頑張って働いているのにいつまでも貧乏、という人はいるものだ。自分には貧乏神がついているのでは…と、本気で考えている人も中にはいるようだが、そんなわけはない! 「貧乏神はあなたの心のなかにいるのです」と自己啓発本に書いてあるのを見たことがある。
「お金が貯まらない人の特徴」や「貯金の多い人の生活習慣」なんてタイトルの自己啓発本がたくさん古本屋に並んでいるところをみると、心の中の貧乏神は成敗できなかったのか…。やはり貧乏神はいるのか?
実際に貧乏神が存在しているわけではないと思うが、正体不明の「貧乏な理由」を擬人化して貧乏神に置きかえてみると、不思議と理解しやすくなるぞ。実は、貧乏神は思っているほど悪い奴ではないようだ。「貧乏にはなるが他の厄災から逃れることができる」という! そこで今回は、貧乏神にまつわる雑学をご紹介していこうと思う!
【生活雑学】貧乏神は、貧乏だが他の厄災からは逃れられる
【雑学解説】貧乏神と疫病神の違い
いったい貧乏神とはどんな神様なのだろう? イメージとして物語などに登場する姿は、やはり一言でいうと「貧乏くさい」。
ガリガリに痩せていてあごが尖っている。鼠色のボロ着を着て、破れうちわを手に悲しそうな表情で…。とまあ、こんなところだ。
貧乏神は、人や家に憑りついて貧乏にしてしまう。その嫌な属性から「貧乏神に憑りつかれると不幸になる」と勘違いされがちだが、実は貧乏神は金銭を欠乏させるという能力しかもっていないという! 人や家を不幸にするのは貧乏神ではなく、疫病神だ。
疫病神はどんな神様なのかというと、貧乏神のようにビジュアルが浮かばない。それもそのはず、病気などの厄災は、目に見えない存在がもたらすものと考えられていることから、疫病神は姿をもたないのだ。姿が見えないなんてかえって怖いし、しょぼくれた貧乏神よりずっと恐ろしい印象だ。
しかも疫病神は、貧乏神の能力込みで人を不幸にする。つまり、金銭的なことも含めて病気など全般で人を不幸にするのだ! いや、恐いわ! 疫病神には絶対に来てほしくない。
そこで、貧乏神だ。家に貧乏神がいると、疫病神の場所がないから疫病神はやってこない! 貧乏にはなるが、病気などの厄災からは逃れられるというわけだ。どうだ? 貧乏神のほうが疫病神よりマシだろう!
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【追加雑学①】日本昔ばなし「貧乏神と福の神」で学ぼう
貧乏神は貧乏になるだけで、貧乏になったからといって不幸なわけではない、というのがわかるお話をご紹介しよう。もう放送は終了してしまったが、市原悦子さんの語りが温かいテレビアニメ「日本昔ばなし」の「貧乏神と福の神」という話だ。
昔、家に貧乏神が住みつかれたためにとても貧乏な男がいた。しかし男は働き者の嫁をもらって一緒にせっせと働くようになった。
大晦日の夜、天井裏から貧乏神の泣き声が。夫婦そろって働き者になったこの家に、いよいよ福の神がやってくることになったので、貧乏神はこの家を出なければならないという。
除夜の鐘が鳴ると、福の神がやってきて貧乏神を追い出そうとした。ところが、優しい夫婦は泣いている貧乏神を助けて、福の神を追い返してしまった。その後、夫婦は貧乏のままだが、幸せに暮らしたとさ。
いかがだろう。もし欲にかられて貧乏神を追い出し、福の神に頼って大金持ちになったら、この夫婦は今まで通り幸せに暮らすことができたのだろうか? 「貧乏でも幸せに暮らすこと」の大切さを考えさせられる話だ。
【追加雑学②】お経に出てくる貧乏神の話で学ぼう
もう一つ、考えさせられる話がある。涅槃経(ねはんきょう)というお経にのっている話だ。ある家に、品の良い美しい女性が訪ねてきた。女性は吉祥天(きっしょうてん)という福の神だという。家の主人は大喜びで女性を家に招き入れた。
ところが、そのうしろにいたもう一人の女性が家に入ろうとしていた。こちらはみすぼらしく醜い女性で、黒闇天(こくあんてん)という貧乏神だという。家の主人は貧乏神に「とっとと失せろ!」と怒鳴って追い出した。すると、先ほど招き入れた福の神も、貧乏神と一緒に出て行ってしまった。
実は吉祥天は黒闇天の姉で、福の神と貧乏神は一心同体だったのだ。涅槃経では「お金を貪欲に貯めすぎるとかえって不幸の元になる」と教えている。人間が福の神だけを渇望し、貧乏神を忌み嫌ってえり好みするのは、自分勝手な考え方なのである。
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【追加雑学③】お経に出てくる貧乏神の話で学ぼう!貧乏神を追い出す方法
どうやら、金持ちすぎるのも不幸になる元のようだ。かといって貧乏も好きじゃない! だからわたしは貧乏神も福の神も我が家に来たらお帰りいただくことにする。そもそもいくら神様でも、天井裏に誰か住んでいるのはちょっと…。
日本各地には貧乏神の追い出し方が様々あるのでやってみよう。貧乏神の好物である焼き味噌を川に流して、貧乏神を追い出す「貧乏神送り」という風習があるようだ。焼き味噌の良いにおいにつられて川に流れてくれるらしい。単純でほほえましい。
新潟では、大晦日の夜に囲炉裏で火をたくと貧乏神が逃げていくらしい。囲炉裏に関しては、火を絶やすと貧乏神が出る、愛媛県では囲炉裏の火を掘りすぎると貧乏神が出るという話もある。気を付けよう。
雑学まとめ
貧乏神についての雑学、いかがだっただろうか。
貧乏神は、その家を貧乏にはするが不幸になるかどうかはその人次第というところだ。「貧しいながらも楽しい我が家~♪」なんて唄があった気がするが、楽しいなら、多少の貧しさには目をつぶると良いのかもしれない。
「いい加減」という言葉があるが、「ちょうどいい加減」で生きていくことはなかなか難しいものだ。頑張ることを放棄して怠け者になったり、足るを知らずに物欲にかられて、自分勝手になったりしがちだ。貧乏神と福の神、どちらがいても、自分を見失わないことが大切だ。
人生には良い時期もあれば悪い時期もある。不幸を貧乏神のせいにして追い出そうとすると、疫病神がやってくるのかもしれない…。
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