ミツバチはとても働き者な生き物だ。春から夏にかけて、彼らは花の蜜を吸っては巣に戻る、という繰り返しを一日何往復もしている。また知らずに蜂の巣に近づいてしまい、ミツバチの大群に襲われる恐怖を味わったことがある人もいるだろう。
そう、このようにミツバチは集団で生活しており、その役割は驚くほどきっちりと分担されている。一日中蜜を運べるのも、仕組みがしっかり作られているからだ。
今回はそんなミツバチの集団体制に関する雑学をご紹介するぞ。
【動物雑学】ミツバチの管理された集団体制とは?
【雑学解説】ミツバチの集団体制は、驚くほど理路整然と管理されている
ミツバチの役割は大きく分けて「女王蜂」・「雄蜂」・「働き蜂」の3つだ。巣の中では部屋もそれぞれきっちり分けられている。
この中でもひとつの巣にいる女王蜂は一匹だけで、他の蜂はこの女王蜂のために働くことになる。ミツバチの世界は女帝の君主政治なのである。女王蜂は羽化して一週間ほどすると、数十匹の雄蜂と一緒に、交尾を行うための結婚飛行に繰り出す。さながら逆ハーレムである。
交尾したあと女王蜂は巣に戻り、一日に約1000個もの卵を産む。なんとも驚異的な繁殖力だ。さすが女王という名にふさわしい…。さらに産卵後の幼虫の育児はいっさいせず、すべて働き蜂にゆだねるという女帝ぶりだ。
主力の働き蜂は特によく組織されている
ミツバチの集団体制の一番重要な部分を担っているのは働き蜂といえよう。働き蜂の寿命はだいたい1~2ヶ月で、その役割は日齢によって変わっていく。
- 羽化してから数日…巣の掃除
- 一週目…幼虫の育児
- 二週目…巣作りや蜂蜜作り
- 三週目以降…巣の外に出て蜜や花粉を採りに出かける
まるで新入社員がだんだんと仕事を覚え、一人前になっていく過程のようである。ちなみに、働き蜂はすべて雌だ。しかし、女王蜂が出す特殊なフェロモンによって、働き蜂の生殖能力は抑えられる。つまり一生独身…バリバリのキャリアウーマンなのだ!
他方雄蜂の役割はというと…。交尾のみ! そう、ミツバチの社会は完全なる女系なのだった。男、完敗…。
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【追加雑学①】熾烈な女王蜂争い
女王蜂となる蜂の卵は、王台という特別な部屋に産み付けられる。そして生まれた幼虫は、働き蜂が生成したローヤルゼリーを与えられて育つ。このローヤルゼリーは他の幼虫のエサより栄養価が高いため、女王蜂は大きな身体に育つのだ。
そして実は、女王蜂が生まれる王台は複数用意されている。よって、何匹も女王が誕生することになるが、その中で巣に残るのはたったの一匹だけ。
…どういうことかというと、女王の候補として生まれた蜂たちは、その座を巡って熾烈な争いを繰り広げるのだ!
結果、生き残った一匹だけがその巣を制することになる。さらに闘いを制した女王は、まだ出てきていない王台の中のサナギまで殺してしまう。…女の執念とは恐ろしいものだ。
【追加雑学②】雄蜂の存在意義
女王たちの激しい闘いとは反対に、雄蜂は数十匹というかなりの数が女王蜂と交尾できる。…しかしなんと、雄蜂は交尾を終えると死んでしまうのだ。つまり交尾できなかった雄の方が長生きできるのである。
なら交尾しないほうがいいのでは…と思わされるが、交尾できなかった雄蜂は、やはり最後は不幸な道を辿る。
交尾せずに生き残った雄蜂は、巣に戻っても働き蜂の仕事を手伝ったりはせず、ただダラダラと過ごす居候の身になる。そして、花が少ない時期になり食糧の蜂蜜が減ってくると、巣から追い出されてしまうのだ。
巣を追われた雄蜂は自分で巣を作ったり、蜜を集めたりする術を知らない。こうして結局は飢え死にしてしまう。
交尾だけが仕事の雄蜂は交尾に成功しても死に、交尾に失敗して生き延びても悲惨な結末を迎える。なんとも哀れである…。
雑学まとめ
今回の雑学で紹介したように、ミツバチは優れた集団体制をもっていた。特にそれぞれの日齢に応じて、役割分担を行う働き蜂の管理能力は脱帽ものだ。そのすべてが雌というのもまた意外だった。
しかし…筆者としては、雄蜂たちの影の薄さが哀れでならない。彼らにとっては、残したDNAだけが生きた証なのである。それすら残せなかった雄たちの話は涙なしでは語れない…。
習性上仕方がないといっても、不遇な立場に負けず、頑張ってほしいものだ…。