把瑠都(ばると)・嵐望(らんぼー)・冨蘭志壽(ふらんしす)…。
キラキラを通り越して、もはやヤンキーの世界の通り名のようだが、実はこれはただのキラキラネームではない。
なんと、このキラキラネームの持ち主は全員力士!
意外にも、相撲界はキラキラネームの宝庫なのだ。伝統的な名前から、目を疑うような珍名まで、実に多様な名前がある。なかには、誰もが知っている昔話の登場人物と同じ名前をもつ力士なんかもいるのだ。
今回の雑学ではそんな実に興味深い、力士の名前の成り立ちについて調べてみたぞ!
【面白い雑学】昔の力士に「浦島太郎」がいた
【雑学解説】四股名ってどうやって決まるの?
力士の名前、すなわち四股名(しこな)には、特に決まったルールがあるわけではない。本人の好みはもちろん、名付け親や所属部屋の意向によって、さまざまな四股名がつけられる。そのため、とってもバリエーションが豊富なのだ!
いくつかのパターンをご紹介しよう。
本名
最初のうちは本名を使い、番付が上がるにつれて改名する力士は多い。ただし、本名をそのまま四股名として使い続けることもできる。
高安(たかやす)・遠藤・正代(しょうだい)などが本名を使い続けている代表的な力士だ。
なお、この3人は名字だが、明生(めいせい:フルネームは川畑明生)のように、下の名前を使う力士もいるぞ!
親方や部屋
所属する親方が現役時代に使っていた四股名から一字をもらったり、部屋によって受け継ぐ文字が決まっているパターンもある。
たとえば、琴奨菊(ことしょうぎく)は、佐渡ヶ嶽(さどがたけ)部屋の初代親方・琴錦(ことにしき)にあやかった名前。
九重(ここのえ)部屋は「千代の富士」「千代大海(ちよたいかい)」「千代大龍(ちよたいりゅう)」というように、「千代」を継承するという伝統がある。
また、史上初の兄弟同時横綱として有名な「若乃花(わかのはな)」「貴乃花(たかのはな)」のように、相当に番付を上げないと襲名が許されない、部屋ゆかりの四股名もある。まるで歌舞伎の世界のようだ!
地元
生まれ育った郷里や、出身校にちなんだ四股名をもつ力士も多い!
たとえば御嶽海(みたけうみ)は、地元・長野にある御嶽山(おんたけさん)にちなんだもの。「御嶽」の読みが違うのは、2014年の噴火による被災者に配慮したとのことだ。
豪栄道(ごうえいどう)の「栄」は母校である埼玉栄(さかえ)高校からとったもの。ちなみに、「豪」は自分の本名と師匠の名前から、「道」は母校監督の名前にちなんだもので、自身のゆかりを合わせた四股名なのだ。
また最近はだいぶ増えた外国人力士も、このパターンを用いることが多いぞ!
先に挙げた「把瑠都」は、バルト3国の1つであるエストニア出身であることから、バルト海にちなみ、当て字を考えた四股名だ。
ブルガリア出身の「琴欧洲(ことおうしゅう)」も、佐渡ヶ嶽部屋伝統の「琴」に、出身国があるヨーロッパ…つまり「欧州(後に洲の字のみ変えた)」を組み合わせたものである。
ちなみに、冒頭の「冨蘭志壽」はフィリピン出身……フランスじゃないんかい!
有名人
さて、だいぶお待たせしてしまったが、「浦島太郎」はここに分類される。
「浦島太郎って有名人か?」というツッコミはさておき、ここであげる有名人は、物語の登場人物・歴史上のヒーロー・同時代の著名人・往年の名力士など、何でもあり。世間の知名度にあやかった名前ということだ!
浦島太郎は昭和に実在した力士で、同時代には「武蔵坊弁慶(むさしぼうべんけい)」や「牛若丸」に「桃太郎」、はたまた「赤鬼」「青鬼」なんていう力士もいた。
しかしこの浦島太郎…存在したことはわかっているのだが、特筆に値するような記録が残っていない。竜宮城でパーティ三昧の後は玉手箱を開けて台無し…となってしまった男の名前は、勝負事には向いていなかったのだろうか?
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【追加雑学】角界のキラキラネーム? 珍名四股名をご紹介!
さて、ここでは珍名が多い相撲界でも異彩を誇る、式秀(しきひで)部屋の印象的なキラキラ四股名を紹介するぞ!
爆羅綺源氣(ばらきげんき)
これはすごい! 近づいただけでも相手が消し飛びそうだ! あと、なんだかK-1などの格闘技選手にいそう。
さらに驚くべきは、この「爆羅綺」、なんと本名なのだ! 父親が「強い人間になってほしい」との意味を込めて、マフィア映画『バラキ』にちなんで名付けたとのこと。
ちなみに、兄の名前は「羅王(らおう)」。…この兄弟、名前に圧がありすぎるッ!
宇留寅太郎(うるとらたろう)
由来は言うまでもなく「ウルトラマンタロウ」から。円谷プロファンなら「もしや本名は東光太郎か!?(タロウに変身する人)」とわくわくしてしまうかもしれないが、本名は高橋徹(たかはしとおる)と、いたって普通である。…期待したのに!
名付け親は女将さんで、「3分間全力で暴れ回ってほしい」という願いを込めた、思いやりあふれるキラキラ四股名だ。
人間はどんなに頑張ってもストリウム光線は出せないが、ぜひ不屈のタロウのごとく頑張ってほしいものである!
大当利大吉(おおあたりだいきち)
昔の漫談師にいそうな名前だな…と思ったが、れっきとした平成生まれの力士である。
彼の本名は「櫛引大樹(くじびきだいき)」といい、なんとなくおみくじで大吉が出そうな、強運っぷりがうかがえる。
彼を式秀部屋に紹介してくれたラーメン店主が、このご利益ありそうな本名を踏まえて「立ち合いで頭から当たれる力士になれるように」とつけてくれたのだ。
縁起の良さなら歴代力士のなかでもピカイチだぞ!
雑学まとめ
今回の雑学はいかがだっただろうか。相撲は日本の伝統芸能だし、もっとお堅いイメージがあったのだが、ネーミングセンスがここまでおふざけ…いや、自由だとは思わなかった!
外国人力士はどうしてもキラキラネームになりがちだが、日本人力士も負けじとインパクト抜群な四股名を考え出すあたり、熱い勝負は土俵入り前から始まっているといっても過言ではない。
これからもどんなキラキラ・面白四股名が登場するのか楽しみだ!
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