、便宜上1年と表示しているのだとか。
「1年でもすごいのに2年ってやばくない?」と思ったあなた、まだまだ驚くのは早いぞ!
あずきバーや中華まんでおなじみの「井村屋」が販売している「えいようかん」は、なんと賞味期限5年6か月! 長すぎて、もはや買ったのを忘れそうなレベルである。
すっきりした後味で、はさみがなくても開けられるパッケージにしてあるなど、賞味期限が長い以外にも非常食としての機能に特化している。防災袋のお供には心強い仲間になりそうだ!
また、ようかん好きの方はぜひ手作りにも挑戦してみてもらいたい。自分で作ったようかんなら、美味しさも格別だろう。
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「ようかん(羊羹)」の雑学まとめ
今回は「ようかん」についての雑学をご紹介してきた。
ようかんに羊が入っていないことくらいは流石に検討がつくが、まさか元をたどれば本当に羊が使われていたとは驚きだ。
和菓子「羊羹」は、禅僧たちの「お肉食べたいんだよ! お肉じゃないけどお肉のつもりで食べるんだ!」という、食へのすさまじい執念が生み出した和菓子だったのだ。
ちなみに、現在の中国では和菓子の羊羹を逆輸入した「羊羹(ヤンカン)」が売られているほか、統治時代に羊羹が伝わった台湾でも、身近なお菓子として定着している。
スープを別物のスイーツに変えてしまった、食いしん坊な禅僧たちの存在を知っている日本人はあまりいない。しかし、彼らのこだわり…というか執念は、国外でも多大な評価をされているということだ!