氷の妖精・流氷の天使・sea angel…などなど、神秘的な異名で呼ばれるクリオネ。
たしかに透き通った身体で翼をヒラヒラさせ、海のなかを漂うその姿は天使のようだ。ネコ耳を付けたかのような頭もまたあざとい…しかし…!
そんな愛らしい容姿のクリオネは、立派な肉食動物である。そしてその食事シーンがとってもグロいのだ。…綺麗なものにはトゲがあるとか、もうそんなレベルじゃない。
今回はそんなクリオネの雑学をご紹介しよう!
【面白い雑学】クリオネの食事シーンがキモすぎるんですが…
【雑学解説】クリオネは肉食。食事のシーンがめっちゃ怖い
クリオネの正式名称は「ハダカカメガイ」。主に北極海などの冷たい海に生息し、日本でも北海道などに流氷と一緒にやってくることがある。
名前の通り、意外なことにクリオネは巻貝の一種で、その証拠に幼い頃は殻をもっている。そういわれてみると貝の中身っぽく見えなくもない気が…。
その理由は、殻をもっている期間がたった2週間しかないからだ。クリオネ自体が珍しいのに、殻をもっている期間がわずかだから、どおりで見たこともないはずである。
では、なくなった殻はどこかに脱ぎ捨てるのかというと、退化して身体の一部になる。そのためその辺に転がっているなんてこともない。貝のアイデンティティをほとんど捨てた貝、それがクリオネである。
クリオネの殻が退化したあとは、繊毛をもつ「多輪形幼生」という形態になり、主に植物性のプランクトンを食べて成長する。そう、ここまでの食事はほかの貝類と同じだ。
問題は、そこから約1年かけて、あの天使のような姿に成長したあとである。
肉食に変化するクリオネ
彼らは成長すると肉食に変化し、好物のミジンウキマイマイしか食べなくなる。
ミジンウキマイマイというのは、クリオネと同じ浮遊性の巻貝の一種。貝殻の上部からヒレをちょこんと出して、パタパタと泳ぐ姿がカワイイヤツだ。
同じ巻貝の一種ということは…そう、雑に言ってしまえば共食いである。
以下にクリオネの捕食シーンの動画を紹介しておこう。
ミジンウキマイマイを目の前にすると、ネコ耳のような頭は一気にその様相を変え、6本の触手を丸出しにした悪魔のような姿に…。
必死に逃げるミジンウキマイマイを、地の底…いや、海の底まで追い回していくような勢いである。これは恐ろしい…。
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クリオネの食事シーン…えげつないのは見た目だけじゃない
頭がパックリ割れて登場する6本の触手は「バッカルコーン」と呼ばれる。なんか必殺技みたいな名前だ。
バッカルコーンで獲物をガッチリと捕まえたあとは、触手の内側にあるフックのような器官を駆使して、ミジンウキマイマイを殻からグリグリと引きずり出す。引きずり出したあとは、6時間ほどもかけてゆっくりとその養分を吸い出すのだとか…。
いや、見た目が恐ろしいだけじゃなくて、けっこうえげつない食べ方するのね。食事に時間がかかるから、逃げられないためにあんな大げさな触手が必要なわけか…。
悪魔のような食事シーンの理由とは?
ここまでクリオネが必死になって食べるのにも理由があって、実はミジンウキマイマイさん、とっても数の少ない貴重な貝なのだ。そのため、クリオネは生涯で1~2回ほどしか食事をしない。
フンとして排出される量が極端に少なく、ほとんどを栄養として消化する生態をもっているから、それだけの食事でも大丈夫なのだとか。
「実は目に見えないプランクトンをけっこう食べてるから平気なんだよ」という説もあるが、それも定かではなく、確認されている限りでは、成体のエサはこのミジンウキマイマイだけである。
その1回の食事で2~3年は生きなければいけないのだから、そりゃあ必死にもなるわけだ。
ということは…悪魔のような姿になるのは数年に一度の超レアシーンということか。食事が限られているのは気の毒だが、ちょっと安心した。
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【追加雑学①】大阪のスーパーでクリオネが買える!
なかなか手に入りにくそうというか、そもそも飼えるものだというイメージもあんまりないクリオネ。
しかしある場所に行けば案外簡単に買える。大阪府を中心に展開しているスーパーマーケット・スーパー玉出だ! 安いんだよね~玉出。
スーパー玉出では、毎年冬にクリオネの瓶詰を販売するのが恒例行事である。まさかスーパーで手に入るとは…。
親が玉出でクリオネ買ってきた笑 pic.twitter.com/bdoxrbs8KV
— 和田知樹 (@Tomoki44119751W) February 10, 2016
って…おい! 思いっきり鮮魚コーナーのラベルやんけ! しかもレシート刺身って…食用で売ってるの…? 絶対食べたくないんだけど…。
と、思ったらお店の人いわく、あくまで観賞用として販売しているとのこと。鮮魚のラベルはある種ネタ的な…? ちなみに以下の動画のように、実際に食べた強者もいる。
残念ながら(?)お味のほうはなんだか生臭い感じらしい。というかやっぱり可哀想。
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クリオネは簡単に飼える生き物ではないんです。
このようにクリオネは、スーパーで気軽な感じで売られていたりもするが、やっぱりそんなに簡単に飼える類の生き物ではない。そもそも冷たい海や深海にしか生息していないのだから、水温は摂氏1℃と、常に低く保つ必要がある。
また水流もある程度は必要だが、クリオネのヒレは自分で泳ぐ力が意外に弱く、デリケートで傷つきやすい。そのため水流の加減が難しいという。そもそも流氷の下などに潜んでいるのも、強い水流を避けるためである。
そして一番の問題は、エサとなるミジンウキマイマイだ。そんなに貴重な貝をどうやって用意するのか。水族館のルートでも、入手できる数が限られているというぐらいだぞ…。
このようにクリオネの飼育はとっても難しいため、あまり現実的ではない。飼うなら専門家にしっかり相談したうえで、環境を整えておく必要がある。
「冷蔵庫に入れとくだけでけっこう生きる!」などといわれるが、そんな飼い方では、通常2~3年といわれる寿命より早く死んでしまうだろう。
【追加雑学②】富山湾でクリオネの新種を発見!
これまで世界に4種類いるといわれていたクリオネ。しかし2017年に、5種類目となる新種のクリオネが発見されたぞ! 場所はなんと、日本の富山湾だ。
小中学生向けの海洋教室で、水深700mまで降ろした網を上げたところ、今までに見たことのないクリオネがかかっていたそうだ。以下の動画でその様子が映されている!
いびつな形のクリオネだな…ヒレのようなものもあるにはあるが…天使というよりは、宝石のようなイメージが近い気がする。
なんでもこの新種のクリオネは、日本海の閉鎖された環境が生み出したといわれている。つまり、完全な日本固有種だ。
日本海は、日本列島とユーラシア大陸に挟まれているのと同時に、海峡部と深層部の水深の差が激しく、お椀のような形をしている。そのため水の入れ替わりがあまりなく、300mより深いところは日本海固有の水と呼ばれているのだ。
この日本海固有の水は、氷河期の終わりにかけて日本海に注いだ約8万年前の水。その際に流れ込んで来た固有の生物が進化したものが、今回新種のクリオネとして発見されたのだ。
新種のクリオネには絶滅の危機も…?
こうしてめでたく発見された新種のクリオネだが、実は早くも絶滅が危惧されている。
その理由は水質の酸性化だ。
大気中の二酸化炭素が海に溶けだすことで、海水の酸性化が進んでいるというのはどこの海にだっていえることである。しかし日本海はその閉鎖的な空間ゆえ、酸性化のスピードも他の海より速いという。
酸性化が進めば、水質の変化に弱いミジンウキマイマイはその海では生きられない。となると、クリオネも食べるものがなくなってしまうということだ。
発見されたばかりなのに、早くも絶滅の危機とは…心苦しい話である。なんとか海水の酸性化を食い止める手立てはないのだろうか…?
「クリオネの食事」の雑学まとめ
今回は流氷の天使・クリオネの食事シーンをはじめ、クリオネに関するさまざまな雑学を紹介した。
クリオネはあの可愛らしい見た目と裏腹に、食事シーンが相当えげつない。しかしそのえげつないのも、限られた食料「ミジンウキマイマイ」をしっかり栄養にするための手段である。背に腹は代えられないのだ。
水族館などでエサやりの実演などに出くわしたら、そうとうレアなのでしっかり注目しておこう!
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