世界の国々の中でも、日本は結婚も離婚も簡単な国だといわれている。
この国では、紙切れ1枚で家族になることやそれを解消することができるが、世界を見渡してみると、それほど楽に結婚や離婚ができない国があるのだ。
今回は、筆者が暮らすイタリアの離婚制度についての雑学をご紹介したいと思う。
【世界雑学】イタリアの離婚制度は日本と全然違う
【雑学解説】イタリアでは裁判を起こさないと離婚できない
日本ではお互いの同意があれば、裁判所などの手続きを必要としない協議離婚ができる。今の日本の離婚は、この協議離婚が全体の9割程度を占めるという。
しかし、イタリアで離婚をする際は、調停離婚一択である。さらに、まず一定期間別居をするという条件が必須である。
別居期間は最短で6か月。これは夫婦の両方の同意がある場合だ。もしどちらか片方が離婚に同意しない場合、1年間別居しなければならない。
イタリア人にこの理由を聞いてみたところ、これは妻の妊娠の可能性を確認するためや、「わしらホンマに離婚したいんやろうか?」と夫婦に考えさせる猶予期間じゃないか? と返答された。
この別居期間を経たあとにやっと弁護士を立てて、裁判所に離婚の申し立てをすることができる。しかし、別居や弁護士費用など、ただでさえ精神的に消耗が多い離婚で金銭的な負担もプラスされるのは、いろいろと辛いものがあることだろう。
さらに、教会で神に誓う宗教婚を行った場合、一度離婚をすると再び教会では結婚ができないらしい。したがって今のイタリアでは、市役所内で結婚式を挙げる民事的な結婚が主流なのだ。
イタリアではもともと離婚制度がなかった
別居期間が必要だったり、裁判所に申し立てをしないといけなかったり、イタリアの離婚はめんどくさいが、それでも離婚ができるだけマシである。
実は、そもそもイタリアでは、離婚ができなかったのだ!
驚くべきことに、1970年まではイタリアでは離婚は罪なことと考えられており、認められていなかった(ちなみに、当時は中絶も罪なので、禁止されていた)。この理由は、この国の主な宗教がカトリックであることが関係している。
カトリックでは、結婚というものは一生にわたる神聖な出来事と考えられている。なので、一度相手と婚姻関係を結べば、その人と死ぬまで添い遂げなければならないのだ。
宗教婚をした場合に教会で再婚ができないのは、ここに理由がある。
神様からすれば、「あんさん、数年前にワイの前で永遠の愛誓いましたやん、なんで新しいパートナー連れてきてはりますのん?! 神様裏切ったらあきまへんで!」ということなのだ。
もちろん、結婚は軽々しくするべきものではない。しかし、長い人生では、様々な問題が発生して夫婦関係をつづけることが難しくなることだってある。
個人の自由を重んじる現代社会では、離婚も自由に行ってよいはずである。そこで、イタリアも離婚という制度が誕生し、その条件もだんだん緩和されていっている。
イタリアで離婚が可能になった当初から1897年までは、5年間別居しなければならなかった。その後2015年までは別居期間が3年で離婚できることになり、それ以降は最低半年の別居で離婚できるようになったのだ。
もしかすると、そのうち別居期間なしで離婚ができるようになる日が来るのかもしれない。
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【追加雑学】実録!イタリア人の夫と日本人の妻の離婚のケース
さて、今までは、イタリア国籍をもった人間同士の離婚の条件をご紹介してきた。
それでは、国際離婚の場合はいったいどうなのであろうか? ここで、実際に国際離婚した筆者の知人のケースを見てみよう。
結婚後1年、イタリアに住むイタリア人夫と日本人妻のカップルは、話し合いの末に離婚することにした。どちらかが異国で暮らさなければならない国際結婚は、けっこうハードなものである。
この夫婦の場合、別居期間なしでまず日本の市役所に離婚届を提出した。日本人同士の離婚のように、日本国内では裁判所を通さない協議離婚が行える。
しかし、その後が問題である。日本とイタリアの両方で婚姻届を出しているので、イタリアでも離婚の手続きをしなければならない。
知人によると、先に日本で離婚の手続きを済ませてしまえば、イタリアでの離婚は比較的簡単なんだそうだ。裁判所に離婚申立てすることは必要であるが、別居期間が必要ないらしい。
しかし、この知人夫婦、日本で離婚手続きを済ませて2年ほど経過しており、住まいも別々だが、イタリアでの離婚の手続きはまだしていない。
イタリア人夫の方は「離婚後、酷い鬱に襲われて、離婚手続きのことをすっかり忘れていた」と言っている。一方の日本人妻の方は、「私は日本ではシングルに戻っているし、イタリアでのステータスはどうでもいい」と実にサバサバとしている。
ちなみに、離婚を切り出したのは、この夫の方なんだそうだ。しかし、このイタリア人夫は自分から妻に見切りをつけたものの、まだ元嫁のことを引きずっているようで、いまだに鬱状態が続いており、ちょっと可哀想ではある。離婚する際は、本当にそれでいいのかしっかりと考えよう!
「イタリアの離婚」の雑学まとめ
今回の雑学はいかがだっただろうか。イタリアでは、一定期間別居をしたうえで裁判所に申し立てをしないと、離婚ができない。また、教会で結婚式を挙げる宗教婚を行った場合、再び教会で式を挙げることはできない。
イタリアでは結婚をしない事実婚カップルが多いらしいが、この離婚のわずらわしさもその原因の一つといわれている。筆者の周りの日本人の知人たちも数人、このイタリア人の頑固なまでの結婚イヤイヤ病のせいで、涙ながら帰国していった。
この記事を読んでいる方の中にも、国際恋愛や国際結婚をしている方もいることだろう。いろいろな事情があるだろうが、パートナーとの雲行きが悪くなってきたときには、まずしっかりと話し合い、お互い納得のうえで最終決断を下してほしい。
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