妊娠は本来、とても希望にあふれたライフイベントのはずだ。多くの人々は、明るい未来を思い描き、その命の誕生を心待ちにすることだろう。
しかしすべてのケースがそうであるとは限らない。悲しいことに、その命が生まれる前に摘み取ってしまわざるをえないケースがある。いわゆる「中絶」だ。
そして日本での中絶数は、あなたが想像しているよりもずっと多いかもしれない…。
【生活雑学】日本の年間中絶数は自殺者より多い
【雑学解説】妊娠したうち、6人に1人は中絶の道を辿っている
公表されている日本の年間自殺者数は、ここ数年の間およそ2~3万人前後を推移している。直近8年で見ると減少傾向にあるが、それでも先進国の中ではダントツだ。
海外と比べ、日本人にはそんなに何か、思い悩んでいる人が多いというのだろうか…この数字だけでも十分にショッキングである。
…しかしそれに対して年間の中絶数は、なんと6倍近くの18万人前後にも及ぶ。
厚生労働省は「平成30年(2018)人口動態統計の年間推計」で2018年の出生者数の年間推計を92万1千人と発表している。そのため5人の子供がいたらその影に1人、この世に誕生出来なかった命が隠れていることになる。1クラスだったら、だいたい5~6人…そう考えると、この問題がいかに深刻なものかがわかる。
中絶の実態
まず、中絶には下記の2種類がある。
- 自然妊娠中絶
- 人工妊娠中絶
前者は、いわゆる「流産」。何らかの原因により、妊娠22週目よりも前に妊娠を終えてしまった状態…つまり故意ではない中絶のことを表す。
後者は我々が「中絶」と口にするものである。今回取り上げている18万人前後という数字は、この人工妊娠中絶の件数だ。しかし流産も中絶も、実際は公表されている数字より遥かに多いという。
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報告されていない隠れた中絶の存在
流産に関しては、妊娠0週〜3週の早い段階で、妊婦本人が気づかないまま妊娠・流産をしてしまうケースがあるのだとか。…たしかに、男性にも負けないくらい仕事を頑張る女性が多い現代の日本では、こういったことは起こりやすいのかもしれない。
一方、中絶が公表されている数字を上回っているとされる理由は、悲しいことに、違法中絶(ヤミ中絶)をしてしまうケースがあるからである。
当然だが中絶は簡単に行えるものではなく、法律で決められた条件が整っている場合にのみできることだ。法律を破って中絶をした場合、公的機関には報告されず、中絶数にもカウントされないのである。
違法中絶はクリニックにて行われることもあれば、なんと海外で出回っている中絶薬をインターネットで手に入れて、自分で違法中絶を行ってしまう人もいるという。もちろん、日本の法律で薬を用いた人工中絶は認められていない。
子どもを産むかどうかというのは、最終的には親の決めることだ。しかし軽はずみにしてはいけないことだからこそ、中絶にも法律が設けられていると忘れてはいけない。
【追加雑学①】中絶件数自体は減少傾向にある
日本における中絶件数の多さには正直驚いたが、ここで朗報だ! 実はこの中絶件数は近年、徐々に減少している。2012年にはおよそ19万6千人だったものが、2016年には16万8千人まで下がってきているのだ。
厚生労働省の資料によると、特に10代の中絶件数が下がっていることが分かる。
欧米諸国のようにオープンではない日本は、これまで性教育が遅れていることを指摘されてきた。しかし近年、若者の間に正しい性知識が浸透してきているということだろうか。
変わりつつある日本の性教育
10代の若者の中絶件数が特に少ない富山県富山市では、産婦人科医たちが直接小・中・高校に出向いて、性教育に関する授業を行なっているとニュースにもなっている。
コンドームの値段、キスの断り方など、かなりストレートに性知識を教えているようだ。すごい…ちょっと前なら、子どもにはとても教えてもらえないようなことばかりではないか。
こういったことは、多感な時期に聞くとちょっと恥ずかしい内容かもしれない。しかし妊娠はできても責任の取れないその年齢だからこそ、性教育が必要なのだ。
雑学まとめ
自殺者の数にしても多いといわれる日本だが、中絶の数はその約6倍にもなることには驚かされた。しかも報告されていない違法中絶を含めると、さらに数は膨れ上がる。
中絶はデリケートな問題だけに、やはり第三者は首を突っ込みにくい。紹介したような教育の変化が、この先の日本をさらに変えていってくれることを期待しよう。