結婚式にはいろいろな形がある。一般的には結納→入籍→結婚式というところか。しかし地方には、結婚式の挙げ方に独特なしきたりがあるところも多い。
石川県の能登地方では、なんと花嫁の歩く先を住民が縄で通せんぼして邪魔をするというものがあるらしい。邪魔をする? これまた人聞きの悪い…。
道に細いロープを張って、歩行者や自転車に乗っている人を怪我させて…なんていう犯罪はニュースでたまに見るが、そんな物騒なことをおめでたい席でするとは考えられないし。
いったいどういうことなのか、どういう意味で邪魔をしているのか、今回はこの雑学についてご紹介しよう。
【面白い雑学】石川県の結婚式の風習「縄張り」とは?
【雑学解説】結婚式の風習「縄張り」にはどんな意味がある?
能登地方での結婚式。ここには昔ながらのしきたりがある。
「縄張り」といって、花婿と花嫁が町内を練り歩くときに、地元の人たちが道路に縄を張って通せんぼをするというものだ。通せんぼと聞くと、部外者排除!? 結婚を祝福していない!? なんて思ってしまいそうだが、そうじゃない。
お祝いの気持ちがあるからこそのしきたりなのだ。
花嫁が花婿の家に行き、嫁入りの儀式を一通り終わらせると、今度は花婿・花嫁とその家族・親族が町の中を練り歩く。地元の人へのお披露目のようなものだ。
そこで地元の人は、道の両端に立って紅白に編まれた細い縄を持ち、歩いてくる花婿や花嫁たちの前にその縄を張るという。縄を張られたら、仲人がご祝儀を差し出して縄を解いてもらうのだ。
「縄張り」に込められた願いとは?【動画】
なぜこの「縄張り」というしきたりになったかというと、縄を困難という意味で捉え、結婚した2人がともに困難を乗り越えていけるように、という願いが込められているという。
また、縄を解きながら町の中を進んでいくことで、地元の人に認めてもらい、嫁としてその地域に仲間入りさせてもらうという意味もあるらしい。
町内の人を巻き込んでの結婚の儀式。大掛かりで堅苦しいと思う反面、たくさんの人に祝福されている実感も感じられる、めでたい行事だ。
ちなみに縄を解いてもらうために仲人が渡すご祝儀は、子供は5円玉の入った祝儀袋・大人だと饅頭やお酒、なんてこともあるらしい。
では実際どんな感じで縄張りがされているのか、動画で紹介しよう。
やばい…。なんかちょっと感動してしまった…。地域の人たちも、この日を楽しみにしていたんだろうなぁというのが伝わる動画だ。
花嫁さん! おめでとう!
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【追加雑学①】昔ながらのしきたりが残る能登の結婚式
能登の「縄張り」は、結婚当日の最後に町の人も一緒になっておこなわれるものだが、その前の、花嫁宅・花婿宅での結婚の儀式にもしきたりがある。
ざっと説明しよう。
結婚当日、花嫁の家では…
花婿の兄弟や親戚が「迎え人(むかえど)」として、酒樽と魚を持って花嫁を迎えにいく。酒樽には鶴の水引を付け、魚は背合わせにした2匹の鯛だ。
花婿側の迎え人が持ってきた酒樽と魚は花嫁の家で、酒樽に付けた鶴の水引を亀の水引に、魚の鯛を背合わせから腹合わせに替えられる。
そして花嫁宅での儀式が終わったら、今度は花嫁の親代(おやしろ)がこの酒樽と魚を持って花婿の家へ向かうという手順だ。
花嫁の親族と花婿の迎え人のあいさつが終わると部屋へ通され、昆布茶か桜茶が出される。そしてその後花嫁とその両親が、迎え人にお迎えの感謝の気持ちを伝える。
仏壇参りをして先祖に結婚の報告をしたら、両親への感謝を伝え、あいさつする。地域の人にもあいさつを済ませたら、いよいよ花婿の家へ出発。昔は花嫁に付き添うのは親代だったため、両親が花婿の家へ行くことはなくここでお別れだったが、最近は両親が付き添うことが多い。
花嫁が花婿の家に到着、いよいよ嫁入り
近迎え(ちかむかえ)と呼ばれる人が花嫁の到着を玄関で待ち、花嫁が到着したら、合わせ水の儀式がおこなわれる。
これは、「両家の風習が1つになりますように」との思いが込められていて、両家から持ちよられた水を杯に入れ、花嫁が飲み干すというもの。そして飲んだあとの杯は、「二度と戻らない」という意味から、そのまま落として割ってしまうのだ。
合わせ水の儀式が終わると、花嫁と親代(または両親)があいさつし、水引を替えた酒樽と合わせを替えた鯛を花婿側へ渡す。両家のあいさつのあと、生家の家紋が入った花嫁のれんをくぐり、仏間で花婿の先祖に嫁入りの報告。
…とまぁこれが能登地方で古くから伝わる結婚の儀式である。フゥ。何もしていないのに肩こってきた…。
こういう古いしきたりでの結婚式を見ていつも思うのは、結婚っていうのはやはり家と家とのつながり、そして地元の人との関わりなんだなぁということ。堅苦しいけれど、こういうしきたりはいつまでも受け継がれてほしい。
【追加雑学②】親から子への思いを込めて作る「花嫁のれん」
花婿の家の、仏間の前に掛けられる花嫁のれん。これは、花嫁の両親がこの日のためだけに作る、世界にたった1枚しかないものだ。家紋以外に、両親の想いを込めた柄がほどこされる。
娘との今までの思い出を巡らせつつ、これで自分の娘ではなくなる、よそ様の家の者になる…というさみしさを抱えながら作り上げる花嫁のれん。これを作っているあいだは、娘が自分の手を離れるという覚悟を決める時間でもあるのだろう。
しかし、花嫁のれんで覚悟を決めるのは両親だけではない。花嫁もだ。
花婿の家で花嫁のれんが掛けられているのは仏間の入り口。清めの場所である仏間を嫁ぎ先、居間を実家ととらえ、その2つの空間を仕切る花嫁のれんをくぐったらもう後戻りはできないという、花嫁の覚悟を決めるものでもあるのだ。
「結婚式の風習」の雑学まとめ
石川県能登地方に伝わる「縄張り」という行事、そして結婚式のしきたりについての雑学を紹介したが、能登だけでなく、全国でもまだこういった古くからのしきたりに沿った結婚式が行われているところも多い。
それぞれに決まった作法があるから、花婿も花嫁も当日は緊張がハンパないんだろうなぁ…。でもこうして家族や親族、地域の人からたくさんの祝福があるというのは幸せなことだ。
「どうする? 今日婚姻届書いちゃう?」なんてノリで入籍した私としては、その堅苦しいしきたりですら少々羨ましい。
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