ツボにハマってしまって、息苦しくなるぐらい笑い転げた経験があなたにもあるだろう。
「やめて! 笑い死ぬ!」なんてセリフもよく言ったものだ。しかし…この笑い死ぬという話、実は冗談ではない。笑い死にというのは、実際に起こり得る事象である。
しかも今回取り上げる例では、当事者は自分が考えたギャグで笑い死にしている。これがもし、自分しか笑っていないオヤジギャグだったとしたら、目も当てられないぞ…。
今回はそんな嘘のようで実際に起こり得る「笑い死に」の雑学を紹介しよう!
【面白い雑学】自分のギャグで笑い転げて死んだ人がいる
【雑学解説】喜劇作家ピレモンの死因は「笑い死に」
笑い死にしたという言い伝えがあるのは、古代ギリシャの喜劇作家のピレモンである。紀元前263年のある日のこと、ピレモンは渾身のギャグを思いつくと同時に笑い始め、笑いが止まらなくなってしまった。
そのまま笑い続けて死んでしまったため、思いついたギャグがどんな内容だったかは誰にもわからないという。…非常に気になる。
喜劇作家ということで、ピレモンは笑いのプロだ。とりあえずただのオヤジギャグの線はなくなって良かった。
これは大昔の話ということもあって「なんだ、単なる言い伝えか」という感は否めない。
しかし…笑い死にした人、ピレモンのほかにもけっこういるんだよね…。
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【追加雑学①】笑い死にしている人は意外と多い
歴史を辿ってみると、笑い死にの記録は意外に多く残されている。まずは詳しい記録の残っている最近の事例を細かく見ていこう。
お笑い番組で笑い死に
1975年のこと、イギリスのレンガ積み職人、アレックス・ミッチェルさんはお笑い番組「The Goodies」の「Kung Fu Kapers」というシリーズのコントを観ている最中に笑い死にした。笑い転げた時間は約25分。死因は心不全だった。
「Kung Fu Kapers」はわかりやすく訳すと「カンフーギャング」といったところ。タイトルどおり、カンフーを題材にしたコントだ。道着を着た面々が出てくるだけで、カンフーの捉え方をいろいろ間違っちゃってる感じのやつである。
このうちミッチェルさんのツボにはまったのは、キルト姿のスコットランド人が、バグパイプで悪役と戦うという内容だったという。
…と、読者は思うだろうな、と思って動画をめっちゃ探した私はえらい! 以下は「Kung Fu Kapers」のレビュー動画。5:14~ミッチェルさんを爆笑させたシーンが登場する。
めっちゃスコットランドの民族衣装なのにカンフーっぽい動き。今風の笑いではないが、ツボにはまると抜け出せない感じはなんとなくわかる…。
ちなみにミッチェルさんが亡くなったあと、残された婦人は番組宛てに「主人の最期を楽しいものにしてくれてありがとう」と手紙を送っている。主人を亡くして悲しいはずなのに、起こってしまったことを前向きに捉える姿勢には感心させられる。
コメディ映画で笑い死に
1989年にはデンマークの聴覚学者オレ・ベンツェンさんがコメディ映画『ワンダとダイヤと優しい奴ら』を観て笑い死にしている。
笑い転げている最中の心拍数は1分間に250~500回を記録したという話もあり、これは通常時の5倍に匹敵する回数だ(通常は50~100回)。結果、心臓に負荷をかけ過ぎたベンツェンさんは、心臓発作で亡くなってしまった。
以下は『ワンダとダイヤと優しい奴ら』の予告編だ。本編を観ようと思った人は笑い死にしないよう、要注意である。
寝ながら笑い死に
2003年、タイ・バンコクのアイスクリーム配達ドライバー、ダムノエン・サエン・ウムさんが寝ながら笑いだし、2分間笑い転げた末に死亡した。死因は心不全か窒息。
心配した奥さんが起こそうとしたものの、それも叶わず。死ぬほど笑っても起きないんだから、起こして起きるはずもない。…ていうか、それマジで寝てたの?
歴代の笑い死に
以上は最近の例だが、古いものを辿れば笑い死に案件はけっこう山のように出てくる。
- 紀元前3世紀…古代ギリシャの哲学者クリュシッポス(酔っぱらったロバがイチジクを食べようとするのを見て笑い死に。哲学者にしかわからん笑いのツボ)
- 1410年…カタルーニャ君主国の王マルティン1世(消化不良にコントロール不能の笑いが重なって死亡。…めっちゃ苦しそう)
- 1556年…イタリアの作家ピエトロ・アレティーノ(笑いすぎて窒息死)
- 1660年…スコットランドの貴族トマス・アーカート(チャールズ2世が王位に就いたと聞いて笑い死に)
- 1782年…イギリスのフィッツァー・パート夫人(オペラ鑑賞中に笑いが止まらなくなり、3日後に死亡。3日間笑い続けただと…?)
爆笑の理由がはっきりしていないものもあるが、15世紀以降、だいたい100年に1人ぐらいは笑い死んでいる。
このうち、スコットランドのトマス・アーカートさんの笑いのツボに関しては、多分チャールズ2世に一度イギリスを追い出された経緯があるからではないか。
当時、イギリスは絶対王政への反対勢力によって共和制を実現。同時に王族であるチャールズは亡命生活を余儀なくされている。
しかし新体制を担ったオリバー・クロムウェルが予想に反して独裁政治を行ったため、息子のリチャード・クロムウェルの代でチャールズに王位が戻ることになったのだ。
アーカートさんが「ほら、言わんこっちゃない。なにが共和制だよ」と思ったのか、「いやいや、また絶対王政かよ!」と思って笑ったのかは定かではない。
ちなみに彼はフランスの作家フランソワ・ラブレーの作品を最初に英訳したといわれるほど博学で知られている。有識者のあいだでは、当時の政界の動きが滑稽に見えていたのかも。
…そのせいで笑いすぎて死んじゃうのも滑稽なのは内緒である。
【追加雑学②】笑い過ぎで死んでしまう理由は?
紹介してきた通り、実際に多くの事例があるわけだが、笑い死にしてしまった彼らの体内ではいったいなにが起こっているのだろうか。
考えられる要因は、大きく以下の3つだ。
- 不整脈による心室細動
- 大動脈瘤の破裂
- 呼吸困難による窒息死
みなさんご想像の通り、笑いすぎるといつもより心拍数が上がる。これがあまりにも長時間に渡る場合、危険な場合があるのだ。
異常な心拍数が続く状態を不整脈といい、これが悪化した場合、心室細動を起こし、最悪死に至ることがある。(※心室細動…心臓がけいれんすること)
一方、大動脈瘤というのは、血管の一部がこぶのような形に変形してしまう病気。この病状にある人が急激に血圧を上昇させると変形した部分に血が溜まり、血管が破裂してしまうことがある。いずれにしても笑いすぎて血圧を急激に上昇させることが、身体に負担をかけてしまう場合があるということだ。
窒息死については言うまでもなく、大笑いすると呼吸をコントロールできなくなる。ずっと続けば苦しいし、身体に害があるのも当然の話だ。
なるほど…理屈を並べられると、笑いすぎて死ぬこともあるんだなあと一応は納得できる。でも、やっぱりよっぽど長時間笑い転げない限り、死ぬことはまずあり得ない話である。
笑いは免疫細胞を活性化させるという話もあるので、普通はむしろ長生きの秘訣ともいえる。
…というか、元も子もないことを言えば、こんなことを気にしながら生きているほうが身体に悪い気がする。
「笑い死に」の雑学まとめ
今回は笑い死にの雑学を紹介した。
笑い死にした人たちの記録を辿っても、原因が自分のギャグだという人はピレモン一人だった。同じ死に方をした人たちの中でも、やはり彼は突出した存在なのだ。
頭の中で考えていただけで、実際にギャグを口にしていないのだから、傍から見ればただの思い出し笑いにしか見えない。喜劇作家らしくシュールな死に様である。
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