ホラー映画は、いかに観客に恐ろしさを感じさせるかがキモ。そのために、狂気的な演出がされることもある。
その代表的な作品が「シャイニング」だ。いわくつきのホテルに住み込んだ家族が、謎の怪異に遭遇し、次第に主人公が狂気に…といったストーリーの映画である。
この映画のあるシーンの撮影では、リアリティのために狂気的ともいえる演出が行われた。今回は、そんなちょっと怖い雑学を紹介しよう。
【面白い雑学】「シャイニング」にはわざとNGを連発したシーンがある
【雑学解説】「シャイニング」で"わざとNGが繰り返された"シーンとは?
わざとNGをだしたシーンというのは、狂気に取りつかれた主人公のジャック・トランスが、バスルームの扉を斧でこじ開け、ウェンディが恐怖におびえるシーン。
ホラーが苦手な方は閲覧注意! 大丈夫な方は、まずは動画を見てみよう。
狂気的なジャックも怖いが、ガチでおびえるウェンディも怖いのが印象的。それもそのはず。この時、ウェンディを演じたシェリー・デュヴァルは、本気でパニックになっていたのだ。
というのも、「ウェンディがおびえる様子を、リアルに撮りたい…」
「シャイニング」を制作したスタンリー・キューブリック監督は完璧主義者。監督はより理想のシーンを撮るために、わざと何度もNGをだした。
その数は、なんと127回!
わけもわからず、ここまでNGを連発されてしまっては、さすがに精神的に参ってしまうというものだ。ウェンディを演じながらも、シェリーは段々とパニックになってきた。
その結果できたのが、あのシーンの演技である。鬼気迫るシェリーの演技は、ある意味演技ではなかったのだ…。
"リアル"すぎた「シャイニング」の演技
ちなみに、夫に追い詰められたウェンディが「頭が混乱して…」と言うシーンがあるのだが、これは台本になかったセリフである。しかも、アドリブでも何でもない。キューブリック監督に追い詰められて、パニックになったシェリーの本音だったのだ。
俳優が時に狂気的な演技や役作りをするという話はよく聞くが、監督がより狂気的なシーンにしようとNGを何度もだすとは…。この話を初めて聞いた時、キューブリック監督に対して色んな意味で怖さを覚えたものだ。
正直どうかと思う演出ではあるのだが、あの演出があったからこそ、「シャイニング」の名シーンとなったのかもしれない。
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【追加雑学】「シャイニング」原作者がキューブリック監督に激怒した理由とは?
映画「シャイニング」は、興行的にも成功した作品だ。しかし、原作者は映画版に対して不満があった。
作品を映像化するにあたって、ある程度の改変はつきものだ。しかし、大幅に作品が改変されたことで、原作者であるスティーブン・キングは激怒した。
主に変更されていたのが、登場人物の性格だ。メインキャラのトランス一家だけでも、表にすると以下のとおりである。
人物 | 原作 | 映画版 |
ジャック・トランス(夫) |
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ウェンディ・トランス(妻) |
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ダニー・トランス(子) |
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このほかにも、キーマンとなるキャラの改変や、エンディングの改変もされている。原作とは違う作りになってしまった映画版を原作者のキングは許せず、キューブリック監督を批判し続けた。
スティーブン・キングとキューブリック監督は仲直り…?
その怒りは激しく、しまいにはキング自身が脚本を書きおろして、ドラマ版の「シャイニング」を作ることになったほどだ。
本来なら、ドラマ版を撮るとなると、その権利はキューブリック監督にある。キューブリック監督は、キングに自身と映画版の批判を自重してもらうことを条件として、ドラマ版を作ることを承諾したのだ。
キングが脚本を務めたドラマ版「シャイニング」も高評価を集め、プライムタイム・エミー賞作品賞を受賞した。
これで何とか収まったと思ったが、キューブリック監督が亡くなった後、キングはまた映画版の批判を再開したらしい…。本当に気に入らなかったのか…。
ちなみに、キューブリック監督は原作者に嫌われる傾向があるようで、「時計仕掛けのオレンジ」でも原作者から「あの作品を執筆したことを後悔している」と言わせてしまったことがあったそうだ。
映画の尺の都合などで、作品が改変されることは少なくないことだ。しかし、キューブリック監督は、あまりにも自分流に作品を料理してしまったのだろう…。それはそれで、原作者にとっては耐え難いことなのかもしれない。
「シャイニング」の雑学まとめ
今回は「シャイニング」についての雑学を紹介した。
監督によっては、完璧を求めて狂気的な演出をする者もいる。その1人が、スタンリー・キューブリック監督だ。
ホラー映画「シャイニング」にて、リアルな恐怖を描写しようと、わざと127回というギネスレベルのNGを出した。
監督の狂気的な演出により、追い詰められたシェリー・デュヴァルの素と演技が同居したシーンは、一見の価値ありだと思う。ホラー映画に耐性があれば、ぜひ1度見てみてほしい。
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