突然だが、筆者はピアノが弾けない。ピアノを使って好きな曲が弾けたら、どんなに面白いだろうと、考えたこともある。同じ様に思う方もいるのではないだろうか。
そんなピアノが弾けない方にも朗報である。どんなにピアノが弾けない素人でも弾ける曲があるとしたら、少し嬉しくはないか? ただし、1音も鳴らさないピアノ曲である。
今回は、誰にでも弾けるかもしれない、弾かないピアノ曲についての雑学を解説していこうと思う。
【面白い雑学】ピアノを弾かないピアノ曲「4分33秒」とは?
【雑学解説】ピアノを1音も鳴らさない「4分33秒」はどんな曲?
その弾かないピアノ曲はアメリカの作曲家である、ジョン・ケージが作曲した「4分33秒」というタイトルの曲だ。全3楽章で構成されており、全てにおいて休みを意味する「TACET」が指示されている。
驚くことに楽譜も存在しており、たしかに中には3楽章全てに「TACET」と書かれているのみである。間違いなく、1音も弾かずに終わる曲である。
演奏者は静かにピアノの前に座り、ピアノは弾かず、4分33秒経ったら静かに退場するのが、この曲の正しい演奏方法だ。
【追加雑学①】「4分33秒」の由来は?
またなぜ、この曲が「4分33秒」という名前になったのか、それはピアノの前に座っていた時間を示している。デイヴィッド・チューダーが実際に、3楽章分ピアノの前に座っていた時間が4分33秒であったことから、このタイトルになったとされている。
実際は奏者の自由な時間で、3楽章分座っていて問題ない。また、ピアノ曲といわれてはいるが、ピアノ以外にも演奏楽器は、ギターやオーケストラでも、楽器は何でも良いとされている。
スポンサーリンク
【追加雑学②】「4分33秒」の最大の目的とは?
さて、実際に4分33秒を演奏している動画を見てみよう。
奏者が現れて、ピアノの蓋を開けるが、彼は演奏をしない。各楽章の合間にストップウォッチの操作と、ピアノの蓋の開け閉めがあるため、区切りはわかるが最後まで一音も弾かず終わった。何もしていないのに、最初と最後の拍手がなんともシュールで、どう反応していいか困ってしまう…。
いったいジョン・ケージは、なぜこのような曲を作ったのか?
ケージは実験的な音楽を作曲することで有名であり、風変わりな音楽を数多く作曲していたことで知られている。あるときケージがハーバード大学で、無音状態を体験しようとしたときに、無音の中にも自然に発する音が存在することに彼は気がついた。
この曲はまさに、シーンとした空間の中で聞こえる音に耳を傾けるための「音楽」なのである。静まり返った状態であると、普段は気にもしない微妙な音でもよく聞こえてくるのだ。これらを聴き、様々なことを感じることで、4分33秒という曲は成り立つのである。
聞いている側はかなり辛いと思われるが…。
動画をもう一度イヤフォンをつけて、再度聴いてみて欲しい。どんな音が聞こえるか、皆様も体験してみよう。
【追加雑学③】「4分33秒」よりも前に無音の音楽が存在していた?
実は4分33秒よりも以前に、無音の音楽は存在している。
たとえば、イタリアの作曲家のマルコ・ファロッシは、音符や休符を使い楽譜に顔などを描くシリーズの作品を制作しており、その中に休符のみの無音の音楽が存在する。
また、フランスのアルフォンス・アレーという人物が作った曲に、「耳の不自由なある偉人の葬儀のために作曲された葬送行進曲」という長いタイトルの曲があるが、楽譜自体は何も書かれていない。実は特に何も意味もない、という作品だ。
このように、無音の曲は存在していたが、ケージの曲のように、無音の中に意味を見出す意図を持った曲は無かった。理論的に無音の曲に意味をもたらしたジョン・ケージ…なんて凄い人なんだ…。
「ピアノを弾かないピアノ曲」の雑学まとめ
ピアノを弾かないピアノ曲「4分33秒」は本当に存在した。しかも、理由もなんとなく格好良く聞こえる…しかしこれを音楽として認めるかどうかは、人それぞれであるとは思うが…。
無音の中でひとりボーッとしていると、様々な音が聞こえてくる。そこから人の生活を想像したり、いろいろなことに思いを馳せることもある。普段見落としがちなことに気を向けることも、時には大事なことなのだろうと思った。
ちなみに筆者はこの雑学記事を書いている現在、耳に入ってくる音は車の走る音と、キーボードの音のみである。やっぱり何だか寂しい…。
おすすめ記事
-
ドイツの教会で演奏されている曲は終了まで639年かかる【動画】
続きを見る