この世には常人の想像をはるかに超える変人が存在する。そしてそんな変人の思考があってこそ生み出された、「エクストリームスポーツ」と呼ばれるパフォーマンス競技がある。
今回紹介するのは、そんなエクストリームスポーツの中でも変わり種といえる、自然のなかでアイロンを掛ける競技だ。
「ちょっと待ってくれ。それは本当にスポーツなのか」という疑問はいったん脇に置いておいて…。以下より、「エクストリーム・アイロニング」という競技の雑学に迫っていこう!
【面白い雑学】自然の中でアイロンをかけるという競技がある
【雑学解説】アイロン掛けスポーツ「エクストリーム・アイロニング」とは?
「エクストリームスポーツ」の「エクストリーム(extreme)」とは、直訳すると「過激な~」を意味する。要するに、一般的にはとても考えられないような条件で行う競技の総称と捉えていいだろう。
今回そんなエクストリームスポーツのなかから紹介するのは、自然界のあらゆる場所で、アイロンを掛ける「エクストリーム・アイロニング(Extreme Ironing)」と呼ばれるパフォーマンス競技だ。
ちなみにこのスポーツに興じるプレイヤーのことを、「アイロニスト (ironist)」 と呼ぶ。聞き慣れない響きだが…語尾に「~ニスト」と付けていると、とりあえずかっこいい…感じもする。
このスポーツの醍醐味は、自然界のあらゆる場所でパフォーマンスする刺激性と、アイロンでシワを伸ばしたときに得られる達成感にあるという。競技人口は、欧米を中心におよそ700人程度。まだまだ発展途上のスポーツである。
以下に競技の様子を映した動画を紹介しておこう。
空・山・湖・水中・街中など、シチュエーションは実にさまざまだ。動画には牛の背中でアイロンをかけているシーンもあったが、牛さんが熱くないのか心配である…。
気になるのは、何を競い合うのかという部分だろう。勝敗は以下の3つのポイントによって決まる。
アイロン掛けをした際、きちんとシワが伸びているかを見る「技術点」。いかに他のプレイヤーと違うスタイルでアイロン掛けをおこなうかを見る「芸術点」。いかに早くアイロン掛けを終わらせるかを計る「タイム」の3つだ。
普段やる人ならわかると思うが、綺麗にアイロン掛けをおこなうのは意外に難しい。綺麗さを競い合う発想は出てきてもおかしくはないだろう。
しかしアイロンを掛けるシチュエーションまで競おうとするとは…やはり常人には考えつかない競技である。
スポンサーリンク
「エクストリーム・アイロニング」が成立した背景とは?
エクストリーム・アイロニングは、イギリス人のフィル・ショウという人物が自宅の裏庭で競技を主催したことがルーツだ。自宅での開催という辺り、最初は身内で行うような、ごく小規模なものだったと想像できる。
彼のすごいところは、このスポーツを世界へ広めようとしたところだろう。フィル氏はエクストリーム・アイロニングを普及させるために、世界旅行へ旅立ったのだ。
そしてニュージーランドに立ち寄った際、出会ったドイツ人の旅行者たちと意気投合したことをきっかけに「エクストリーム・アイロニング事務局」(通称 EIB)を設立した。
その後2002年には、初の世界大会がドイツ・ミュンヘンでおこなわれ、エクストリーム・アイロニングは世界各国のメディアに注目される。第1回大会には、オーストラリア・ドイツ・イギリスなど世界10ヶ国から参加者が集まり、全8チームが参加した。
日本国内に目を移すと、2005年に「エクストリーム・アイロニングジャパン(Extreme Ironing Japan)」という活動団体が設立されている。我々日本人にとっても、決して縁遠いスポーツではないのだ。
同団体は競技の魅力を伝えるために、国内のイベント等で精力的にPR活動をおこなっている。2008年には、団体の代表を務める松澤等氏による日本初のエクストリーム・アイロニング本「そこにシワがあるから(早川書房)」も出版された。
ちなみに松澤氏は、アイロン掛けのスペシャリストとして、パナソニックの公式Twitter動画にも登場している。
エクストリーム・アイロニング・ジャパン代表の松澤等氏が、ウェイクボードをしながらのアイロンかけにチャレンジ!※危険ですので絶対にマネしないでください。 http://t.co/VoLfolA9wW https://t.co/uM83oh7jEw
— Panasonic Japan公式 (@Panasonic_cp) October 9, 2015
ウェイクボードをしながらのアイロンがけ…アホなことを真剣にやっちゃう大人はカッコいい。
いかにも常人離れした発想のエクストリーム・アイロニングだが、私たちと同じ日本人である松澤氏の著書なら、競技に魅せられる人たちの感覚も理解しやすいのではないだろうか。
【追加雑学】「エクストリーム・アイロニング」にはさまざまな世界記録がある
「エクストリーム・アイロニング」には、以下のようなにさまざまな世界記録がある。
まず、世界で最も高い場所でおこなわれたアイロン掛けの記録は、アルゼンチンにある、アコンカグアの山頂・標高6959メートルだ。
実際にアイロン掛けをおこなう段階より、登頂することのほうがはるかに大変だろう…。競技にかける情熱がなければ、とうてい達成できない記録である。
次は、世界でもっとも水深の深い場所でおこなわれた記録だ。イギリス人のダイブ・ガールは、エジプト沖にて水深100メートルでのアイロン掛けを行ったという。アイロンは加熱してシワを伸ばすものなのに、水中でどうやって掛けたというのだろう…。
このように、文字通り極限状態の記録があれば、微笑ましい珍記録もある。
2004年には、クリース・ライトニンという人物が、アイロン道具一式を背負いロンドンマラソンに出場(途中、アイロン掛けもおこなった)。4時間8分かけてフルマラソンを完走したのだ。
走る本人はいたって真剣だろうが、大会に参加した周りの選手たちは、なぜアイロン道具一式を携帯しているのか、さぞかし疑問に思ったことだろう。次から次へとよくもまあ、奇異なシチュエーションを思いつくものだ…。
このように「エクストリーム・アイロニング」には、常人の想像を超えるような世界記録が目白押しなのである。
雑学まとめ
今回の雑学の内容に対し、「はたしてエクストリーム・アイロニングはスポーツなのか」と、疑問をもった人もいるだろう。たしかに、この競技をスポーツとするには反対の声があるのも事実だ。
しかし競い合うことにやりがいを感じている人がいる時点で、立派なスポーツだとはいえないだろうか。何より、その魅力を世界に広めようとしたフィル・ショウ氏の行動力には感服させられる。
今後も世界中のアイロニストたちによって、その魅力は多くの人たちに伝えられていくだろう。