江戸時代

イケメンを"二枚目"と呼ぶ理由とは?8つある"◯枚目"を一気にご紹介!【歌舞伎】

雑学カンパニー編集部

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イケメンのことを「二枚目」とよぶのはなぜ?に関する雑学

カッコイイ男性のことを「イケメン」と呼ぶようになって久しいが、昔から使われている言葉に「二枚目」という表現がある。

今さらこの言葉の意味が通じないことはないと思うが…、よく考えてみればどうしてイケメンが二枚目なんだ? 2番手だったら、それってちょっと微妙じゃない?

わからないのも無理はない。イケメンが二枚目と呼ばれる理由は、江戸時代の歌舞伎文化からきているものだからだ。今回の雑学はそんな歌舞伎からきた「二枚目」という言葉について。

現代にも、知らず知らずに歌舞伎の文化が染み付いていることに気付かされるぞ!

【歴史雑学】イケメンを"二枚目"と呼ぶ理由とは?

信長さん
「二枚目」という言葉は江戸時代から使われてて、歌舞伎の看板が由来なんだぞ。
秀吉くん
ほ〜!歌舞伎が由来なんすね!

【雑学解説】二枚目だけじゃない!八枚目まである歌舞伎用語

もともとは八枚目まである歌舞伎用語について解説

京都・南座。現在はたくさんの看板が出ている

カッコイイ男性を表す二枚目という言葉は、そもそも江戸時代に歌舞伎の影響を受けて広まったものだ。歌舞伎が行われる芝居小屋にはその都度、上演される演目の出演者名を書いた看板が並べられる。

看板の数は全部で8枚と決まっていた。そして看板の並び順には、「その人がどんな役を演じるか」という意味もあったのである。看板の位置はそれぞれ、以下のような役割を表していた。

枚数 役柄 意味
一枚目 主役

その名の通り「主役」。「一枚看板」という用語もある。

二枚目 色男

美男子や優男(やさおとこ)を指す。恋愛や濡れ場を担当していた。

三枚目 道化(どうけ)

お笑い担当。二枚目がイケメンなら、三枚目は面白くてブサイクな人を指していた。

四枚目 中軸

中堅役者。いわゆるまとめ役で、頼りになる先輩といった感じだろうか。

五枚目 敵役 その名の通り「敵」を担当する役。
六枚目 実敵

敵役でありながら、どこか憎めない役。アニメでいえばポケモンのロケット団

七枚目 実悪 全ての黒幕であり、ラスボス。
八枚目 座長 代表者のこと。元締めを指す。

このように芝居小屋では、イケメンキャラの看板はいつも二枚目の位置に掲げられていたのだ。

そして今でこそ敷居の高い印象があるが、歌舞伎は江戸時代には、庶民が楽しむ舞台だった。そのため二枚目のイケメンイメージもより広く浸透していったのである。

よく考えてみれば、アニメなどでもクールなイケメンキャラは、主役というより、主人公の相棒として二番手キャラを演じることが多い気がする。歌舞伎は日本人の感性に意外と根強く染み付いているのかも…。

秀吉くん
江戸時代の言葉がいまも残ってるのはすごいっすねえ!

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「男前」も歌舞伎用語

二枚目と同じくイケメンを表す「男前」という言葉も、実のところ、もともと歌舞伎用語である。歌舞伎の世界では、振る舞い・動きのことを「前」という。

となると男前は、「男っぽい振る舞い」となり、「男らしい」という意味になるのである。二枚目よりも性格面を表した言葉のように感じるな。

そう考えると、「顔はいまいちだけど男前」という人もいるのではないか。

「三枚目」も歌舞伎が由来

「三枚目」も同様に歌舞伎がルーツの言葉という雑学

お笑い担当や、ちょっと残念な役回りの男性を三枚目と呼ぶことがあるのも、前出の歌舞伎の看板が由来で、三枚目の看板がいつもそういう役の人になっていたからだ。

主人公・イケメンキャラ…とくると、たしかに次は場を和ませてくれるようなお笑い担当が欲しくなる。ワンピースのウソップみたいな! なるほど。たしかに一~三枚目は冒険アニメの仲間のお決まり路線だ!

そういえば四枚目の頼りになる先輩も欠かせない。主人公たちがピンチに陥ったときにアドバイスをくれるような人って絶対必要だもんな。

ちなみに「三の線」という言葉でお笑いキャラを表すことがあるのも「三枚目」から発展した表現だ。

信長さん
織田家臣団の中だと、お前が三枚目だな。
秀吉くん
二枚目がよかったっすねえ…

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【追加雑学①】「二枚目半」・「二枚目気取りの三枚目」もある

二枚目はイケメン、三枚目は面白い人、四枚目は何?に関する雑学

二枚目・三枚目はもはやおなじみだが、「二枚目半」「二枚目気取りの三枚目」という、ちょっと変わった表現もあるぞ。

二枚目半といわれると「もうちょっとでイケメンなんだけどなぁ…。なんか惜しいんだよなぁ…」みたいな想像をしてしまうが、そうではない。

二枚目半は「二枚目も三枚目も両方いけちゃう」という意味で、要はイケメンかつギャグも冴えてるみたいな人のことである。

信長さん
一番モテるタイプだな…つまり俺。
秀吉くん
………。

一方、二枚目気取りの三枚目は、もう言葉のまんまだ。どう見ても三枚目なのに、自分はカッコイイと思っている人のことである。ちょっとヒドイ言い方をしてしまえば、不細工なナルシストだ。

個人的に、こういう人は残念に見えて一番おいしい。だって自分では気づいてないんだから幸せ者だし…見ている側はおもしろい。

【追加雑学②】歌舞伎が男性だけのものになったのは?

もう気付いている読者もいるかもしれないが、二枚目・三枚目という言葉が男性にのみ使われるのは、男の世界である歌舞伎がルーツだからだ。

しかし…歌舞伎は江戸時代においては、庶民が楽しむ舞台だったんでしょ? 綺麗な女の人とか出てきたほうが、絶対観てる人も盛り上がるだろ…などと思ってしまう。

そう、歌舞伎が出来た当初は、女性も歌舞伎を演じていた。しかし江戸幕府はこれを「女性のやるもんじゃない!」と言って禁止したのである。

出雲阿国(いずものおくに)の影響がスゴい

そもそも歌舞伎は、1600年ごろのこと、京都・北野天満宮などで踊りを披露していた女芸人・出雲阿国(いずものおくに)という人から始まったものだ。

阿国の踊りは、女の人なのに男のような格好をしたり、荒々しい言葉を使ったりすることから「かぶき踊」と呼ばれるようになり(奇妙な振る舞いをすることを「かぶく」という)、そこから発展して歌舞伎が生まれた。

当時は多くの女性が阿国に憧れたが、それすなわち、そこかしこに男のような格好をしたり、荒々しい言葉を使ったりする女性があふれるということだ。

江戸幕府からしてみれば、「おいおい、勘弁してくれよ…」という感じである。こうして1629年、風紀を乱すという理由で女性が歌舞伎を演じることが禁止されたのだ。

そこから歌舞伎は男性だけで演じるのが伝統になり、現代へと続いているのである。

そのため、女形(おんながた)という言葉があるように、歌舞伎では男性が女性役を演じる。これも歌舞伎が女人禁制となったからこその文化なのだ。

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以下の動画は「桜姫東文章」という演目の、片岡孝夫(現・仁左衛門)演じる権助・坂東玉三郎演じる桜姫のシーンである。

坂東玉三郎は昭和歌舞伎の女形レジェンドで、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場でも、舞踊を演じたほどの人物である。男性にしてしなやかなその動きは世界が認めるところなのだ。

秀吉くん
まさに伝統芸能のスゴさっす…!

「二枚目」の雑学まとめ

二枚目、三枚目は歌舞伎用語だったという雑学

1937年(昭和12年)の歌舞伎座

今回は歌舞伎をルーツにする「二枚目」という言葉の雑学をお届けした!

現代でも十分に通じるその言葉の意味に、江戸時代の歌舞伎がどれだけ庶民にとって身近なものだったかを感じさせられる。

その伝統を代々受け継いできた現代の歌舞伎は、日本人として一度は観ておきたいものでもある。難しいイメージもあるかもしれないが、生で観るとその迫力に圧倒されるはずだ!

信長さん
大人としては、一度は見に行っておくべきだな。
秀吉くん
たしかに!たまには日本の伝統に触れるのもいいっすよね!

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