全国各地の郷土色が豊かに出る伝統料理「お雑煮」。正月は母の作ったお雑煮を食べるのが楽しみだったが、我が家は特にこだわりがなかったような気がする。餅は買ってきたパックの切り餅に、すまし汁でゆずの皮が浮いていた。
何気なく調べてみると、衝撃的な具を発見してしまった。お雑煮に、あんこ餅。間違ってもおしるこやぜんざいではない。あの正月のお雑煮に、甘いあんこ餅を具として入れる県が存在するのである! 今回はそんな驚きの雑学を紹介しよう!
【食べ物雑学】お雑煮の具は全国さまざまだが、甘いあんこ餅が入ったお雑煮がある
【雑学解説】あくまで食事の位置づけ。香川県民にとっては常識
おしるこなら分かる。しかし、香川県民にとって、正月のお雑煮は普通に食事の位置づけだ。あんこ餅はおやつではなく、あくまでお雑煮の具として入っているのだそう。
一緒に入っている具は普通だ。大根やニンジンなどの野菜に、汁は白みそ仕立て。ニンジンのオレンジ色が目にまぶしい。
ホウレンソウや青のりなどの青味が上に乗ると、見た目はまるでホワイトシチューのようである。作っている動画を見ていると、食べてみたくなってしまう。
白味噌は赤味噌やすまし汁に比べてとろりと甘い仕上がりになるが、出汁は普通にかつお節や昆布だそう。京都や大阪などに多い、関西風のお雑煮だ。ただ、具がかなり個性的というだけで…。
味わった人の感想によると、甘しょっぱさがクセになり、想像以上においしいらしい。香川の人にとっては常識のあんこ餅雑煮、一度食べると病みつきになるかもしれない。
高級なお砂糖を役人にバレないように食べたことが始まり!?
実は香川県、特産品に「和三盆糖」がある。和菓子に使われる高級な砂糖だが、その昔は藩に納めるための献上品だった。
大っぴらに献上品を食べるわけにいかないが、正月くらいはとびきり贅沢したい…。そこで生まれたのがあんこ餅雑煮だったようだ。
和三盆を使って炊いたあんこを餅にくるんで藩の役人にバレないようにし、お雑煮の具としてこっそりいただく。そんな庶民の贅沢からうまれたお雑煮なのである。
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【追加雑学①】あなたの実家は角餅?丸餅?焼き餅派も
香川県のあんこ餅雑煮は、あんこを中に包んだ大福のようなものなので、丸餅である。このお餅の形にも郷土色が出るらしい。
角餅
関東から北はほとんどが角餅だ。これは江戸時代に人口が急増した際、つきたての餅を大きく伸ばしただけののし餅を、一気に四角く切り分けた方がたくさんの餅を生産できる! …という、せっかちな江戸っ子気質が広まったものらしい。
角餅が入る雑煮はすっきりしたすまし汁仕立てが多いようだ。
丸餅
関西から南は丸餅が多いようである。角餅はほとんどがすまし汁仕立てであるのに対し、関西は白みそ・小豆汁・すまし汁とその地域によって、またさまざまなようだ。
焼き餅
地域によっては餅を一度こんがりと焼いた焼き餅を使う地域もある。角餅は圧倒的に焼く地域が多く、焼かないのは富山県や三重県。
対する丸餅は、同じ関西でも京都と大阪は焼かない、奈良や大阪の河内地方では焼く…と混在している。九州でも鹿児島と福岡は焼かない、熊本と宮崎は焼くようだ。
実にさまざまなタイプのお雑煮が存在する。結婚して他県に嫁いだ人のお雑煮文化が混ざったりするのも面白い。
【追加雑学②】いくらに海苔、焼きアナゴ。中にはきな粉をつけて食べる県も
あんこ餅には驚いたが、それ以外でも個性的な具のお雑煮がたくさんある。
たとえば北海道は、新鮮な魚の切り身を具にして、最後のトッピングは生いくら。なぜか新潟にも生いくらの雑煮の文化が伝わっている。両者ともに焼いた角餅を使うようだ。
島根県の川沿いでは、川魚である干し鮎で出汁をとり、日本酒で戻した岩海苔をのせた個性的なお雑煮がある。
また、お雑煮に入っている餅の味つけのため、別椀でつけダレがついてくる地域もある。奈良ではきな粉、岩手県宮古地方では甘いくるみダレだ。焼いた丸餅を取り出してきな粉やタレにつけて食べるそう。
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雑学まとめ
今回の雑学はいかがだっただろうか。調べてみて驚いたのだが、お雑煮は真の「ご当地グルメ」。県によって大まかなスタイルは決まっているが、家族の数だけ具の組み合わせが存在するのだろう。
たまには正月以外にもお雑煮を楽しむ日があってもいいかもしれない。出身地の違う人どうし、地元のお雑煮を作って食べ比べるのだ。筆者としては、あんこ餅雑煮はぜひ一度食べてみたいものである。