国民的アニメ『ドラえもん』の声優といえば、やっぱり大山のぶ代さん! …いや、若い人たちは水田わさびさんのほうが馴染みがあるのか? どう答えるかである程度の年齢がわかってしまう、ある意味恐ろしい質問だ…。
そして…実はドラえもんの声を担当した有名声優はもうひとりいる。
え…? 大山さんと水田さん以外聞いたことないぞ? と思う人も多いだろう。ただ、その名前を聞けば、逆に今まで知らなかったことを不思議に思うはずだ。そう、ドラえもんを演じたことのあるもうひとりの声優とは…
『ドラゴンボール』の孫悟空でお馴染み、御年82歳のでぇベテラン・野沢雅子さんだ!
ええー! マジでなんで話題にならないの!? となるが、これにもいろいろ事情がある。今回はそんな野沢雅子さんとドラえもんに関する雑学を紹介しよう。
【サブカル雑学】悟空役の声優・野沢雅子はドラえもんを演じたことがある
【雑学解説】野沢雅子が演じた「日テレ版ドラえもん」とは…?
まずアニメのドラえもんには、制作されたものが歴代で3作品ある。それぞれドラえもんの声を担当した声優と、放送期間は以下の通りだ。
- 1作目…1973年(富田耕生/野沢雅子)
- 2作目…1979~2005年(大山のぶ代)
- 3作目…2005~現在(水田わさび)
このうち多くの人が知っているドラえもんは2作目・3作目。俗にいう「テレ朝版」というシリーズだ。
このシリーズが国民的アニメの座を欲しいままにしたことは言うまでもないが、その以前にも、1973年に半年間だけ放送されていた1作目「日テレ版」が存在するのだ。この作品でドラえもんの声を担当したのが、我らが野沢雅子さんだったのである。
日テレ版ドラえもんは放送期間が短いうえ、再放送もされていないため、テレ朝版に比べて認知度がかなり低い。そのため、多くの人は野沢さんがドラえもん役を担当していたことを知らないのだ。
そしてよく見ていただきたいのは、1作目では野沢さんのほかに富田耕生さんがドラえもんの声を担当していることだ。富田さんはバカボンのパパの声でおなじみの声優さん。野沢さんとはまるっきりキャラが違うけど…ドラえもんがふたりいたのか…?
なんて考えが一瞬頭をよぎったが、さすがにそんなとんでも展開はない。これは前期と後期で声優が入れ替わったことが理由である。
主演声優の交代は高視聴率を狙うため
日テレ版のドラえもんは、新企画が出来るまでの穴埋め的に放送が始まった経緯がある。そのため、もともと期間限定のような感じだったのだが、視聴率が伴えば放送が続けられるかもしれないという条件が掲げられたという。
半年間しか放送していないのに主演声優が交代しているのは、その条件を受けたスタッフが高視聴率を獲得しようと試行錯誤した結果である。
制作サイドとしてはなんとしても放送を続けたい。しかし当時ドラえもんはまだ単行本になっておらず、『小学二年生』などの雑誌を読んでいる一部の子どもにしか認知されていない漫画で、これはなかなかの難題だった。
そこで前期を放送した反響や漫画の連載状況を踏まえ、主演声優の交代という大胆な試みが行われたのだ。
富田耕生から野沢雅子に変更した意図は?
1~13話までの前期に富田さんを起用したのは、スタッフがドラえもんに対し「世話好きなおじさん」のイメージをもっていたからだ。テレ朝版が染み付いているからかもしれないが、ドラえもんがおっさんというのはかなり抵抗がある…。
これが理由というわけではないが、14話~の後期に差し掛かる時期には『小学五年生』『小学六年生』などの高学年向け雑誌での連載がスタートしていたこともあり、制作サイドとしては、今までより視聴者の年齢層を上げたいと考えていたという。
おすすめ記事
-
初代ドラえもんの声優は誰?大山のぶ代でも水田わさびでもなく…?
続きを見る
こうして2代目のドラえもん役として、野沢雅子さんが起用されるにいたったのだ! 以下の動画で歴代のドラえもんの声の比較がされているぞ!
富田版ドラえもんはもはや別のキャラクター…。
一方、野沢版ドラえもんはなんかカワイイ。今となっては悟空のイメージしかない野沢さんだけど、当然ながら雰囲気の違う役もなんのそのだ!
『ド根性ガエル』や『銀河鉄道999』のような少年役はもはやおなじみだが、少し変わった役どころだと『あらいぐまラスカル』のラスカル役なんかも。まさかの動物まで! マジでどんな役でもこなしてみせる!
ちなみに日テレ版ドラえもんは、視聴率こそ悪くなかったものの、結局は制作会社が解散してしまったため打ち切りとなった。これに関しても社長さんが失踪したりなど、いろいろ訳アリだったという話がある…。
スポンサーリンク
【追加雑学①】ドラえもんと野沢雅子の縁は今でも続いている
日テレ版ドラえもんの終了に伴い、主演の座を降りることになった野沢雅子さん。しかしその後もドラえもんと野沢さんの縁は切れず、彼女はテレ朝版にもゲストキャラクターとしてたびたび登場している。
- 1979年…アニメ放送回に少年役で出演
- 1999年…劇場版『ドラえもん のび太の宇宙漂流記』(ログ役)
- 2002年…劇場版『ドラえもん のび太とロボット王国』(クリリンパ役)
- 2012年…劇場版『ドラえもん のび太と奇跡の島~アニマル アドベンチャー~』(のび助/ダッケ役)
特に2012年ののび太と奇跡の島に関しては、物語の鍵となるのび太にそっくりな少年・ダッケを演じたことで話題になったぞ!
ちなみに現在ドラえもん役を演じている水田わさびさんはバリバリのドラゴンボール世代で、野沢さんに憧れて声優を目指したという裏話がある。
これまでも他作品での共演はあったかもしれないが、2012年には晴れてドラえもんの映画で共演できたわけだ。これは感無量だったのではないか!
【追加雑学②】「日テレ版ドラえもん」は、なぜ再放送されないのか?
声優が水田わさびさんに変わった今でも、大山のぶ代さんが演じたドラえもんは再放送されることがある。しかし、野沢さんが演じた1作目に関しては、絶対に再放送されることがない。
どうして…? めっちゃ話題になりそうなのに!
と思うが、これに関しては現在のドラえもんのイメージと、日テレ版が大きく違っているという理由がある。テレビ朝日の関係者が「日テレ版が再放送されると、子どもたちが混乱するから小学館に封印してもらった」と、書籍のなかで語っているのだ。
ん…? なんかこじつけっぽくない? と思ったら、この話にはまだ裏があった。
藤子・F・不二雄先生は日テレ版ドラえもんに対して不満があり、1979年に再放送がされた際、小学館と連名で警告状を送り、放送を止めさせた経緯があるのだ。…ひょっとして、ドラえもんはおっさんではない的なあれか…?
ほんとの理由はこれで、子どもたちが混乱するというのは建前なのかも。
その後、日テレ版は再放送されることはなく、公式資料などで触れられる機会もほとんどない「幻の作品」となっている。
【追加雑学③】「オッス!おら悟空」はマンガでは1度も登場しない。
悟空の決めゼリフといえばやっぱり「オッス! おら悟空」である。お笑い芸人のアイデンティティのネタは「オッス! おら野沢雅子」。野沢さんが大御所すぎるので、見ていて未だにヒヤヒヤする。
しかし…ここでとっても意外な事実が登場する。実はドラゴンボールの原作で、悟空はこのセリフを1度も発していないのだ!
原作の悟空は「オッス」「おら悟空だ」などのセリフは発しているものの、組み合わせて「オッス! おら悟空」と言ったことは1度もない。アニメでも、次回予告のときに口にするだけだ。
実はこの決めゼリフは、野沢さんのアドリブによって生まれたものである。
声優さんは台本にあるセリフ以外に、独自の判断でアドリブを入れることが日常茶飯事なのだ。「オッス! おら悟空」もそのうちのひとつで、これをスタッフが気に入ったため、次回予告の決めゼリフに定着したのだという。
まさにキャラクターに息が吹き込まれていくというか…こういう原作にない要素が加わっていくのって、それこそアニメ化の醍醐味じゃないか。ぴったりのセリフをその場で思いつく声優さんってやっぱりすごい!
またこちらも有名な「こんにちは、ぼく、ドラえもんです」というセリフも、大山のぶ代さんのアドリブである。もうこのふたりに関しては、悟空やドラえもんが乗り移っているとしか思えない…。
おすすめ記事
-
アニメ→原作へ!"名探偵コナン"の高木刑事誕生は声優のアドリブから
続きを見る
「野沢雅子のドラえもん」の雑学まとめ
今回は野沢雅子さんとドラえもんに関する雑学をお届けした。
まさかあの野沢さんがドラえもんの声をやっていたなんて…、今まで知らなかったことに驚かされるが、それほど日テレ版ドラえもんの事情は複雑で、世に出回っていないということか…。
しかし今回の雑学で、野沢さんがどんな役でも演じられる名優であることを再確認できた! 悟空はもちろんだが、今後もいろんな役でお茶の間を湧かせてくれることだろう。