孔子にソクラテス。どちらも東西それぞれの哲学者の代表ともいえる人物だ。
ところで、この2人に共通点があることはお気づきだろうか? 実は、2人とも生まれ育った時代が離れていないのである。
孔子は紀元前551年生まれと言われていて、ソクラテスは紀元前469年。100年ほどの幅があるのだが、長い人類史においては、ほぼ同時代といっても過言ではない。
そしてこの2人だけではない。東西の名だたる哲学者、ブッダやゾロアスターのような宗教家、アルキメデスのような科学者までが、紀元前500年を中心にした300年前後に活躍している。
この偉人が集中している時代は、枢軸時代と呼ばれているらしい。なんか響きがかっこいい。今回は、そんな枢軸時代についての雑学をご紹介する。
【歴史雑学】歴史的天才が誕生しまくった"枢軸時代"とは?
【雑学解説】宗教も科学も哲学も…天才はみんな枢軸時代
まず、日本から近い国・中国を例に挙げよう。中国では、孔子や老子だけではなく、墨子や孫子といった書士百家の哲学者たちが、紀元前500~200年代に軒並み集中している。
一方、西洋では墨子と同時代に当たるのがソクラテスであり、ソクラテスを中心とした西洋古代哲学の最盛期は、紀元前600年代生まれのタレスを発端にして、プラトンは前427年生まれ、アリストテレスは前384年生まれ……と、東西どちらも原点にして最盛期が同じ時代に集中しているのである!
「西洋哲学は全てプラトンの注釈であり、東洋哲学は全て孔子の注釈である」という言葉があるが、その意味では東西を隔てて哲学は同じ時期に生まれたのだとすらいえるだろう。
当時の哲学が自然科学も含んでいたことを考えると、人類史の軸となる時代というのも納得だが、もちろん哲学だけが花開いたわけではない。
科学・宗教・文学…どの分野でも枢軸時代の偉人たちは、現代に生きる人間たちの「原点」というべき存在が集まっている。
科学でいえば、例えばアルキメデスだ。前287年生まれ、枢軸時代でも最後期に属する。彼の業績は、風呂場のエピソードで有名な浮力の原理や円周率だろう。
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そして彼の同じ時代の人が、地球ではなく太陽を宇宙の中心においたアリスコルタス・地球の大きさを初めて測定したエラトステネス。群を抜く天才揃いである。
宗教面では、仏教にユダヤ教にゾロアスター教が、やはり枢軸時代に成立した宗教だ。文学面では、西洋文学の元祖といわれるホメーロスもこの枢軸時代の人物と言われている。
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【追加雑学①】天才の歴史「枢軸時代」を発見したのは?
それにしても、600年ほどの幅を取っているとはいえ、この枢軸時代にこれだけ天才が並んでいることを発見した人物がよくいたものだ。一体誰がこの共通点に気付いたのだろう?
明確に「枢軸時代」というネーミングを打ち出したのは、ドイツの哲学者で精神科医のヤスパースという人物だ。第二次大戦の記憶も生々しい1949年に発表された「歴史の起源と目標」で、枢軸時代という概念を唱えた。
といっても、彼より前にも「この時代になんだかすごい人がたくさんいる」と指摘した人物はいた。ヤスパースがすごいのは、それを歴史学のテーマとして初めて本格的に考えたことだ。
さらに、ヤスパースが人類の枢軸として、西洋だけでなくインドや中国といった東洋の大学者たちをも並べたことは、西洋中心的な当時の歴史観に揺さぶりをかけた。
キリスト教と西洋文明だけではない文明の多様性と、人類文明という統一性がこの概念には込められている。
【追加雑学②】枢軸時代はどうやって生まれた?
それにしてもなぜ、この時代に人類史の枢軸が生まれてきたのだろう? なぜ、それ以前でもそれ以後でもなくこの時期だったのか? 残念ながら、今でもそれに決定的な説はない。
ただヤスパース自身は、この時期に多数の少国家や都市国家が分裂、相互闘争をしていた事実が今までの思考への懐疑を生み、枢軸時代の原因になったと考えているようだ。
いわれてみれば、枢軸時代の中国は春秋戦国時代で、ギリシャは都市国家同士の抗争が起きていた。危機の時代にこそ、人間の思考力というのは目覚めるのかもしれない。
天才の歴史「枢軸時代」|雑学まとめ
というわけで、今回は「枢軸時代」という、人類史最大の天才ラッシュが起きた時代についての雑学を扱った。そして、これが単に天才が多いというだけではなく、今の人類の原点でもある時代だというのがわかっただろう。
今も世界情勢は不穏だ。しかし、こんな時代だからこそ次なる「枢軸時代」を担う天才たちが生まれているのかもしれない。そんな天才にひょっとしたらあなたも……?
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