筆者が、初めてイタリアを訪れたときの話である。
滞在先のホテルのバスルームには、なぜか便器が2つ…。そのうちの片方の便器は、見慣れた便器と形状が少し違う…。この不思議な便器に疑問をもったものの、わざわざホテルスタッフに尋ねるのも面倒だし、とりあえず見慣れた形の方の便器を使用していた。
そして、それから数年後。筆者はイタリアに留学することとなる。イタリア人家族のお宅にホームステイすることになったのだが、ここでも便器状の物体が2つ設置されていた。
なにげなく「どうして1つのバスルームに、便器が2つもあるんっすか?」と尋ねると、ホストマザーはびっくりした顔をしてこういった。
「これ、片方は『ビデ』よ…」
【世界雑学】イタリアのトイレに常備されている「ビデ」とは?
【雑学解説】イタリアのシャワー室にある、便器のような「ビデ」
イタリアには日本のように風呂に入る習慣がなく、通常はシャワーで体の汚れをサッと洗い流す。そもそも、バスルームに浴槽が設置されていないアパートやホテルも少なくはない。
筆者が日本に住んでいたころは、夏場でも毎日しっかりと入浴していたが、こちらに来てからは毎日軽くシャワーを浴びるだけである。これがけっこうストレスだったりもするが、まだラッキーな方なのかもしれない…。
なんと、他の日本人の知り合いに聞いてみると、ホームステイ先によっては毎日シャワーを浴びると、ホストファミリーに嫌な顔をされるというケースも存在するらしい。場合によると、「シャワーは週3回まで」などと決められてしまうこともあるとのこと。
筆者のホストファミリーも、毎日シャワーを浴びているわけではないようである。もちろんこれは個人差があり、筆者のイタリア人パートナーはほぼ毎日シャワーを使用しているようだ。
「毎日体洗わないって、ちょっと不潔じゃない?」なんて、日本人的感覚だと思ってしまうところだが、イタリア人は用を足した後にはビデを使う。しかも、ビデ専用のソープなんかも売っており、日本人よりも陰部はいつも清潔なのかもしれない。
ちなみに、筆者がホームステイしているアパートのトイレとビデはこんな感じ。右側にあるのがビデ。
一般住宅だろうがホテルだろうが、このように便器の隣にビデが設置されていることが多い。
ただ、一度泊まったホテルではトイレにシャワーが設置されていて、便器にまたがった状態で陰部を洗えるような作りとなっていた。便利なアイディアと思ったが、シャワーの水が床に飛び散り悲惨な状態となってしまったので、このタイプはビデ初心者にはレベルが高いように思う。
ちなみに、イタリアには日本のウォシュレットのような電動の陰部を洗う装置はない。(もしかすると高級マンションやホテルにはあるのかもしれないが、一般人の筆者は見たことも聞いたこともない。)
なので、イタリア人が日本に来ると、ウォシュレットにいたく感動する。
筆者の日本の実家にはウォシュレットがあるのだが、イタリア人パートナーが訪れた際、「日本って普通の家庭でもこんなハイテクなもんあるの? 日本のトイレに住みたいわ…」と驚愕していた。
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【追加雑学①】けっこう古いビデの歴史
さて、ここで、ビデの歴史をご紹介しよう。
ビデの誕生はけっこう古く、17世紀のフランスである。当初は上流階級の寝室に取り付けられており、用を足した後、下半身を洗うための水が溜められた脚付きの木製のタライの形状のものであった。
ちなみにビデという名前の語源は、フランス語で「ポニー」を意味する「bidet」から来ている。それを使用しているときの姿が、乗馬している姿に似ていることが由来なのだという。
そして18世紀になると、寝室に置かれていたビデはバスルームに設置されるようになる。さらに、フランス以外にも、西ヨーロッパや中東、さらにはアメリカへとビデは広がっていく。
イタリアにこのビデが広がったのは、1750年ごろで、イタリア・ナポリの王妃が自室に取り付けたのがきっかけだといわれている。毎日体を洗うという習慣がないこの国で、トイレを済ませるたびに陰部を洗えるこのシステムは画期的だったことであろう。
ところで、このビデ、現在は発祥国のフランスでは普及率が低いらしい。イタリア人がフランスに行った際、「ビデがない!」と驚いてしまったという話もあるのだそうだ。
【追加雑学②】筆者が教わったビデの使用方法
ビデの使い方は、人それぞれ微妙に違ったりするらしい。壁に背を向ける派・壁に正面をむける派・水をビデに貯める派・蛇口から出てくる水をダイレクトに使う派…。
ここでは、筆者がイタリア人パートナーから教わった方法をご紹介しよう。
まず、壁に正面を向く形でビデにまたがる(トイレにまたがるときとは反対を向くことになる)。そして、蛇口をひねり出てきた水を陰部にかける。石鹸で陰部を洗い、泡を水で洗い流し、タオルで水分を拭き取れば完了である。
「イタリアのビデ」の雑学まとめ
今回は、イタリアのバスルームの謎についての雑学を取り上げてみた。イタリアのバスルームには便器のような形状のものが2つ置いてあるが、その片方はビデであり、陰部を清潔にするためのツールである。
しかし、ビデを見慣れていない日本人にとって、「水を飲んでしまった」「頭を洗ってしまった」「便器と思って用を足してしまった」など、いろいろなトラブルを招きやすい存在ともいえる。
もし、海外旅行で滞在先のホテルのバスルームに便器のようなものが2つある場合、少し便器と形状が異なるほうがビデであるということを、頭に入れておいていただきたい。
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