ある日突然、音もなく忍び寄ってくるアイツ。しゃっくりがやってくるのはいつも唐突だ。
一度しゃっくりが始まると、自分の意思とは関係なしに「ヒック…ヒック…」と止まらない。息苦しくてうまく喋れなくなるし、ほんとに困ったやつだ。
今回紹介するのは、そんなしゃっくりの世界記録に関する雑学である。「100回連続でしゃっくりをすると死ぬ」なんて迷信があるが、とんでもない。世界一しゃっくりをし続けた男性はそれこそ億レベルでしゃっくりをしているぞ!
【人体雑学】しゃっくりの世界記録は何回?
【雑学解説】世界記録!人生のほとんどをしゃっくりと共に過ごした男
しゃっくりの世界記録を樹立したのは、アメリカアイオワ州で暮らしていたチャールズ・オズボーンさん。彼がしゃっくりをしていた期間は、数日とか数週間とかそんなレベルではない。
なんと、チャールズさんは1922~1990年までの68年間、推定4億3千万回以上にも渡ってしゃっくりをし続けたのだ! この記録は今もギネス世界記録として、破られることなく残り続けているぞ!
チャールズさんのしゃっくりは、1922年、屠殺(とさつ)前の豚を計量しているときに唐突に始まった。最初のうちは毎分40回、その後はだんだんと減り毎分20回ほどまで落ち込んだが、68年間つねにずっと、止まることはなかったのだ。
それだけ日常的になっていれば、もはや喋りにくいとか苦しいだなんて思いもしなかっただろうな…。
チャールズさんはアメリカのテレビやラジオ番組などでたびたび取り上げられ、すっかり有名人になった。人気のトーク番組に出演することもあったというから、むしろ儲けものまである…なんて言ったら本人や家族には怒られるかもしれないが…。
だってチャールズさんは、2度の結婚をし、8人の子どもにも恵まれるという、普通に幸せな生涯を送ってるんだもん!
何より不思議なのが、チャールズさんのしゃっくりは1990年6月5日にぴたりと止まり、その約1年後、1991年5月1日には彼自身が亡くなっているということだ。まるでしゃっくりが「最後の1年ぐらいは…」と空気を読んだみたいではないか…。
ちなみにチャールズさんの享年は97歳。死因は潰瘍による合併症ということで晩年こそ健康体とはいえないが、それでもかなりの長生きだ。
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【追加雑学①】2年間しゃっくりが止まらなかったイギリス人男性
チャールズさんほどではないが、2009年に日本のテレビ番組「ザ!世界仰天ニュース」にて「2年間しゃっくりが止まらない」という、イギリス人男性が取り上げられ話題になった。
悩みの主であるクリストファー・サンズさんは、26歳のバンドマン。彼は2007年2月からしゃっくりが止まらなくなり、その原因は病院へ行っても解明されず、困り果てていた。
以下は当時のイギリス「BBCニュース」の映像だ。たしかにひっきりなしにしゃっくりをしていることがわかる…。あと、けっこうなイケメンである。
その悩みを聞きつけた番組スタッフは、2009年5月の放送でクリスさんのことを取り上げたのだ。すると放送終了後、日本全国からしゃっくりを止める方法を記したお便りが400件も届いたのである! 温っけえ…世の中捨てたもんじゃないな…。
これを受けてクリスさんは同年7月に来日。番組に寄せられた400件の方法すべてを試すという企画が行われた。
しかしこの企画は、来日2日目にしゃっくりの専門医による診察が行われたことで、急展開を迎えることとなった。なんとイギリスの病院では発見されなかった脳幹の腫瘍が見つかり、それがしゃっくりの原因だと判明したのだ。
この診断を受け、クリスさんは9月上旬、イギリスの病院にて手術を受けることに。
脳幹の腫瘍は摘出が難しいとされていたが、イギリスNo.1の実績を誇る脳外科医が執刀を担当したことで、全体の3分の2の腫瘍を取り除くことができた。残った腫瘍も良性なのでこのままで問題ないと判断されている。
このあと11月に番組スタッフがイギリスを訪ねると、クリスさんは元気にギターを演奏する姿を見せ、同時にしゃっくりを止める方法400件を送ってくれた日本の人たちに感謝の意を述べた。
術後は左手にしびれがあり、しゃっくりもまだときどき出るというが、それもじきに治まるものだという。日本のメディアが遠く離れたイギリスの若者の一世一代の病気を救ったって、すごい話だよね!
あなどれない…しゃっくりは病気のサイン?
しゃっくりは肺の下にある横隔膜が痙攣(けいれん)し、それに伴って声帯が閉じることで、瞬間的に息が吐きだされる症状。このとき横隔膜が痙攣することの原因はさまざまなものがあるが、クリスさんの例のように、重大な病気が関わっていることもある。
横隔膜は神経などを通じて、なんらかの刺激を与えられることで痙攣するといい、喉頭がんや胃がん・肝臓がん・肺がん・横隔膜下腫瘍などの内臓の病気から、脳腫瘍や脳梗塞、痛風やアルコール中毒など、さまざまな病気が引き金になり得るのだ。
特に脳からお腹に真っ直ぐ降りている迷走神経は、しゃっくりと密接に関係しているという。クリスさんの場合はこの神経が横隔膜を痙攣させる原因となっていたのではないか。
とはいえ、ほとんどのしゃっくりは病気とは関係なく、すぐに治まるものなので、そこまでの心配はしなくていい。ただ2日以上続く場合は要注意…すぐにでも病院で診てもらおう。
【追加雑学②】しゃっくりの原因になる習慣とは?
重大な病気を除くと、しゃっくりの原因となるものには、以下のような例が挙げられる。
- 早食い・大食い
- 刺激的な飲み物(炭酸飲料・熱いもの・冷たいもの)の一気飲み
- 過度な喫煙・飲酒
- ストレス
うーん、どれも健康に悪そう。しゃっくりは身体に無理がいっているSOSを、横隔膜が捉えた結果だといってもいい。たとえ病気が原因でないにしても、生活習慣を見直す必要があるかもしれないぞ!
しゃっくりを止める方法は?
そして…みんながとっても気になっているであろう、しゃっくりを止める方法としては、以下のようなものが代表的だ。
- 砂糖水を飲む
- 10秒ぐらいかけて息をゆっくり限界まで吸い、10~15秒止め、また10秒ぐらいかけてゆっくり吐き出す
- 30~60秒ぐらい耳の穴に指を突っ込んで、強く押さえる
などなど。ゆっくり呼吸する方法は横隔膜の動きに直接関係しているし、いかにも効果がありそう。耳の穴に指を突っ込む方法も、脳から降りていく迷走神経に刺激を与える意味があって、医学的に正しい方法だ。
しゃっくりが止まらなくて困ることがあれば、ぜひお試しを!
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【追加雑学③】英語でしゃっくりは「hiccup(ヒカップ)」
しゃっくりが出るときの音を"ヒック"と例えるのは日本全国共通の認識だろう。いや、日本に限らず、しゃっくりの音が"ヒック"というのは、世界共通とまでいえる。
実は英語でしゃっくりは「hiccup(ヒカップ)」といい、その語源はまさにしゃっくりが出るときの"ヒック"から来ている。
英語だけでなくフィンラド語で「hikka(ヒッカ)」、ノルウェー語で「hikke(ヒッケ)」など、似たニュアンスのものも多い。日本人と外国人で言語の感覚は違っても、しゃっくりは例外なく"ヒック"と聞こえているのだ!
…当たり前のことにも思えるが、たとえば犬や猫の鳴き声の認識は日本語と英語で全然違う。
- 日本語の犬…ワンワン!
- 英語の犬…bow wow(バウワウ!)
- 日本語の猫…ニャー
- 英語の猫…mew(ミュー)
そう思うと、ここまで同じ音に聞こえているしゃっくりってけっこうすごくない? …あれ? そうでもない?
以下の動画では、いろんな国の言葉での犬と猫の鳴き声を紹介している。動物の鳴き声は国によってほんとにいろいろだ!
雑学まとめ
今回はいまいましい「しゃっくり」についての雑学をご紹介した。しゃっくりが止まらず68年間…。起きているときも寝ているときもずーっとしゃっくり…。想像しただけでつらい。慣れるものなのだろうか。
でも良いように考えれば、チャールズさんはしゃっくりのおかげで有名人にもなれたし、ギネス記録も残せたわけだ。
2年間しゃっくりが止まらなかったクリスさんにしても、この一件でイギリスでけっこうな有名人になったという。彼なんてそれこそ本業がバンドマンだし、活動に役立てられるかも?
なにはともあれ、両者ともに元気に過ごせたのは何よりである。