美空ひばり(歌手)・羽生善治(将棋棋士)・吉田沙保里(女子レスリング)・なでしこジャパン(女子サッカー)。これらの人物・団体に共通することは何かわかるだろうか?
正解は、国民栄誉賞の受賞者。国民栄誉賞とは、「広く国民に敬愛され、社会に明るい希望を与えることに顕著な業績があったもの」に与えられるものであり、上記のメンバーが選ばれているのは納得いくものだ。
そして、「国民」栄誉賞というだけあって、もちろん日本人だけが受賞できる…わけではないのである。
今回の雑学では、国民栄誉賞の由来なども含めて、実際に日本国籍以外の人物が受賞したことはあるのかについて解説していこうと思う。
【生活雑学】国民栄誉賞は日本人でなくても受賞できる
【雑学解説】国民栄誉賞の受賞資格とは?
そもそも、国民栄誉賞とは、1977年(昭和52年)に当時の総理大臣・福田赳夫(ふくだたけお)によって創設されたもの。
福田赳夫は、当時、本塁打の世界記録を樹立したプロ野球選手・王貞治の栄誉を称えようと考えていた。
しかし、1966年(昭和41年)に創設された内閣総理大臣顕彰は、その対象が「学術・文化の振興」など6項目に貢献した者に限定されており、スポーツ選手は対象に入っていなかったのだ。
そこで、スポーツ選手をはじめとして幅広い対象を表彰できる賞を作ろう…と考えて生まれたのが「国民栄誉賞」である。このような経緯もあるので、国民栄誉賞の第1号受賞者が王貞治なのは当然だろう。
そして、王貞治は中華民国国籍の父と日本人の母とのあいだに生まれたハーフであり、現在もなお中華民国国籍である。つまり、国民栄誉賞は最初から日本国籍ではない人物に授与されていたのだ!
たしかに、国民栄誉賞表彰規程には「日本人に限る」と規定はないが、第1号から日本人ではないのはビックリである。
おすすめ記事
-
逆境を糧に!王貞治の一本足打法はスランプから生まれた【世界のホームラン王】
続きを見る
王貞治以外に外国籍の受賞者はいるのか?
さて、ここで気になるのは、国民栄誉賞第1号の王貞治以外に、外国籍の受賞者はいるのか? だろう。結論からいうと、昭和と平成に国民栄誉賞を授与されたのは、王貞治以外はすべて日本人である。
そのなかで、ちょっと特殊な経歴なのが、2013年の死去後に国民栄誉賞を授与された大相撲の元横綱・大鵬だ。実は、大鵬はロシア人の父と日本人の母とのあいだのハーフである。
第2次世界大戦後の混乱のなか、母親と2人で樺太から北海道へ引き揚げてきた大鵬。樺太は現在ロシア領であるが、大鵬が生まれた当時は樺太は日本領だったため、日本国籍を有している。
ちなみに、大鵬は「イワン・ボリシコ」というロシア名をもっており、場合によっては史上初の外国人横綱になっていた可能性もあった。
昭和時代には、「巨人・大鵬・卵焼き」の3つが子どもに人気があるとされていたが、そのなかの2人(王貞治は巨人所属)が国民栄誉賞を授与されているのは、さすがである。
スポンサーリンク
【追加雑学】国民栄誉賞を辞退している人は誰?
一般的に名誉とされる国民栄誉賞だが、候補に挙がりながらも受賞を辞退した人物もいる。ここでは、あえて国民栄誉賞を辞退した人物を紹介したい。
福本豊(プロ野球選手)
1983年(昭和58年)に、盗塁の世界記録を樹立したプロ野球の福本豊は、当時の中曽根内閣から国民栄誉賞を打診されたが、「受賞したら飲み屋にもいけなくなる」との理由で辞退したと報道された。
しかし、この理由は一般向けに脚色されたものであり、本当は「そんなものもらったら、立ち小便もできなくなる」と語っていたらしい。名誉よりも自分らしさを選んだ発言で、福本豊の人柄をよく表している。
古関裕而(作曲家)
「栄冠は君に輝く」など、数多くの名曲を手掛けた作曲家・古関裕而(こせきゆうじ)は、1989年に本人が死去したのちに受賞を打診されている。
しかし、遺族が「元気に活動しているときならともかく、亡くなったあとに授与することに意味があるのか」と反発し、辞退したそうだ。
ちなみに、巨人の応援歌「闘魂こめて」と阪神の応援歌「六甲おろし」を作曲したのも古関裕而である。
イチロー(プロ野球選手)
メジャーリーグで活躍し、日本野球界のレジェンドともいえるイチローも、当然国民栄誉賞を打診されたことがある。しかも、1度ならず3度もだ!
初めて国民栄誉賞を打診されたのは、メジャーリーグへ参戦し、新人王や首位打者などのタイトルを獲得した2001年(平成13年)。このときは、「まだ、年齢が若いから」という理由で辞退している。
2度目の打診は、イチローが年間262本安打のメジャーリーグ新記録を打ち立てた2004年(平成16年)。そのときの辞退理由は「現役で受賞すると、モチベーションが落ちてしまうから」である。
2度目の辞退理由からすると、現役を引退すれば国民栄誉賞を受け入れるのでは…と思うかもしれない。しかし、現役引退直後の2019年に3度目の打診をされた際にも、結局辞退している。3度目の辞退理由については公表されていないが、イチローならではの考えがあるのだろう。
また、4度目も打診されるのでは? 今後の政府とイチローの動向が気になるところだ。
おすすめ記事
-
異次元。"10年連続200本安打"のギネス記録を達成したバッターは?
続きを見る
-
イチローの1995年(4年目)。全ヒット(安打)成績・記録・打率まとめ【動画あり】
続きを見る
雑学まとめ
国民栄誉賞にまつわる雑学をご紹介してきたが、いかがだっただろうか。てっきり、日本人向けの栄誉だと思っていた国民栄誉賞が、最初から日本人じゃない人物に授与されていたとは!
逆にいえば、日本への貢献が認められれば国籍を問わずに授与される可能性がある…ということ。今後、日本で活躍する外国人の方が、その活躍で国民栄誉賞を授与される姿をみたいものだ。